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第431回 見えないものを描く遅咲きの花-「オディロン・ルドン」展
”《ブッダ》という作品もありました--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。私の最新アルバム『廓の夜』のガイドブックを発売開始した宮澤やすみです。古い歌でもこれがあればより楽しめるのでぜひ入手してください(下記ご案内)。
そんな中、パナソニック汐留美術館で開幕した「オディロン・ルドン ―光の夢、影の輝き」のプレス内覧会に行ってきました。
ルドンの作品といえば、大きな一つ目が開いた気球とか、奇怪で幻想的な作風が知られます。
この展覧会の前半では、そうした「ルドンといえば」の作品が並びます。

展示風景より。ルドン最初の石版画集《夢のなかで》より
時は19世紀末。工業や科学が発展して時代が急激に変わるときです。
たとえば気球が発明されたのにもルドンは刺激を受けるのですが、その気球をただ描くんじゃなく、一度自分の頭のなかでイメージをふくらませて、自分だけの夢の世界に遊ぶ作品に仕上げます。
ほかにも、植物学者との交流で知識を得る中、絵画としては《沼の花》と題して人面植物を描いてしまう不思議ちゃんな性格。
調べてみると、子供のころから内向的な性格だったようです。

ミュージアムグッズより《蜘蛛》のクリアファイル。10本足で顔はどこかユーモラス
図録にあるルドンの言葉を引用します
「私の独創性とは、あり得ないものを本当らしさの法則に従って、人間的に生きものとしたことであり、眼にみえないものを、見えるものの理論に従ってあらわしたことにあります」
(農澤美穂子「ルドンと「花瓶の花」本展図録より)

展示風景より。石版画集《起源》より
時代はちょうど印象派の画家が活躍するころ。
ルドンと同い年のクロード・モネが色彩感覚あふれる作品を次々発表するなか、ルドンは木炭やパステルで微妙な黒の印影を駆使して夢と幻想の世界に没入します。
そういう孤高の存在って、あこがれますよね。
流行に乗らず、でも閉じこもるわけでもなく、自分なりのポジションを固めて活躍するルドン。
さらに共感するのが、ルドンが世に認められ始めたのが、彼が40歳ごろになってからということ。
独自の世界観で勝負する人は、認められるまでがつらいものですが、めげずに突き詰めていくとなんとかなるもんです。気難しいフランス人に認められて、本当によかったねと応援したくなります。

展示風景より。地平線から顔を出す女性のモチーフを描いた《眼を閉じて》シリーズ
展示後半は打って変わって色彩あふれる花瓶の花が登場。おなじルドン?と思ってしまうような作風の変化。
と思いきや、やはりルドンの絵は一味ちがうのです。
当時の美術市場で「売れる絵」であった花瓶の花。
しかし、ルドンの花はどこか現実離れしたこの世のものでないようなあるような、そんな雰囲気をたたえています。

展示風景より。「花瓶の花」展示室
またルドンの言葉を引用します
「私の絵画について、人々は花々をよく話題にした。しかし、画家としての私の才能を注ぐところは、そこではない」
(同上より引用)
このままでは私は花を描く画家として知られることになる、とルドン本人が語っていたそうですが、名が知られた後でも生活のために稼がないといけないルドンの気持を想いながら、華やかな色彩の花を見るとおもしろいです。

ミュージアムグッズより《蜘蛛》をモチーフにしたブローチ
晩年の作品は、神話やキリスト教に題材をもとめた作品も登場。《ブッダ》という作品もありました。いずれにしてもルドンらしい神秘と幻想の世界観は変わらず、自分だけの創造性を貫いたのでした。
私の場合は音楽ですが、遅咲きかつ独自路線であり、ルドンの足跡は他人事とは思えない、なんだか勇気づけられるものでありました。
それでは聴いてください。
宮澤やすみで「夜と共に」(小唄アルバム『廓の夜』より)。
PARALLEL MODE オディロン・ルドン ―光の夢、影の輝き
2025年4月12日(土)~6月22日(日)
パナソニック汐留美術館
詳細:
https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/25/250412/
■あわせて読む(関連記事)
「芸術」が最も幸せだった時代 ルドン-ロートレック展
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20201027-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
吉原の酔狂と悲哀を歌った古典小唄集
『廓の夜』 宮澤やすみ(唄、三味線、解説)
https://yasumimiyazawa.com/kuruwanoyorubook.html
歌詞と解説をまとめたガイドブック発売中
※楽曲はYoutube、Spotifyなどで誰でも聴けます
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。私の最新アルバム『廓の夜』のガイドブックを発売開始した宮澤やすみです。古い歌でもこれがあればより楽しめるのでぜひ入手してください(下記ご案内)。
そんな中、パナソニック汐留美術館で開幕した「オディロン・ルドン ―光の夢、影の輝き」のプレス内覧会に行ってきました。
ルドンの作品といえば、大きな一つ目が開いた気球とか、奇怪で幻想的な作風が知られます。
この展覧会の前半では、そうした「ルドンといえば」の作品が並びます。

展示風景より。ルドン最初の石版画集《夢のなかで》より
時は19世紀末。工業や科学が発展して時代が急激に変わるときです。
たとえば気球が発明されたのにもルドンは刺激を受けるのですが、その気球をただ描くんじゃなく、一度自分の頭のなかでイメージをふくらませて、自分だけの夢の世界に遊ぶ作品に仕上げます。
ほかにも、植物学者との交流で知識を得る中、絵画としては《沼の花》と題して人面植物を描いてしまう不思議ちゃんな性格。
調べてみると、子供のころから内向的な性格だったようです。

ミュージアムグッズより《蜘蛛》のクリアファイル。10本足で顔はどこかユーモラス
図録にあるルドンの言葉を引用します
「私の独創性とは、あり得ないものを本当らしさの法則に従って、人間的に生きものとしたことであり、眼にみえないものを、見えるものの理論に従ってあらわしたことにあります」
(農澤美穂子「ルドンと「花瓶の花」本展図録より)

展示風景より。石版画集《起源》より
時代はちょうど印象派の画家が活躍するころ。
ルドンと同い年のクロード・モネが色彩感覚あふれる作品を次々発表するなか、ルドンは木炭やパステルで微妙な黒の印影を駆使して夢と幻想の世界に没入します。
そういう孤高の存在って、あこがれますよね。
流行に乗らず、でも閉じこもるわけでもなく、自分なりのポジションを固めて活躍するルドン。
さらに共感するのが、ルドンが世に認められ始めたのが、彼が40歳ごろになってからということ。
独自の世界観で勝負する人は、認められるまでがつらいものですが、めげずに突き詰めていくとなんとかなるもんです。気難しいフランス人に認められて、本当によかったねと応援したくなります。

展示風景より。地平線から顔を出す女性のモチーフを描いた《眼を閉じて》シリーズ
展示後半は打って変わって色彩あふれる花瓶の花が登場。おなじルドン?と思ってしまうような作風の変化。
と思いきや、やはりルドンの絵は一味ちがうのです。
当時の美術市場で「売れる絵」であった花瓶の花。
しかし、ルドンの花はどこか現実離れしたこの世のものでないようなあるような、そんな雰囲気をたたえています。

展示風景より。「花瓶の花」展示室
またルドンの言葉を引用します
「私の絵画について、人々は花々をよく話題にした。しかし、画家としての私の才能を注ぐところは、そこではない」
(同上より引用)
このままでは私は花を描く画家として知られることになる、とルドン本人が語っていたそうですが、名が知られた後でも生活のために稼がないといけないルドンの気持を想いながら、華やかな色彩の花を見るとおもしろいです。

ミュージアムグッズより《蜘蛛》をモチーフにしたブローチ
晩年の作品は、神話やキリスト教に題材をもとめた作品も登場。《ブッダ》という作品もありました。いずれにしてもルドンらしい神秘と幻想の世界観は変わらず、自分だけの創造性を貫いたのでした。
私の場合は音楽ですが、遅咲きかつ独自路線であり、ルドンの足跡は他人事とは思えない、なんだか勇気づけられるものでありました。
それでは聴いてください。
宮澤やすみで「夜と共に」(小唄アルバム『廓の夜』より)。
PARALLEL MODE オディロン・ルドン ―光の夢、影の輝き
2025年4月12日(土)~6月22日(日)
パナソニック汐留美術館
詳細:
https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/25/250412/
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宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com