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第435回 (動画あり)深大寺・元三大師「大開帳」ー後編:本体は如意輪観音ー
”偉い高僧に見えるけどじつは観音様なのじゃ、という”キャラ設定”--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。ひさしぶりにザ・ブッツ(私のバンド)のライブをやってなかなかいい感じにできた宮澤やすみです。バンドも少しずつ継続していきたいものです。
そんな中、東京・深大寺「元三大師(がんざんだいし) 大開帳」の取材、その後編です。
以下、写真は特別に許可を得て撮影したものです。

深大寺 元三大師 大開帳の姿(許可を得て撮影)
堂内に入ると、厨子の前にどっかり坐す元三大師、その圧倒的な迫力と重量感は圧巻です。
そこで、お坊さんが拝観者の心願成就を祈願して真言を唱えます。
祈願の法要を聞きながら、元三大師と向き合う時間、こういうのは博物館では体験できないですね。
僕の場合は、取材として一日の閉堂後に幕を下ろす法要を動画で撮影をさせていただきました。
こちらに上げてあります。大師様一日おつかれさまでした、という動画です。
深大寺 元三大師 大開帳。閉幕のようす(許可を得て撮影)
さて、取材を終えてお堂を出て、堂前にある回向柱に眼をやると、
「如意輪」の文字が目に入りました。
筆で旧字体で書かれていますが、「本体 如意輪」とあります。

大師堂前に立てられた回向柱に「本体如意輪」と書かれている
「如意輪」とは、観音菩薩の一種、如意輪観音菩薩のこと。
六本の腕で六道に迷う人を救う、観音の中でもヴァージョンアップした姿です。真言宗や天台宗といった密教の世界に登場します。

参考:寛永寺・開山堂の如意輪観音菩薩(取材時に許可を得て撮影)
つまり、元三大師は、如意輪観音菩薩が本体であり、観音の変化身(へんげしん)であるということなんですね。
どういうことでしょうか?
もともと観音さんは、様々な姿に変化する(三十三身)と説かれていて、なにかと変身する菩薩なんです。元三大師の場合も、偉い高僧に見えるけどじつは観音様なのじゃ、という”キャラ設定”なんですね。
元三大師は、「良源(りょうげん)」という名の天台宗のお坊さんで、10世紀の平安時代に比叡山延暦寺を再興させた、天台宗のリーダーでした。
その修法の験力があまりにも強くて、とても人間技とは思えない。きっと本体は別のものなのだという話になりまして、元三大師の本地仏は如意輪観音だと記したのが、弟子の恵心僧都(源信)なのだそうです。
※この源信は、のちに『往生要集』を著して地獄と極楽の概念を説き、浄土教の基礎を作った人です。

深大寺 元三大師大師堂。大師の両脇には不動明王を本尊にした護摩壇がしつらえてある。密教修法の要
そんなわけで、都内でだけ見ても、元三大師を祀るお寺には如意輪観音の像も置かれます。
自分が訪ねた限りでは、上野の寛永寺(開山堂)、拝島の本覚院など。
ほかにも元三大師がいるところは如意輪観音がいそうですね。

こちらは元三大師が変身した「角大師」アクスタ。深大寺で好評発売中
だいたい神仏の世界は、こうした変化身とか同体説とか、いろいろあるものです。
本体のことを「本地仏」と言ったりもします。
とくに神社と寺をむすぶ神仏習合の世界では、ある山の神の本体(本地仏)が十一面観音だとか、伊勢の天照大神の本地仏が大日如来(毘盧遮那如来)だとか、そういう言い方がされました。
明治の神仏分離でこうした話がリセットされるのですが、僕はいまそうした本地と変化身、神仏習合と神仏分離について追っています。
そういえばちょうど、7月からこうした話題を早稲田大学オープンカレッジ(中野キャンパス)で話しますので、興味があったらお申し込みください。急な告知スミマセン。
消された仏像―古社・古寺の神仏分離
―神と仏、1300年の「事情」―
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/65021/
それでは聴いてください。
宮澤やすみ & ザ・ブッツで「如意輪のまどろみ」
(如意輪観音をイメージした一曲です)。
(参考)
元三大師像 大開帳-深大寺公式サイト
https://www.jindaiji.or.jp/gokaicho/
■あわせて読む(関連記事)
深大寺・元三大師「大開帳」ー魔王に変貌した高僧とはー
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20250513-2/
NHK収録しました -(寛永寺)開山堂の如意輪観音-
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20201006-2/
「最澄と天台宗のすべて」まるで恐怖の魔王?元三大師
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20211019-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
吉原の酔狂と悲哀を歌った古典小唄集
『廓の夜』 宮澤やすみ(唄、三味線、解説)
https://yasumimiyazawa.com/kuruwanoyorubook.html
歌詞と解説をまとめたガイドブック発売中
※楽曲はYoutube、Spotifyなどで誰でも聴けますが、これがあればよりよくわかる!
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。ひさしぶりにザ・ブッツ(私のバンド)のライブをやってなかなかいい感じにできた宮澤やすみです。バンドも少しずつ継続していきたいものです。
そんな中、東京・深大寺「元三大師(がんざんだいし) 大開帳」の取材、その後編です。
以下、写真は特別に許可を得て撮影したものです。

深大寺 元三大師 大開帳の姿(許可を得て撮影)
堂内に入ると、厨子の前にどっかり坐す元三大師、その圧倒的な迫力と重量感は圧巻です。
そこで、お坊さんが拝観者の心願成就を祈願して真言を唱えます。
祈願の法要を聞きながら、元三大師と向き合う時間、こういうのは博物館では体験できないですね。
僕の場合は、取材として一日の閉堂後に幕を下ろす法要を動画で撮影をさせていただきました。
こちらに上げてあります。大師様一日おつかれさまでした、という動画です。
深大寺 元三大師 大開帳。閉幕のようす(許可を得て撮影)
さて、取材を終えてお堂を出て、堂前にある回向柱に眼をやると、
「如意輪」の文字が目に入りました。
筆で旧字体で書かれていますが、「本体 如意輪」とあります。

大師堂前に立てられた回向柱に「本体如意輪」と書かれている
「如意輪」とは、観音菩薩の一種、如意輪観音菩薩のこと。
六本の腕で六道に迷う人を救う、観音の中でもヴァージョンアップした姿です。真言宗や天台宗といった密教の世界に登場します。

参考:寛永寺・開山堂の如意輪観音菩薩(取材時に許可を得て撮影)
つまり、元三大師は、如意輪観音菩薩が本体であり、観音の変化身(へんげしん)であるということなんですね。
どういうことでしょうか?
もともと観音さんは、様々な姿に変化する(三十三身)と説かれていて、なにかと変身する菩薩なんです。元三大師の場合も、偉い高僧に見えるけどじつは観音様なのじゃ、という”キャラ設定”なんですね。
元三大師は、「良源(りょうげん)」という名の天台宗のお坊さんで、10世紀の平安時代に比叡山延暦寺を再興させた、天台宗のリーダーでした。
その修法の験力があまりにも強くて、とても人間技とは思えない。きっと本体は別のものなのだという話になりまして、元三大師の本地仏は如意輪観音だと記したのが、弟子の恵心僧都(源信)なのだそうです。
※この源信は、のちに『往生要集』を著して地獄と極楽の概念を説き、浄土教の基礎を作った人です。

深大寺 元三大師大師堂。大師の両脇には不動明王を本尊にした護摩壇がしつらえてある。密教修法の要
そんなわけで、都内でだけ見ても、元三大師を祀るお寺には如意輪観音の像も置かれます。
自分が訪ねた限りでは、上野の寛永寺(開山堂)、拝島の本覚院など。
ほかにも元三大師がいるところは如意輪観音がいそうですね。

こちらは元三大師が変身した「角大師」アクスタ。深大寺で好評発売中
だいたい神仏の世界は、こうした変化身とか同体説とか、いろいろあるものです。
本体のことを「本地仏」と言ったりもします。
とくに神社と寺をむすぶ神仏習合の世界では、ある山の神の本体(本地仏)が十一面観音だとか、伊勢の天照大神の本地仏が大日如来(毘盧遮那如来)だとか、そういう言い方がされました。
明治の神仏分離でこうした話がリセットされるのですが、僕はいまそうした本地と変化身、神仏習合と神仏分離について追っています。
そういえばちょうど、7月からこうした話題を早稲田大学オープンカレッジ(中野キャンパス)で話しますので、興味があったらお申し込みください。急な告知スミマセン。
消された仏像―古社・古寺の神仏分離
―神と仏、1300年の「事情」―
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/65021/
それでは聴いてください。
宮澤やすみ & ザ・ブッツで「如意輪のまどろみ」
(如意輪観音をイメージした一曲です)。
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https://www.jindaiji.or.jp/gokaicho/
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※楽曲はYoutube、Spotifyなどで誰でも聴けますが、これがあればよりよくわかる!
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
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宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com