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第436回 守り、伝える 地域独自の仏像と民俗文化―「横浜の文化財」より
”旅先で訪れた地域の郷土資料館や市町村の博物館で、思わぬ発見が--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。先日は横浜市歴史博物館へ、三味線の仕事でおじゃました宮澤やすみです。無声映画のお仕事でした(詳細下記)。
お仕事は映画と音楽の出演でしたが、会場は博物館。わたくしの第二の仕事現場ともいえるところですから、合間の時間に展示もチェック。
ちょうど館の30周年記念として特別展「横浜の文化財」が開催中でした。
撮影OKの箇所も多かったです。
テーマは、文化財の修復と伝承。

《阿弥陀如来坐像 後補部材》江戸時代の修理で付け足された腕や手先、衣などの部分
仏像を含めさまざまな文化財は、適切に保存して後世に伝えていくべきではありますが、その保存する技術、伝えていく努力なしでは成立しません。
そこにスポットを当てた企画展です。
仏像の展示としては、過去の修復を見直して、造像当初の姿に戻す作業が紹介されていました。

《阿弥陀如来坐像》向導寺(横浜市泉区)の旧本尊。近世の後補部分は別で保存し、造像当初の姿に戻された
後補(後から付け足された)の腕などの部材を取りはずしたのですが、これはこれで修復の歴史を見る貴重な資料であり、本体とは別に保存されていきます。
地域の信仰に根ざした仏像もありました。
この地蔵は「廻り地蔵」と呼ばれ、地域の家庭に持ち回りで厨子ごと運ばれ、自宅で拝まれた地蔵です。

「子育て地蔵」として、各家庭持ち回りで祀られた《廻り地蔵》。古いタンスのような厨子が味わい深い
こちらは、道路開発によって居場所を失った石造の不動明王像。
「滝坂不動」と呼ばれるこのお不動さんは、きっと起伏の途中にある滝や清流に置かれ、修行の場になっていたんじゃないでしょうか。

《滝坂不動》首都高速の建設により、堂宇や境内は失われたが、堂内に祀られていた石造不動明王像は博物館に保管された
もとあった境内の石碑には横浜市東部、子安や生麦の地名がみられるそうですが、近隣の住人が江戸時代から近代まで修繕を重ねて守ってきたことが分かります。
この横浜市歴史博物館がある横浜北部地域には、縄文-弥生遺跡や古墳もあります。
埴輪の展示やさらに古い縄文遺跡の紹介もありました。
現在の開発された田園都市からは想像もつきませんが、この地域は古代中世の歴史が刻まれていたのでした。

上矢部町 富士山古墳出土の埴輪
いまは東急田園都市線の車窓から丘陵と低地のアップダウンの地形を見ることができますが、高低差のある地域に古代の暮らしの名残を偲ぶことができます。

展示資料より、「稲荷前古墳」発掘のようす。4世紀後半の築造で、横浜市最古級の前方後円墳
東急田園都市線(沿線)といえば、マツコ・デラックスさんが嫌っているという話がよく聞かれますけど、こうした歴史を知ると印象が変わるんじゃないでしょうか。
横浜市に限らず、こうした地域独自の文化財(有形無形問わず)の保存と伝承は、全国どこでも問題なのではないでしょうか。
予算や人材の不足をニュースで見かける昨今ですが、地域博物館の役割が重要になりそうですね。
私自身も、旅先で訪れた地域の郷土資料館や市町村の博物館で、思わぬ発見をすることがあります。

獅子舞など郷土の民俗芸能の継承も課題
自分もなるべくこうした地域の文化財に目を向けていきたいと思います。取材のお申込みや情報のご提供お待ちしています。
それでは聴いてください。
宮澤やすみで「惚れて通う」
(小唄アルバム『廓の夜』より)。
今回は、無声映画(活動写真)の上映イベントでお呼びいただいて、出演してきました。
サイレント映画なので、その場で弁士が語り、楽士が演奏を付けます。百年前の映画も迫力の語りと生演奏で現代によみがえり、お子様たちにも大好評でした。各地でこうした仕事もしています。

左から上屋安由美(ピアノ)片岡一郎(活動弁士)宮澤やすみ(三味線)で、無声映画の上映をしました。弁士が語ってピアノと三味線が生演奏を付ける上演形態です
開館30周年記念特別展
横浜の文化財 Yokohama Heritage―まもり伝える地域の記憶
横浜市歴史博物館
2025年4月26日 (土) ~2025年7月27日 (日)
詳細
https://www.rekihaku.city.yokohama.jp/koudou/see/kikakuten/now/30thkinen/
■あわせて読む(関連記事)
鉈彫り観音の魅力再発見-特別展「横浜の仏像」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20210309-2/
古代寺院「多磨寺」と武蔵国の仏教文化をたどる「たまの寺とみほとけ」展
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20250311-2/
流血する阿弥陀如来のナゾ。立山信仰のヒミツ
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20181023-2/
新潟の豪農コレクション ”雲の大階段”を下りる阿弥陀三尊
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230718-2/
熊本が生んだヒーロー加藤清正公が疫病退散の「せいしょこさん」になるまで
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220111-2/
山の女神と大日如来。消えた富士山の仏教世界-北口本宮浅間神社の神と仏 その2
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20240917-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
早稲田大学オープンカレッジ(中野キャンパス)
消された仏像―古社・古寺の神仏分離
―神と仏、1300年の「事情」―
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/65021/
2.
吉原の酔狂と悲哀を歌った古典小唄集
『廓の夜』 宮澤やすみ(唄、三味線、解説)
https://yasumimiyazawa.com/kuruwanoyorubook.html
歌詞と解説をまとめたガイドブック発売中
※楽曲はYoutube、Spotifyなどで誰でも聴けますが、これがあればよりよくわかる!
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。先日は横浜市歴史博物館へ、三味線の仕事でおじゃました宮澤やすみです。無声映画のお仕事でした(詳細下記)。
お仕事は映画と音楽の出演でしたが、会場は博物館。わたくしの第二の仕事現場ともいえるところですから、合間の時間に展示もチェック。
ちょうど館の30周年記念として特別展「横浜の文化財」が開催中でした。
撮影OKの箇所も多かったです。
テーマは、文化財の修復と伝承。

《阿弥陀如来坐像 後補部材》江戸時代の修理で付け足された腕や手先、衣などの部分
仏像を含めさまざまな文化財は、適切に保存して後世に伝えていくべきではありますが、その保存する技術、伝えていく努力なしでは成立しません。
そこにスポットを当てた企画展です。
仏像の展示としては、過去の修復を見直して、造像当初の姿に戻す作業が紹介されていました。

《阿弥陀如来坐像》向導寺(横浜市泉区)の旧本尊。近世の後補部分は別で保存し、造像当初の姿に戻された
後補(後から付け足された)の腕などの部材を取りはずしたのですが、これはこれで修復の歴史を見る貴重な資料であり、本体とは別に保存されていきます。
地域の信仰に根ざした仏像もありました。
この地蔵は「廻り地蔵」と呼ばれ、地域の家庭に持ち回りで厨子ごと運ばれ、自宅で拝まれた地蔵です。

「子育て地蔵」として、各家庭持ち回りで祀られた《廻り地蔵》。古いタンスのような厨子が味わい深い
こちらは、道路開発によって居場所を失った石造の不動明王像。
「滝坂不動」と呼ばれるこのお不動さんは、きっと起伏の途中にある滝や清流に置かれ、修行の場になっていたんじゃないでしょうか。

《滝坂不動》首都高速の建設により、堂宇や境内は失われたが、堂内に祀られていた石造不動明王像は博物館に保管された
もとあった境内の石碑には横浜市東部、子安や生麦の地名がみられるそうですが、近隣の住人が江戸時代から近代まで修繕を重ねて守ってきたことが分かります。
この横浜市歴史博物館がある横浜北部地域には、縄文-弥生遺跡や古墳もあります。
埴輪の展示やさらに古い縄文遺跡の紹介もありました。
現在の開発された田園都市からは想像もつきませんが、この地域は古代中世の歴史が刻まれていたのでした。

上矢部町 富士山古墳出土の埴輪
いまは東急田園都市線の車窓から丘陵と低地のアップダウンの地形を見ることができますが、高低差のある地域に古代の暮らしの名残を偲ぶことができます。

展示資料より、「稲荷前古墳」発掘のようす。4世紀後半の築造で、横浜市最古級の前方後円墳
東急田園都市線(沿線)といえば、マツコ・デラックスさんが嫌っているという話がよく聞かれますけど、こうした歴史を知ると印象が変わるんじゃないでしょうか。
横浜市に限らず、こうした地域独自の文化財(有形無形問わず)の保存と伝承は、全国どこでも問題なのではないでしょうか。
予算や人材の不足をニュースで見かける昨今ですが、地域博物館の役割が重要になりそうですね。
私自身も、旅先で訪れた地域の郷土資料館や市町村の博物館で、思わぬ発見をすることがあります。

獅子舞など郷土の民俗芸能の継承も課題
自分もなるべくこうした地域の文化財に目を向けていきたいと思います。取材のお申込みや情報のご提供お待ちしています。
それでは聴いてください。
宮澤やすみで「惚れて通う」
(小唄アルバム『廓の夜』より)。
今回は、無声映画(活動写真)の上映イベントでお呼びいただいて、出演してきました。
サイレント映画なので、その場で弁士が語り、楽士が演奏を付けます。百年前の映画も迫力の語りと生演奏で現代によみがえり、お子様たちにも大好評でした。各地でこうした仕事もしています。

左から上屋安由美(ピアノ)片岡一郎(活動弁士)宮澤やすみ(三味線)で、無声映画の上映をしました。弁士が語ってピアノと三味線が生演奏を付ける上演形態です
開館30周年記念特別展
横浜の文化財 Yokohama Heritage―まもり伝える地域の記憶
横浜市歴史博物館
2025年4月26日 (土) ~2025年7月27日 (日)
詳細
https://www.rekihaku.city.yokohama.jp/koudou/see/kikakuten/now/30thkinen/
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鉈彫り観音の魅力再発見-特別展「横浜の仏像」
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1.
早稲田大学オープンカレッジ(中野キャンパス)
消された仏像―古社・古寺の神仏分離
―神と仏、1300年の「事情」―
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/65021/
2.
吉原の酔狂と悲哀を歌った古典小唄集
『廓の夜』 宮澤やすみ(唄、三味線、解説)
https://yasumimiyazawa.com/kuruwanoyorubook.html
歌詞と解説をまとめたガイドブック発売中
※楽曲はYoutube、Spotifyなどで誰でも聴けますが、これがあればよりよくわかる!
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com