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第441回 仏像に、なぜ銅像と木像がある?

”日本の仏像だって、造像当初は金ピカだったのです--”

音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。7月5日の三味線ライブを間近にして少し緊張している宮澤やすみです。小さな会場だと客の目線が近くて余計に緊張するんですよね。

そんな中、最近あまりなかったことですが、初心者向けの仏像講座を頼まれました。

じつは、ここ10年ほどは初歩的な講座はやっていなかった、というより、開催告知しても集まりが悪く中止になることもあったので、もう需要がないのかなと思っていたのです。


東大寺の大仏も、もとは金メッキされていた

「はじめての仏像見方講座」「仏像の魅力を語る」
こういったタイトルで、初心者向けにたくさん話をしてきたのは、私の場合2010年代のことでした。
テレビやラジオの番組もよく呼んでいただきました。

そのうち、テーマは次第に(自分の場合)歴史をさぐる方向へシフト。今は早稲田大学エクステンションセンターで神社と仏像の関係(神仏習合と分離)について話しています。

でも一周廻って、また需要がでてきたんでしょうか。

仏像に興味はあるけどあまり知らないという人に向けて、話す内容をあらためて考えてみました。
たとえば、

仏像に、なぜ銅像と木像がある?
といった話。


法隆寺金堂釈迦三尊を精密にスキャンし製作。東京藝術大学による「クローン釈迦三尊」。技法や銅の成分まで本物に近づけた

木像の話はこの連載で何回か話していますが、銅像はどんな意味があるのか、あらためて考えると意外と深いものです。

木像の場合は、クスノキやカヤなどの素材そのものに神聖さを感じてそれを造型したというのがあります。

銅像の場合、だいたい人類の古代文明では大事なものを青銅で造ってきましたから。
仏像も、古墳時代からの銅鐸や銅剣づくりで培った鋳造技術で、堅牢な像を造ったわけです。
古代文明では、金銀銅に鉄もふくめて金属は神聖視されていて、たんなる実用品の域を超えたものだったようですし。


法隆寺伝来・観音菩薩立像 東京国立博物館・法隆寺宝物館

さらに、金メッキされた金銅像の輝きが、仏の発する光を表現していてちょうどよかったと思われます。
仏の姿は、「仏の三十二相」といってその姿が規定されていて、その14番目が「金色相(こんじきそう)」といい、全身から金色の光を発するとされます。
だから東南アジアなどの仏像は金ピカなんですよね。


木像でも火焔後背の炎は光の表現といわれる。百済観音(レプリカ)大英博物館 蔵

日本の仏像だって、造像当初は金ピカだったのです。奈良の大仏も金メッキでピカピカに輝いていた。
それが次第にメッキが剥げて現在の状態になります。


緑青が付く前の銅像はこんな色をしている

ちなみに、金メッキする前の銅像も、出来立ての時は黄金色に光ります。新品の10円玉の色ですね。
これが経年によって暗緑色に変化して、それを日本人は「味わい深い」と称賛するので、再メッキなんてせずそのままの経年の味わいを保ちます。

茶の湯でいう「寂び」の美学が、日本の仏像には見て取れるわけですね。
侘びと寂びについても、この連載で書いていますから参照してください。

金色に輝いた銅像は時を経て「寂び」の美に至るという話でした。


それでは聴いてください。
Bronze で「Time Covers No Lies」




■あわせて読む(関連記事)
”侘び”と”寂び”何がちがう? 改めて考える”わびさび”「茶の湯の美学」展
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「木彫復活」のナゾ④ 「魂むき出し」一木造のひみつ
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230425-2/
法隆寺の釈迦三尊像が触れるって?
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20170225-2/




--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
早稲田大学オープンカレッジ(中野キャンパス)
消された仏像―古社・古寺の神仏分離
―神と仏、1300年の「事情」―
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/65021/

2.
吉原の酔狂と悲哀を歌った古典小唄集
『廓の夜』 宮澤やすみ(唄、三味線、解説)
https://yasumimiyazawa.com/kuruwanoyorubook.html
歌詞と解説をまとめたガイドブック発売中
※楽曲はYoutube、Spotifyなどで誰でも聴けますが、これがあればよりよくわかる!



宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html

宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com