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第455回 地図のようで、絵画のよう”東京圖”――「日本画聖地巡礼2025」より
”じつは描かれている建物は実際のものと異なります――”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。骨密度の検査で「骨が80代」と言われた宮澤やすみです。日光に当たって運動するのが大事だそうです。
そんな中、東京・広尾の山種美術館で開幕中の『日本画聖地巡礼2025』の報道内覧会に行ってきました。
写真は特別に許可を得て撮影したものです。

左から、横山大観《飛瀑華厳》1932(昭和7)年、竹内栖鳳《潮来小暑》1930(昭和5)年 いずれも山種美術館
この展覧会は、
――画題となった土地や、画家と縁の深い場所を「聖地」とし、その土地が描かれた作品と、現地の写真をあわせて展示する「日本画聖地巡礼」展を開催――(展覧会HPより)
というもの。つまり「聖地巡礼」とは、漫画やアニメで物語の舞台になった実際の土地を訪れる、アレと同じ意味合いです。
たしかに大きな絵を眼前にすると、その場所に旅する気持ちになって、ここがビルの地下の展示室であることを忘れます。
写真の使用が限られるのであまり多くは紹介できませんが、ぜひ展示室でゆっくり過ごしてください。毎回展示作品に合わせて提供されるオリジナル和菓子もおいしいです。

ミュージアムカフェ Cafe椿にて、作品をイメージしたオリジナル和菓子が毎回の楽しみだ
そんな中で、私が今回楽しみにしていたのがこちら。
現役(私と同い年)の画家・山口晃さんの作品です。

山口晃《東京圖 1・0・4輪之段》2018-25(平成30-令和7)年 山種美術館 撮影:宮島径 ©YAMAGUCHI Akira,Courtesy of Mizuma Art Gallery
東京を広く俯瞰する地図を大画面に表現した作品ですが、じつは描かれている建物は実際のものと異なります。
東京の過去2つのオリンピック(1940年(中止)、1964年)の間を交錯する東京のイメージがちりばめられ、縮尺も建物デザインも山口氏の取材によるモチーフと自由なイメージで構成されています。
私は地図を眺めて楽しむ地図ファンでもあるので、これも地図として見てしまいますが、いいえこれも「絵画」として鑑賞できるのでした。
そこで気づいたのが、唐突にあしらわれた蛍光緑の平面的な塗りです。
ノスタルジックな昭和風景が織りなす地図の上で、ここだけ急にパソコンの表示バグみたいな感じで違和感があります。
山口さん本人がいらしていたので、お尋ねしたところ、やはりこれ、絵画の構成として加えたものなのだそうです。
「ただの地図じゃ面白くないんで、いろんなレイヤーを重ねているんです」
歴史的な建造物をファンタジーとしてアレンジし、その上にデジタル画像のような構成も見られて動的な時間軸を感じました。

展示室風景。山口晃《東京圖 1・0・4輪之段》に見入る報道陣
それでいて、鑑賞者の脳内ではリアルな地図として認識している感覚があります。
その感覚の理由を考えると、道路網については非常に忠実に再現されているからではないでしょうか。
おかげで、
「あ、ここ、こないだ歩いたなあ」
「ここを進むとあの店があって」
というように、やっぱり地図として楽しんでしまうこともできるのです。
山種美術館の誇る「日本画」とは異なる世界観ですが(しかしこの作品も山種美術館の所蔵ではある)、私にとっては見ていて飽きない、お気に入りの作品となりました。
ぜひ実物をごらんいただきたいです。
それでは聴いてください。
ハロウィンで「ディス・イズ・トーキョー(HELLOWEEN / This Is Tokyo)」
【特別展】
日本画聖地巡礼2025
―速水御舟、東山魁夷から山口晃まで―
2025年10月4日(土)~11月30日(日)
山種美術館
詳細:
https://www.yamatane-museum.jp/exh/2025/pilgrimage.html
■あわせて読む(関連記事)
久保沙里菜さんと美術館でお花見「桜 さくら SAKURA 2025」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20250325-2/
苦楽の人生からにじみ出る軽やかさ―「上村松園と麗しき女性たち」展より―
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20250610-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
吉原の酔狂と悲哀を歌った古典小唄集
『廓の夜』 宮澤やすみ(唄、三味線、解説)
https://yasumimiyazawa.com/kuruwanoyorubook.html
歌詞と解説をまとめたガイドブック発売中
※楽曲はYoutube、Spotifyなどで誰でも聴けますが、これがあればよりよくわかる!
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:
https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。骨密度の検査で「骨が80代」と言われた宮澤やすみです。日光に当たって運動するのが大事だそうです。
そんな中、東京・広尾の山種美術館で開幕中の『日本画聖地巡礼2025』の報道内覧会に行ってきました。
写真は特別に許可を得て撮影したものです。

左から、横山大観《飛瀑華厳》1932(昭和7)年、竹内栖鳳《潮来小暑》1930(昭和5)年 いずれも山種美術館
この展覧会は、
――画題となった土地や、画家と縁の深い場所を「聖地」とし、その土地が描かれた作品と、現地の写真をあわせて展示する「日本画聖地巡礼」展を開催――(展覧会HPより)
というもの。つまり「聖地巡礼」とは、漫画やアニメで物語の舞台になった実際の土地を訪れる、アレと同じ意味合いです。
たしかに大きな絵を眼前にすると、その場所に旅する気持ちになって、ここがビルの地下の展示室であることを忘れます。
写真の使用が限られるのであまり多くは紹介できませんが、ぜひ展示室でゆっくり過ごしてください。毎回展示作品に合わせて提供されるオリジナル和菓子もおいしいです。

ミュージアムカフェ Cafe椿にて、作品をイメージしたオリジナル和菓子が毎回の楽しみだ
そんな中で、私が今回楽しみにしていたのがこちら。
現役(私と同い年)の画家・山口晃さんの作品です。

山口晃《東京圖 1・0・4輪之段》2018-25(平成30-令和7)年 山種美術館 撮影:宮島径 ©YAMAGUCHI Akira,Courtesy of Mizuma Art Gallery
東京を広く俯瞰する地図を大画面に表現した作品ですが、じつは描かれている建物は実際のものと異なります。
東京の過去2つのオリンピック(1940年(中止)、1964年)の間を交錯する東京のイメージがちりばめられ、縮尺も建物デザインも山口氏の取材によるモチーフと自由なイメージで構成されています。
私は地図を眺めて楽しむ地図ファンでもあるので、これも地図として見てしまいますが、いいえこれも「絵画」として鑑賞できるのでした。
そこで気づいたのが、唐突にあしらわれた蛍光緑の平面的な塗りです。
ノスタルジックな昭和風景が織りなす地図の上で、ここだけ急にパソコンの表示バグみたいな感じで違和感があります。
山口さん本人がいらしていたので、お尋ねしたところ、やはりこれ、絵画の構成として加えたものなのだそうです。
「ただの地図じゃ面白くないんで、いろんなレイヤーを重ねているんです」
歴史的な建造物をファンタジーとしてアレンジし、その上にデジタル画像のような構成も見られて動的な時間軸を感じました。

展示室風景。山口晃《東京圖 1・0・4輪之段》に見入る報道陣
それでいて、鑑賞者の脳内ではリアルな地図として認識している感覚があります。
その感覚の理由を考えると、道路網については非常に忠実に再現されているからではないでしょうか。
おかげで、
「あ、ここ、こないだ歩いたなあ」
「ここを進むとあの店があって」
というように、やっぱり地図として楽しんでしまうこともできるのです。
山種美術館の誇る「日本画」とは異なる世界観ですが(しかしこの作品も山種美術館の所蔵ではある)、私にとっては見ていて飽きない、お気に入りの作品となりました。
ぜひ実物をごらんいただきたいです。
それでは聴いてください。
ハロウィンで「ディス・イズ・トーキョー(HELLOWEEN / This Is Tokyo)」
【特別展】
日本画聖地巡礼2025
―速水御舟、東山魁夷から山口晃まで―
2025年10月4日(土)~11月30日(日)
山種美術館
詳細:
https://www.yamatane-museum.jp/exh/2025/pilgrimage.html
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宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
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宮澤やすみ公式サイト:
https://yasumimiyazawa.com



