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第483回 ”骸骨の庭園”を歩く 「ロン・ミュエク展」その2
”もしロン・ミュエクと河鍋暁斎が酒を酌み交わしたらきっと--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。突然壊れたPCのデータ復旧が終わりました。いちおう大事なデータは無事でした。アルバム制作再開します。
そんな中、森美術館「ロン・ミュエク展」レポートの後半です。
写真は報道内覧会で許可を得て撮影したものですが、多くは一般撮影OKです。

展示室風景。巨大な女性像《イン・ベッド》を囲む取材陣
ロン・ミュエクは、イギリス在住の彫刻家です。
――革新的な素材と技法を用いて具象彫刻の可能性を押し広げてきた現代美術作家ですーー(公式サイトより)
その作品は、超絶にリアルな人物像ですが、その大きさだけがリアルでなく、不思議なスケール感なのでした。
詳細は前回の掲載をごらんください。
さて、展示の後半はこんな感じで、いきなり骸骨がどーんと登場。

ロン・ミュエク《マス》2016-2017年 合成ポリマー塗料、ファイバーグラス
しかもおびただしい数の頭蓋骨が、広い展示室に無造作(に見えるように)に置いてある。
その隙間を縫うように、鑑賞者が歩いて鑑賞します。
一般撮影OKなのでいろんな角度から撮ると面白いですよ。

人が歩いてこそ作品が完成するインスタレーション作品
この作品《マス (Mass)》は、マスメディアのマスであり、おおきなかたまりでもあり、「大衆」「庶民」といった意味もある言葉です。
これらの頭蓋骨はよーく見ると同じ物はなく、頭のヒビの入り方とか鼻のあたりのかたちが異なります。
こうした「個性」ある骨たちが大量に集まってひとつの集団を形成。その全体を我々は遠望したり近くで見つめたりします。

グロテスクなはずの骸骨オブジェがなぜか美しい
この作品は、海外でもあちこちで展示されてきましたが、どれも会場展示室の形状や色合いに合わせたり、お国柄や地域性まで考慮したうえで綿密に配置をデザインするそう。
今回の展示を見てみると、白い部屋に白い頭蓋骨が、手前はポツポツと、奥に行くにしたがってうず高く積み上げられています。
これ全体をみると、私は勝手に枯山水庭園のように見えてきてしまいました。
鑑賞者は庭園を歩きながら骸骨の山を鑑賞します。
お寺だったら「あの山が蓬莱山を表し、鶴と亀が長寿を祝い」みたいな解説が流れることだろう、それが石じゃなくて骸骨だなんて、とんだブラックユーモア……と、
ロン・ミュエクの思惑通りでしょうか、妄想の世界に遊んでしまいます。

《マス》展示最奥部。積み上げられた骸骨が山を形成
これがもし、手とか大腿骨とか肋骨などほかの部位の骨も無造作に置かれていたとしたら、そのイメージは大災害や戦争での大量死のイメージを感じるでしょう。
しかし、こうして頭蓋骨だけが集まると、なんだか世の中の価値観を超越したものを感じます。
このへんは、欧米人と日本人(東洋人?)の頭骸骨に抱くイメージが異なることと思います。
欧米のホラー映画やヘヴィメタルバンドのジャケットデザインなんかを見ると、頭蓋骨は悪魔そのものみたいなイメージがありますが、
日本人は頭蓋骨に対してそこまで邪悪なイメージをもたず、逆にちょっと滑稽な妖怪程度のイメージがあるのではないでしょうか。
ちょうど先日は、サントリー美術館で河鍋暁斎を取材しましたが、暁斎は酔っぱらった勢いでよく骸骨を描いてきました。
ガイコツが踊りだしたり三味線を弾いたり、なんと楽しそうなこと。

河鍋暁斎《月下骸骨宴会図》。サントリー美術館「河鍋暁斎の世界」展にて
私は、そんな暁斎のガイコツを見たからでしょうか。ロン・ミュエクの骸骨庭園を見るとなんだか楽しい気分になってしまいました。
教科書的な説明をするなら、昨今の戦争における一般庶民の理不尽な死を考えさせる、などと言うのがよいのかもしれませんが、
ロン・ミュエクの作品の解釈は自由であるはず。
骸骨でできた枯山水庭園は、一休さんや白隠禅師などの破天荒な禅僧が好みそうですし、河鍋暁斎がこれを見たらますますお酒が進むんじゃないかと思います。
もしロン・ミュエクと河鍋暁斎が酒を酌み交わしたらきっと話が合うことでしょう。
それでは聴いてください。
ザ・パイレーツで「Peter Gunn(Live)」。
ロン・ミュエク
2026年4月29日(水・祝)~9月23日(水・祝)
森美術館
(主催)森美術館、カルティエ現代美術財団
詳細 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/ronmueck/
■あわせて読む(関連記事)
巨大な女性の空虚な眼に”丈六仏”を想う 「ロン・ミュエク展」その1
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20260512-2/
釈迦が三味弾き…ユーモアと洒脱を表現する超絶技巧 「河鍋暁斎の世界」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20260428-2/
阿弥陀か?観音か? ブランクーシ彫刻のフォルムにみえるもの
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20240611-2/
「マティス展」でみた”彫刻と絵画の間”
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20240220-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。突然壊れたPCのデータ復旧が終わりました。いちおう大事なデータは無事でした。アルバム制作再開します。
そんな中、森美術館「ロン・ミュエク展」レポートの後半です。
写真は報道内覧会で許可を得て撮影したものですが、多くは一般撮影OKです。

展示室風景。巨大な女性像《イン・ベッド》を囲む取材陣
ロン・ミュエクは、イギリス在住の彫刻家です。
――革新的な素材と技法を用いて具象彫刻の可能性を押し広げてきた現代美術作家ですーー(公式サイトより)
その作品は、超絶にリアルな人物像ですが、その大きさだけがリアルでなく、不思議なスケール感なのでした。
詳細は前回の掲載をごらんください。
さて、展示の後半はこんな感じで、いきなり骸骨がどーんと登場。

ロン・ミュエク《マス》2016-2017年 合成ポリマー塗料、ファイバーグラス
しかもおびただしい数の頭蓋骨が、広い展示室に無造作(に見えるように)に置いてある。
その隙間を縫うように、鑑賞者が歩いて鑑賞します。
一般撮影OKなのでいろんな角度から撮ると面白いですよ。

人が歩いてこそ作品が完成するインスタレーション作品
この作品《マス (Mass)》は、マスメディアのマスであり、おおきなかたまりでもあり、「大衆」「庶民」といった意味もある言葉です。
これらの頭蓋骨はよーく見ると同じ物はなく、頭のヒビの入り方とか鼻のあたりのかたちが異なります。
こうした「個性」ある骨たちが大量に集まってひとつの集団を形成。その全体を我々は遠望したり近くで見つめたりします。

グロテスクなはずの骸骨オブジェがなぜか美しい
この作品は、海外でもあちこちで展示されてきましたが、どれも会場展示室の形状や色合いに合わせたり、お国柄や地域性まで考慮したうえで綿密に配置をデザインするそう。
今回の展示を見てみると、白い部屋に白い頭蓋骨が、手前はポツポツと、奥に行くにしたがってうず高く積み上げられています。
これ全体をみると、私は勝手に枯山水庭園のように見えてきてしまいました。
鑑賞者は庭園を歩きながら骸骨の山を鑑賞します。
お寺だったら「あの山が蓬莱山を表し、鶴と亀が長寿を祝い」みたいな解説が流れることだろう、それが石じゃなくて骸骨だなんて、とんだブラックユーモア……と、
ロン・ミュエクの思惑通りでしょうか、妄想の世界に遊んでしまいます。

《マス》展示最奥部。積み上げられた骸骨が山を形成
これがもし、手とか大腿骨とか肋骨などほかの部位の骨も無造作に置かれていたとしたら、そのイメージは大災害や戦争での大量死のイメージを感じるでしょう。
しかし、こうして頭蓋骨だけが集まると、なんだか世の中の価値観を超越したものを感じます。
このへんは、欧米人と日本人(東洋人?)の頭骸骨に抱くイメージが異なることと思います。
欧米のホラー映画やヘヴィメタルバンドのジャケットデザインなんかを見ると、頭蓋骨は悪魔そのものみたいなイメージがありますが、
日本人は頭蓋骨に対してそこまで邪悪なイメージをもたず、逆にちょっと滑稽な妖怪程度のイメージがあるのではないでしょうか。
ちょうど先日は、サントリー美術館で河鍋暁斎を取材しましたが、暁斎は酔っぱらった勢いでよく骸骨を描いてきました。
ガイコツが踊りだしたり三味線を弾いたり、なんと楽しそうなこと。

河鍋暁斎《月下骸骨宴会図》。サントリー美術館「河鍋暁斎の世界」展にて
私は、そんな暁斎のガイコツを見たからでしょうか。ロン・ミュエクの骸骨庭園を見るとなんだか楽しい気分になってしまいました。
教科書的な説明をするなら、昨今の戦争における一般庶民の理不尽な死を考えさせる、などと言うのがよいのかもしれませんが、
ロン・ミュエクの作品の解釈は自由であるはず。
骸骨でできた枯山水庭園は、一休さんや白隠禅師などの破天荒な禅僧が好みそうですし、河鍋暁斎がこれを見たらますますお酒が進むんじゃないかと思います。
もしロン・ミュエクと河鍋暁斎が酒を酌み交わしたらきっと話が合うことでしょう。
それでは聴いてください。
ザ・パイレーツで「Peter Gunn(Live)」。
ロン・ミュエク
2026年4月29日(水・祝)~9月23日(水・祝)
森美術館
(主催)森美術館、カルティエ現代美術財団
詳細 https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/ronmueck/
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https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20240220-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com


