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第484回 優美な三尺阿弥陀は「運慶流」? 専修寺の寺宝
”快慶が造った三尺阿弥陀と比べてみると、似たような姿でありながら--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。突然壊れたPCは修理後も不安定ですが、どうやら古いソフトをインストールしたのがいけなかったようです。仏像とちがって古いものに価値は無い。
そんな中、春の美術展シーズン最後は「伊勢の名刹 専修寺」です。
お待たせしました。ひさしぶりの仏像!
しかも入場無料、一般撮影OK。
会場は東京・目白の霞会館記念・学習院ミュージアムです。

皿井舞教授の解説に聞き入る取材陣
専修寺(せんじゅじ)は、浄土真宗高田派の総本山。
広大な寺域に数々の巨大な堂宇が並びます。
近世には宮廷の皇族や貴族が住職を務めるいわゆる門跡寺院として大発展し現在に至っています。
その宮中ゆかりの宝物も見ごたえありましたが、まず展示室で最初にお目にかかるのがこの阿弥陀如来立像です。

阿弥陀如来立像(御対面所本尊) 慶俊 木造 金泥塗り・切金 玉眼嵌入 鎌倉時代・延応2年(1240)
像高およそ三尺(90cm)の、通称「三尺阿弥陀」と呼ばれる阿弥陀立像。
すらりとした立ち姿。右手を上げて左手をおろすポーズは「来迎印」といって、極楽浄土へお迎えするときのポーズとされます。
左足を半歩前に出して少し前のめりの姿勢。これも極楽からこの世にやってきたことを示しています。
発願者がまさに今この世を去ろうとするとき、臨終の場に置いて極楽往生を願ったとされます。
三尺阿弥陀は、慶派仏師の快慶が手掛けたスタイルが「安阿弥様(あんなみよう)」と呼ばれてひとつの様式になり、ほかの仏師もこれを真似て作りました。
さて今回の像はいつ誰が造ったんでしょうか。
墨書銘が残っていて、それによると鎌倉時代の延応2年(1240)の作で、仏師は「慶俊」と名乗る人。
この人の経歴は不明ですが、墨書には「法印運慶弟子」とあるそうで、それを信じれば運慶の技能を踏襲する仏師になります。
師匠は快慶じゃなかったんですね。
快慶が造った三尺阿弥陀と比べてみると(ネット検索すると出る)、ざっくり似たような姿でありながら、細かいところが異なっています。
担当された学習院大学教授・皿井舞先生によると、まず、おでこの髪際(はっさい)の部分に注目。
如来によくあるクルクルのパンチパーマ風髪の毛の塊が、おでこの上で前方に盛り上がっています。この盛り上がった髪型は快慶像には見られない特徴だそうです。

前髪部分や耳のかたちも運慶風か?ぜひ会場で実ブツをごらんあれ
また、袈裟の着こなしをみると、右胸の下に垂れる布がふたつある。ひとつは腕の方に垂れかかる袈裟ですが、その上に胸にぴったりつくように少し垂れる布があり、これは内衣、つまりインナーであるらしいです。
インナーまで表現するのは快慶の三尺阿弥陀には見られません。
そういうところから、確かに快慶の流派とは異なるようで、もしかしたら本当に運慶の弟子なのかもしれないですね。

胸前に垂れかかる衣に注目
そう言われてから、お顔をまじまじ見ると、
この丸みのある福々しいほっぺは円成寺大日如来(運慶のデビュー作)のようだし、
シュルっと切れ長の細い眼つきは、半蔵門ミュージアムにある大日如来の目に似ているように思えます。
快慶像の眼ってもっとギロッと開いてますもんね。
もとは金泥塗りで鈍く輝く金色の像だったそうで、衣の一部分には微細な截金文様がかすかに残っています。

皿井先生に照明を当てていただきやっと見えた輪宝文様(写真提供:田中ひろみ)。残念ながら通常照明ではほぼ見えない
次回は専修寺に伝来する宮家ゆかりのぜいたくな宝物を紹介します。

なじみの仏友たちもひさびさに集結。左から田中ひろみ、久保沙里菜、宮澤やすみ、みほとけ
展覧会は会期が短いのでお早めに行ってみてください。
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「むかえにきたよ Here They Come」。
伊勢の名刹 専修寺 -寺宝からみる公家文化
2026年5月22日(金)〜2026年6月13日(土)森美術館
霞会館記念学習院ミュージアム
来館案内 https://www.museum.univ.gakushuin.ac.jp/information/
■あわせて読む(関連記事)
仏像も見ごたえあり「法然と極楽浄土」展
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20240423-2/
100年前の映画に登場する三尺阿弥陀
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20211222-2/
快慶、大日如来の視線-石山寺・如意輪観音の旅 その10
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20200915-2/
阿弥陀か?観音か? ブランクーシ彫刻のフォルムにみえるもの
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20240611-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。突然壊れたPCは修理後も不安定ですが、どうやら古いソフトをインストールしたのがいけなかったようです。仏像とちがって古いものに価値は無い。
そんな中、春の美術展シーズン最後は「伊勢の名刹 専修寺」です。
お待たせしました。ひさしぶりの仏像!
しかも入場無料、一般撮影OK。
会場は東京・目白の霞会館記念・学習院ミュージアムです。

皿井舞教授の解説に聞き入る取材陣
専修寺(せんじゅじ)は、浄土真宗高田派の総本山。
広大な寺域に数々の巨大な堂宇が並びます。
近世には宮廷の皇族や貴族が住職を務めるいわゆる門跡寺院として大発展し現在に至っています。
その宮中ゆかりの宝物も見ごたえありましたが、まず展示室で最初にお目にかかるのがこの阿弥陀如来立像です。

阿弥陀如来立像(御対面所本尊) 慶俊 木造 金泥塗り・切金 玉眼嵌入 鎌倉時代・延応2年(1240)
像高およそ三尺(90cm)の、通称「三尺阿弥陀」と呼ばれる阿弥陀立像。
すらりとした立ち姿。右手を上げて左手をおろすポーズは「来迎印」といって、極楽浄土へお迎えするときのポーズとされます。
左足を半歩前に出して少し前のめりの姿勢。これも極楽からこの世にやってきたことを示しています。
発願者がまさに今この世を去ろうとするとき、臨終の場に置いて極楽往生を願ったとされます。
三尺阿弥陀は、慶派仏師の快慶が手掛けたスタイルが「安阿弥様(あんなみよう)」と呼ばれてひとつの様式になり、ほかの仏師もこれを真似て作りました。
さて今回の像はいつ誰が造ったんでしょうか。
墨書銘が残っていて、それによると鎌倉時代の延応2年(1240)の作で、仏師は「慶俊」と名乗る人。
この人の経歴は不明ですが、墨書には「法印運慶弟子」とあるそうで、それを信じれば運慶の技能を踏襲する仏師になります。
師匠は快慶じゃなかったんですね。
快慶が造った三尺阿弥陀と比べてみると(ネット検索すると出る)、ざっくり似たような姿でありながら、細かいところが異なっています。
担当された学習院大学教授・皿井舞先生によると、まず、おでこの髪際(はっさい)の部分に注目。
如来によくあるクルクルのパンチパーマ風髪の毛の塊が、おでこの上で前方に盛り上がっています。この盛り上がった髪型は快慶像には見られない特徴だそうです。

前髪部分や耳のかたちも運慶風か?ぜひ会場で実ブツをごらんあれ
また、袈裟の着こなしをみると、右胸の下に垂れる布がふたつある。ひとつは腕の方に垂れかかる袈裟ですが、その上に胸にぴったりつくように少し垂れる布があり、これは内衣、つまりインナーであるらしいです。
インナーまで表現するのは快慶の三尺阿弥陀には見られません。
そういうところから、確かに快慶の流派とは異なるようで、もしかしたら本当に運慶の弟子なのかもしれないですね。

胸前に垂れかかる衣に注目
そう言われてから、お顔をまじまじ見ると、
この丸みのある福々しいほっぺは円成寺大日如来(運慶のデビュー作)のようだし、
シュルっと切れ長の細い眼つきは、半蔵門ミュージアムにある大日如来の目に似ているように思えます。
快慶像の眼ってもっとギロッと開いてますもんね。
もとは金泥塗りで鈍く輝く金色の像だったそうで、衣の一部分には微細な截金文様がかすかに残っています。

皿井先生に照明を当てていただきやっと見えた輪宝文様(写真提供:田中ひろみ)。残念ながら通常照明ではほぼ見えない
次回は専修寺に伝来する宮家ゆかりのぜいたくな宝物を紹介します。

なじみの仏友たちもひさびさに集結。左から田中ひろみ、久保沙里菜、宮澤やすみ、みほとけ
展覧会は会期が短いのでお早めに行ってみてください。
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「むかえにきたよ Here They Come」。
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2026年5月22日(金)〜2026年6月13日(土)森美術館
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https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20240611-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com


