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第487回 神になった菅原道真の「威徳」。密教との関連は?

”牛にでも乗った明王のような姿に変化でもしたのだろうか?--”

音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。1月から制作していたアルバム音源がようやく完成した宮澤やすみです。リリース手続きとブックレットの制作が続きます。

そんな中、前回は雅楽の演奏会から菅原道真にも触れました。

その菅原道真さんは、「天神さん」として神社に祀られているのはご存じの通り。

その経緯はあちこちで紹介されていますが、あらためて整理しますと、

時は平安時代、宇多天皇のもとで能力を発揮していた菅原道真ですが、醍醐天皇の御世に代わるとライバルの藤原時平の讒言によって大宰府へ左遷されてしまいます。
その2年後に衰弱して死亡。これが延喜3年(903)のこと。大宰府の安楽寺に埋葬され、これが太宰府天満宮の原型になります。


太宰府天満宮 本殿

その後、都では要人の不穏な死が続き、道真の祟りではないかとうわさされます。道真さん、この時点ではまだ神にはならず、貴族として高い位が授けられるなどしました。
事が動いたのは延長8年(930)の「清涼殿落雷事件」。
政権トップの要人が胸や顔を焼かれて無残に死んでしまいます。


『北野天神縁起絵巻』より清涼殿落雷事件の図

もともと清涼殿の北方、北野の地に祀られていた火雷神に道真の怨霊がドッキングした形で「火雷天神」と呼ばれるようになります。まだ神社はなく、民間信仰や都市伝説のレベルでしょうか。

道真がいよいよ都で正式に神となるのは時が進んだ天暦元年(947)。
平安京の北野の地にある朝日寺をベースに北野天満宮が創建されました。


北野天満宮 拝殿

その御祭神は、もちろん菅原道真なのですが、のちの永延元年(987)に「天満大自在天神」という神号を一条天皇から賜りました。

死から45年近く経っても恐れられ、神に祭り上げられてしまった菅原道真。
その後もいろんな書物で、道真の神としての伝説が書かれ、『北野天神縁起絵巻』にまとめられます。これが公開された京都国立博物館「北野天神」展が記憶に新しいですね。

その「絵巻」の一巻にみられる『日蔵夢記(道賢上人冥途記)』は、日蔵(または道賢)という修験僧のエピソード集ですが、そこでは日蔵が天神と化した道真と会うエピソードが記されます。
そこで道真が言うには、「火雷天神は自分の眷属であり、自分は日本太政威徳天という」とのことなんですね。

名は体を表す、ということで平安時代の貴族にとって名前は非常に重要。
さっきから、「自在天」とか「威徳天」とか、仏像ファンにはなじみのある文字が出てきます。
自在天はシヴァ神、威徳天というと、密教の五大明王のメンバー「大威徳明王」を想起しますよね。


大威徳明王 平安時代 12世紀 明円作 大覚寺

当時は神仏習合真っただ中の時代、とくに密教が幅を利かせていたころです。道真に付けられた名前が密教風なのは、いわば「当時最新流行のネーミングセンス」だったんでしょうか。

例が飛躍しますが、現代でいえば「持続可能なんちゃら SDGs」とか「イマーシブ」とか、新しい言葉をやたら見かけて、よくわかんないけど何だか意識高そう、面白そう、って思っちゃいますもんね。言葉遣いには時代が反映されます。

話は戻って、「大威徳」なんて名前を付けられた道真の姿は、牛にでも乗った明王のような姿に変化でもしたのだろうか?そんな表現の絵画や彫刻はないか? と思いました。

しかし、調べた限りではそういう姿の道真像はなく、先ほどの日蔵のエピソードでは仁王(執金剛神)の姿で現れたとあるそうです。惜しい、明王形ではありませんでした。
日本太政威徳天の名前から、道真の怨霊と大威徳明王が同一視されたといわれることもあり、おそらく実際そういうコンセプトだったのでしょう。私もそう解釈していましたが、図像ではそこまで表現されなかったようです。

図像では、やはりよく見る衣冠束帯の姿が、神としての道真のスタンダードな姿といえそうです。


束帯天神像

ただ、北野天満宮自体はもともと神仏習合の色濃い神社で、本殿には十一面観音像が祀られ、大日如来を祀った多宝塔もあったことが分かっています。
京都の曼珠院や印旛薬師堂などには北野天満宮ゆかりの仏像が現在も伝わっています。
(菅原道真と観音の関係についてはまた今度)

それでは聴いてください。
宮澤やすみ で「風神雷神~世の中さまざま」(小唄カフェ ライブより)。



京都国立博物館「北野天神」展
https://kitano-tenjin2026.com/
(閉幕しています)


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太宰府天満宮-「牛つながり」による神仏習合神
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220329-2/
仏像の殿堂・観世音寺の仏像たちと大宰府のなぞ
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220405-2/


--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
早稲田大学オープンカレッジ(中野キャンパス)
【神社の仏像―廃仏から保存へ】
―神仏分離で何があったのか―
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/68045/
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宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html


宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com