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第488回 神になった菅原道真と十一面観音の関連
”神社本殿に仏像が置かれる、これが神仏習合時代のかたちです--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。胃と大腸の内視鏡検査のため下剤を飲みつつ絶食している宮澤やすみです。早く終わっておいしいものを食べたいです。
そんな中、前回の菅原道真の「天神さん」の話のつづきです。
前回記事の末尾で、
(菅原道真と観音の関係についてはまた今度)
と書いたので、今度にしないで今回整理することにしましょう。
仏像写真はいろいろと掲載にハードルがありまして、写真少なめですがご容赦ください。
菅原道真が天神として祀られた時代は神仏習合の時代で、とくに「本地垂迹(ほんじすいじゃく)」といって、神の本体は仏であるという考えが主流でした。
道真=天神の本地仏(神の本体とされる仏)は、十一面観音菩薩であるとされます。
十一面観音である理由については、はっきりしません。
伝承では、病にかかった幼少期の道真を看病した母が熱心に観音を信仰し、助かった道真も観音に深く帰依したとか。そんなエピソードが語られます。
ここで訪れたいのが、大阪にある道明寺です。
ここのご本尊は国宝の十一面観音菩薩で、御開帳や博物館で見た方も多いのではないでしょうか。
とても精緻に、プロポーション良く造られた名仏像です。
造られた時代は平安時代前期で、「菅原道真御作」といわれます。
筆者撮影の写真があるのですが掲載がちょっと憚られるのでイラストでごらんください。

《十一面観音菩薩立像》平安時代 8-9世紀 道明寺。檀像風の緻密な造りとふくよかかつ威厳のある顔立ち
まあ実際に本人が彫り上げたわけではないでしょうけど、時代は合っているし、道真と関係が深いのは確かだと思います。
というのは、ここ道明寺は、菅原道真の遠い先祖「土師氏(はじし)」の氏寺で、当初は土師寺(はじでら)といいました。
土師氏は、古墳の造営や埴輪(はにわ)造りに携わった氏族で、この道明寺一帯は大きな古墳があるのも関係しているんでしょうか。近鉄「土師の里」駅も近いです。

道明寺本堂(2008年撮影)
この土師寺には、菅原道真の叔母が住職を務めていたので、道真もよく訪れたそう。
大宰府に左遷される道すがらにも立ち寄り、観音像を刻んだという伝承が残っています。
で、先ほどのご本尊十一面観音立像のほかに、「試みの観音」と呼ばれる像高50センチほどの観音像もあり、こっちが道真御作!ともいわれますが、調査によると道真より古い奈良時代の作という説もあってはっきりしません。
なにしろ、道真が活躍した頃は十一面観音が盛んに造られた時代で、信仰にも流行り廃りがありますから、道明寺の観音をもとに道真=天神=本地十一面観音の図式ができるのも自然な流れだったと思います。

道明寺天満宮。もともと道明寺の一部だったが神仏分離で分かれた
そして、前回紹介した北野天満宮では、本殿の中に十一面観音の坐像が安置されて、ご神体の代わりといったかたちで信仰されました。
神社本殿に仏像が置かれる、これが神仏習合時代のかたちです。
明治の神仏分離で、北野天満宮境内の仏塔や経蔵は破棄され、仏像は撤去されました。
しかしその仏像は捨てられることはなく、現在は近隣のお寺に移されています。
印旛薬師堂平等寺(京都市下京区)には、本殿に祀られていた十一面観音坐像が、
親縁寺(京都市上京区)には、多宝塔にあった大日如来坐像が、
また、曼珠院(京都市左京区)にも北野天満宮ゆかりの十一面観音立像があります。
先日の「北野天神」展関連の京都国立博物館ツイートを引用します。
あと、北野天満宮の参道にある東向観音寺は、天満宮の前身である朝日寺が元になっていて、こちらのご本尊も「菅公御作」とされる本地十一面観音です(福岡の観世音寺から勧請したそう)。こちらは2027年御開帳予定。詳細を待ちたいと思います。
それでは聴いてください。
ザ・ブッツ で「ご開帳ブルース」(歌詞に道明寺が出てきます)。
道明寺略縁起(道明寺HP)
https://www.domyoji.jp/ryakuenki.html
道明寺と国宝十一面観音(藤井寺市HP)
https://www.city.fujiidera.lg.jp/soshiki/kyoikuiinkai/bunkazaihogo/fuziiderasinositeibunnkazai/kunifusiteibunkazai/1387699044697.html
■あわせて読む(関連記事)
神になった菅原道真の「威徳」。密教との関連は?
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20260616-2/
太宰府天満宮-「牛つながり」による神仏習合神
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220329-2/
仏像の殿堂・観世音寺の仏像たちと大宰府のなぞ
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220405-2/
秘仏かつ古仏、その魅力を存分に!「仁和寺と御室派展」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20180203-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
早稲田大学オープンカレッジ(中野キャンパス)
【神社の仏像―廃仏から保存へ】
―神仏分離で何があったのか―
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/68045/
※期間限定 入会金無料キャンペーン中
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。胃と大腸の内視鏡検査のため下剤を飲みつつ絶食している宮澤やすみです。早く終わっておいしいものを食べたいです。
そんな中、前回の菅原道真の「天神さん」の話のつづきです。
前回記事の末尾で、
(菅原道真と観音の関係についてはまた今度)
と書いたので、今度にしないで今回整理することにしましょう。
仏像写真はいろいろと掲載にハードルがありまして、写真少なめですがご容赦ください。
菅原道真が天神として祀られた時代は神仏習合の時代で、とくに「本地垂迹(ほんじすいじゃく)」といって、神の本体は仏であるという考えが主流でした。
道真=天神の本地仏(神の本体とされる仏)は、十一面観音菩薩であるとされます。
十一面観音である理由については、はっきりしません。
伝承では、病にかかった幼少期の道真を看病した母が熱心に観音を信仰し、助かった道真も観音に深く帰依したとか。そんなエピソードが語られます。
ここで訪れたいのが、大阪にある道明寺です。
ここのご本尊は国宝の十一面観音菩薩で、御開帳や博物館で見た方も多いのではないでしょうか。
とても精緻に、プロポーション良く造られた名仏像です。
造られた時代は平安時代前期で、「菅原道真御作」といわれます。
筆者撮影の写真があるのですが掲載がちょっと憚られるのでイラストでごらんください。

《十一面観音菩薩立像》平安時代 8-9世紀 道明寺。檀像風の緻密な造りとふくよかかつ威厳のある顔立ち
まあ実際に本人が彫り上げたわけではないでしょうけど、時代は合っているし、道真と関係が深いのは確かだと思います。
というのは、ここ道明寺は、菅原道真の遠い先祖「土師氏(はじし)」の氏寺で、当初は土師寺(はじでら)といいました。
土師氏は、古墳の造営や埴輪(はにわ)造りに携わった氏族で、この道明寺一帯は大きな古墳があるのも関係しているんでしょうか。近鉄「土師の里」駅も近いです。

道明寺本堂(2008年撮影)
この土師寺には、菅原道真の叔母が住職を務めていたので、道真もよく訪れたそう。
大宰府に左遷される道すがらにも立ち寄り、観音像を刻んだという伝承が残っています。
で、先ほどのご本尊十一面観音立像のほかに、「試みの観音」と呼ばれる像高50センチほどの観音像もあり、こっちが道真御作!ともいわれますが、調査によると道真より古い奈良時代の作という説もあってはっきりしません。
なにしろ、道真が活躍した頃は十一面観音が盛んに造られた時代で、信仰にも流行り廃りがありますから、道明寺の観音をもとに道真=天神=本地十一面観音の図式ができるのも自然な流れだったと思います。

道明寺天満宮。もともと道明寺の一部だったが神仏分離で分かれた
そして、前回紹介した北野天満宮では、本殿の中に十一面観音の坐像が安置されて、ご神体の代わりといったかたちで信仰されました。
神社本殿に仏像が置かれる、これが神仏習合時代のかたちです。
明治の神仏分離で、北野天満宮境内の仏塔や経蔵は破棄され、仏像は撤去されました。
しかしその仏像は捨てられることはなく、現在は近隣のお寺に移されています。
印旛薬師堂平等寺(京都市下京区)には、本殿に祀られていた十一面観音坐像が、
親縁寺(京都市上京区)には、多宝塔にあった大日如来坐像が、
また、曼珠院(京都市左京区)にも北野天満宮ゆかりの十一面観音立像があります。
先日の「北野天神」展関連の京都国立博物館ツイートを引用します。
神仏習合の考えに基づき、北野天神の正体は十一面観音とみなされました。こちらの像はかつて、北野社に祀られていた十一面観音像です。#北野天神展
— 京都国立博物館 (@KyotoNatMuseum) June 4, 2026
十一面観音立像
平安時代 12世紀
京都・曼殊院蔵 pic.twitter.com/GtvNLOIzQj
あと、北野天満宮の参道にある東向観音寺は、天満宮の前身である朝日寺が元になっていて、こちらのご本尊も「菅公御作」とされる本地十一面観音です(福岡の観世音寺から勧請したそう)。こちらは2027年御開帳予定。詳細を待ちたいと思います。
それでは聴いてください。
ザ・ブッツ で「ご開帳ブルース」(歌詞に道明寺が出てきます)。
道明寺略縁起(道明寺HP)
https://www.domyoji.jp/ryakuenki.html
道明寺と国宝十一面観音(藤井寺市HP)
https://www.city.fujiidera.lg.jp/soshiki/kyoikuiinkai/bunkazaihogo/fuziiderasinositeibunnkazai/kunifusiteibunkazai/1387699044697.html
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https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220405-2/
秘仏かつ古仏、その魅力を存分に!「仁和寺と御室派展」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20180203-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
早稲田大学オープンカレッジ(中野キャンパス)
【神社の仏像―廃仏から保存へ】
―神仏分離で何があったのか―
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/68045/
※期間限定 入会金無料キャンペーン中
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com


