- HOME
- 宮澤やすみの仏像ブツブツ
- 第489回 東京にもいた古墳の司・土師氏。-浅草、待乳山-
第489回 東京にもいた古墳の司・土師氏。-浅草、待乳山-
”ここ浅草は古墳が多くあったらしいんですよね--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。都内某所で怪談小唄の演奏を依頼された宮澤やすみです。ネタおろしの初出しになるので本番までに仕込みます。
そんな中、ここ数回は菅原道真関連の話を続けてきました。
前回は菅原道真の先祖である土師氏(はじし)を紹介しました。
祖先は日本書紀に登場する野見宿祢(のみのすくね)で、天皇の陵墓造営で殉死のかわりに埴輪を立てることを提案した人。以後古墳や埴輪造りを司る氏族として土師(はじ)の姓を賜ります。
土師氏の活躍は、古代の奈良や大阪あたりのことになるんですけど、じつは東国にも土師氏の有名人がいるんですよね。
名前を「土師真中知(はじのまつち)」といいます。
この方、江戸最古の寺である浅草寺の発祥に関わっているんですよね。

これは現在の浅草寺伝法院庭園を見学したときのもの。通常非公開
浅草寺の創建伝承によると、
この地域で漁師をしていた桧前(ひのくま)浜成、竹成の兄弟が、網にかかった金の像を引き上げる。
その像を地元の名士に見せたところ「これは観音様の像ぢゃ」と言ったのが土師真中知さんその人。
土師真中知は僧になり、自宅を寺にして観音像を祀ったのが浅草寺のはじまりといいます。

これは現在の浅草寺駒形堂。このあたりに最初のお堂が建ったという
土師真中知の没後、桧前兄弟と土師真中知を神として祀ったのが浅草神社、通称「三社さま」です。
5月の三社祭は、神となった浅草の三人のためのお祭りなんですね。
菅原道真と直接関係はありませんが、神に祭り上げられた土師一族の例として、道真のだいぶ先輩にあたります。
なぜ土師さんが東国の辺境にいたのかと不思議に思いますが、ここ浅草は古墳が多くあったらしいんですよね。
江戸時代の絵図を見ると、浅草寺本堂裏には小さな塚がいくつも描かれ、その上に神社の祠があったりします。

浅草寺伝法院(通常非公開)の庭園にある大きな手水鉢は、古墳の石棺を利用したもの
また、浅草寺裏の山谷や今戸あたりにある待乳山聖天(まつちやましょうてん)も、鳥居龍蔵という先生が大正期に調査して、もとは前方後円墳だったんじゃないかと唱えています。

山谷堀から待乳山を望む。明治中期。光村写真部 - 『旅の家つと』 29巻
待乳山聖天は、推古天皇の飛鳥時代に金の龍が出現したという伝説があり、これが浅草寺の山号「金龍山」の由来です。
つまり浅草寺と一体の寺院だったわけですね。

小さな山を登ると、待乳山聖天の本堂にたどりつく
そして、お気づきのとおり「まつち」という名前が土師真中知とつながって、なんらかの関係がありそうですが公式には言及されていません。
「待乳山」は「真土山」とも表記され、低い土地が広がる浅草界隈でここだけポッコリと10mくらい盛り上がっているんですよね。しかも隅田川の際のところです。
大きな古墳は、古代の水上交通で目に留まりやすい位置に造営されたというし、本当に古墳だったとしても不思議ではないです。
そうした土地に、古墳造営をルーツとする土師の一族がいたとしてもこれまた自然なことでしょう。

浮世絵《真乳山山谷堀夜景 (名所江戸百景)》歌川広重
この待乳山、江戸時代には、吉原に通う道すがらの目印として浮世絵に描かれたりしました。
私の専門である小唄にも「待乳山風、手拭いでしのぐ…」てなことを唄います。
それでは聴いてください。
宮澤やすみ で「山谷の小舟」(歌詞に待乳山が出てきます)。
■あわせて読む(関連記事)
神になった菅原道真と十一面観音の関連
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20260623-2/
神になった菅原道真の「威徳」。密教との関連は?
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20260616-2/
太宰府天満宮-「牛つながり」による神仏習合神
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220329-2/
夏休みは博物館で③ 浅草寺の観音「柳御影」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230808-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
早稲田大学オープンカレッジ(中野キャンパス)
【神社の仏像―廃仏から保存へ】
―神仏分離で何があったのか―
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/68045/
※期間限定 入会金無料キャンペーン中
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。都内某所で怪談小唄の演奏を依頼された宮澤やすみです。ネタおろしの初出しになるので本番までに仕込みます。
そんな中、ここ数回は菅原道真関連の話を続けてきました。
前回は菅原道真の先祖である土師氏(はじし)を紹介しました。
祖先は日本書紀に登場する野見宿祢(のみのすくね)で、天皇の陵墓造営で殉死のかわりに埴輪を立てることを提案した人。以後古墳や埴輪造りを司る氏族として土師(はじ)の姓を賜ります。
土師氏の活躍は、古代の奈良や大阪あたりのことになるんですけど、じつは東国にも土師氏の有名人がいるんですよね。
名前を「土師真中知(はじのまつち)」といいます。
この方、江戸最古の寺である浅草寺の発祥に関わっているんですよね。

これは現在の浅草寺伝法院庭園を見学したときのもの。通常非公開
浅草寺の創建伝承によると、
この地域で漁師をしていた桧前(ひのくま)浜成、竹成の兄弟が、網にかかった金の像を引き上げる。
その像を地元の名士に見せたところ「これは観音様の像ぢゃ」と言ったのが土師真中知さんその人。
土師真中知は僧になり、自宅を寺にして観音像を祀ったのが浅草寺のはじまりといいます。

これは現在の浅草寺駒形堂。このあたりに最初のお堂が建ったという
土師真中知の没後、桧前兄弟と土師真中知を神として祀ったのが浅草神社、通称「三社さま」です。
5月の三社祭は、神となった浅草の三人のためのお祭りなんですね。
菅原道真と直接関係はありませんが、神に祭り上げられた土師一族の例として、道真のだいぶ先輩にあたります。
なぜ土師さんが東国の辺境にいたのかと不思議に思いますが、ここ浅草は古墳が多くあったらしいんですよね。
江戸時代の絵図を見ると、浅草寺本堂裏には小さな塚がいくつも描かれ、その上に神社の祠があったりします。

浅草寺伝法院(通常非公開)の庭園にある大きな手水鉢は、古墳の石棺を利用したもの
また、浅草寺裏の山谷や今戸あたりにある待乳山聖天(まつちやましょうてん)も、鳥居龍蔵という先生が大正期に調査して、もとは前方後円墳だったんじゃないかと唱えています。

山谷堀から待乳山を望む。明治中期。光村写真部 - 『旅の家つと』 29巻
待乳山聖天は、推古天皇の飛鳥時代に金の龍が出現したという伝説があり、これが浅草寺の山号「金龍山」の由来です。
つまり浅草寺と一体の寺院だったわけですね。

小さな山を登ると、待乳山聖天の本堂にたどりつく
そして、お気づきのとおり「まつち」という名前が土師真中知とつながって、なんらかの関係がありそうですが公式には言及されていません。
「待乳山」は「真土山」とも表記され、低い土地が広がる浅草界隈でここだけポッコリと10mくらい盛り上がっているんですよね。しかも隅田川の際のところです。
大きな古墳は、古代の水上交通で目に留まりやすい位置に造営されたというし、本当に古墳だったとしても不思議ではないです。
そうした土地に、古墳造営をルーツとする土師の一族がいたとしてもこれまた自然なことでしょう。

浮世絵《真乳山山谷堀夜景 (名所江戸百景)》歌川広重
この待乳山、江戸時代には、吉原に通う道すがらの目印として浮世絵に描かれたりしました。
私の専門である小唄にも「待乳山風、手拭いでしのぐ…」てなことを唄います。
それでは聴いてください。
宮澤やすみ で「山谷の小舟」(歌詞に待乳山が出てきます)。
■あわせて読む(関連記事)
神になった菅原道真と十一面観音の関連
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20260623-2/
神になった菅原道真の「威徳」。密教との関連は?
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20260616-2/
太宰府天満宮-「牛つながり」による神仏習合神
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20220329-2/
夏休みは博物館で③ 浅草寺の観音「柳御影」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230808-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
早稲田大学オープンカレッジ(中野キャンパス)
【神社の仏像―廃仏から保存へ】
―神仏分離で何があったのか―
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/68045/
※期間限定 入会金無料キャンペーン中
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com


