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第493回 密教の最重要秘儀「後七日御修法」 ―「空海と真言の名宝」その2
”まさに空海はその年の第一回後七日御修法を見届け、3月に入定――”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。連日の出演を終えた翌朝、強烈なめまいで立っていられず仕事をキャンセルした宮澤やすみです。猛暑の中で熱中症もあったかも。
そんな中、夏の美術展シーズン到来。
東京国立博物館「空海と真言の名宝」のつづきです。
写真は報道内覧会で許可を得て撮影したものです(一部一般撮影OKのものもあります)。

展示室風景。数多くの仏像が並ぶ
真言宗には各派あり、16派の総本山、大本山である18の寺院で構成された「真言宗各派 総大本山会」略して「各山会」がありまして、
その会の山主によって営まれる最重要法会が「後七日御修法(ごしちにちのみしほ)」です。
これまで人の目に触れることなく、高僧だけが執り行ってきた後七日御修法。
今回の「空海と真言の名宝」では、これに関連する展示が見られる絶好の機会です。

展示パネルより。後七日御修法が執り行われる灌頂院内部
創始されたのがじつに承和2年(835)といいますから、今から1191年も前のことです。
「後七日」というのは、正月8日から七日間のこと。
宮中では、もともと元日から1月7日の節句まで神事を執り行います。
1月7日は「人日(じんじつ)の節句」といって、白馬を見る「白馬奏覧神事」があり、一般には七草粥の日ですね。
で、その後に行われるようになったのが「後七日御修法」です。
その目的は、玉体安穏や鎮護国家、五穀豊穣などを祈ること。
そもそも前の七日間の神事で同じようなことを祈っているはずなんですけどね、なぜでしょうか。

どのような仏画や仏具をどこにもちいるかを詳細に書いた重要史料。重要文化財《後七日差図》平安時代 12世紀 京都・仁和寺蔵
神事に加えて密教儀式もやろうじゃないかと提案したのは、空海の発案だったそうです。
当時の貴族たちとのプレゼン企画会議、見てみたかったですね。
「元日から出勤して7日やるだけでも大変なのに、その後もやるんすか?」
「財源はどこから出すんでしょうか!明確な答弁を」
「神事だけで果たして効果が出ているか、検証が必要です!」
「宮中も改革が必要です!」
とかなんとかあったかもしれませんが、どうでしょうかね。
835年というと、空海が高野山で「入定」する年にあたり、まさに空海はその年の第一回後七日御修法を完遂(または見届けたのか)して、3月に亡くなります(入定)。
真言密教はすっかり朝廷や皇室に認められ、すべてをやり遂げたと感じた空海さんは、高野山で永遠の禅定に入ったといいます。

密教修法の際に鳴らして諸仏を道場に迎える《金銅四天王五鈷鈴》中国・唐時代 8-9世紀 香川・弥谷寺
それまでの読経中心の学問仏教に比べて、真言というインド由来の”呪文(マントラ)”で世界を動かそうとする密教は、都の貴族たちは新鮮な驚きだったこどでしょう。空海のさまざまな活躍によって密教は国じゅうに浸透していきました。
その後は、いよいよ密教勢力が拡大していく時代に入ります。

後七日御修法で礼拝される三尊。清涼殿二間に置かれたことから「二間観音」とよばれる。重要文化財《聖観音菩薩・梵天・帝釈天立像(二間観音)》鎌倉時代・13世紀 京都・教王護国寺[東寺]

秘仏「二間観音」の背後も見られる。精緻な金属製の光背も目を見張る美しさ
空海は、平安京大内裏の中に真言院という施設を設けることが許され、国のための公式儀式を行いました。
それだけ、当時の朝廷は、空海がもたらした(当時最新の思想である)密教を篤く信奉したのでした。

展示パネルより。儀式の際に、二間観音の厨子の扉が開けられたようす。より神秘性を感じる
そんな「後七日御修法」は、国家行事として長年執り行われてきましたが、
この連載ですっかりおなじみ、明治の神仏分離策のあおりをうけて、明治4年(1871)に一旦廃止となります。
廃仏の機運が沈静化すると、明治16(1883)年に再開。このときから会場が東寺境内の「灌頂院」に変更され、現在に至っています。
それでは聴いてください。
宮澤やすみ で「抜け殻や」。
(新アルバム『小唄橋』リリースしました)
【弘法大師生誕1250年記念 特別展「空海と真言の名宝」】
東京国立博物館 平成館
2026年7月14日(火)~9月6日(日)
詳細
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/kukai2026/
■あわせて読む(関連記事)
密教仏大集合! 畏怖と親しみと軽いめまい ―「空海と真言の名宝」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20260721-2/
国宝・東寺展!寺を守る神像の「霊木信仰」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20190409-2/
国宝・東寺展!辛酸なめ子さんと見た「踏まれるもの」たち
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20190402-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。連日の出演を終えた翌朝、強烈なめまいで立っていられず仕事をキャンセルした宮澤やすみです。猛暑の中で熱中症もあったかも。
そんな中、夏の美術展シーズン到来。
東京国立博物館「空海と真言の名宝」のつづきです。
写真は報道内覧会で許可を得て撮影したものです(一部一般撮影OKのものもあります)。

展示室風景。数多くの仏像が並ぶ
真言宗には各派あり、16派の総本山、大本山である18の寺院で構成された「真言宗各派 総大本山会」略して「各山会」がありまして、
その会の山主によって営まれる最重要法会が「後七日御修法(ごしちにちのみしほ)」です。
これまで人の目に触れることなく、高僧だけが執り行ってきた後七日御修法。
今回の「空海と真言の名宝」では、これに関連する展示が見られる絶好の機会です。

展示パネルより。後七日御修法が執り行われる灌頂院内部
創始されたのがじつに承和2年(835)といいますから、今から1191年も前のことです。
「後七日」というのは、正月8日から七日間のこと。
宮中では、もともと元日から1月7日の節句まで神事を執り行います。
1月7日は「人日(じんじつ)の節句」といって、白馬を見る「白馬奏覧神事」があり、一般には七草粥の日ですね。
で、その後に行われるようになったのが「後七日御修法」です。
その目的は、玉体安穏や鎮護国家、五穀豊穣などを祈ること。
そもそも前の七日間の神事で同じようなことを祈っているはずなんですけどね、なぜでしょうか。

どのような仏画や仏具をどこにもちいるかを詳細に書いた重要史料。重要文化財《後七日差図》平安時代 12世紀 京都・仁和寺蔵
神事に加えて密教儀式もやろうじゃないかと提案したのは、空海の発案だったそうです。
当時の貴族たちとのプレゼン企画会議、見てみたかったですね。
「元日から出勤して7日やるだけでも大変なのに、その後もやるんすか?」
「財源はどこから出すんでしょうか!明確な答弁を」
「神事だけで果たして効果が出ているか、検証が必要です!」
「宮中も改革が必要です!」
とかなんとかあったかもしれませんが、どうでしょうかね。
835年というと、空海が高野山で「入定」する年にあたり、まさに空海はその年の第一回後七日御修法を完遂(または見届けたのか)して、3月に亡くなります(入定)。
真言密教はすっかり朝廷や皇室に認められ、すべてをやり遂げたと感じた空海さんは、高野山で永遠の禅定に入ったといいます。

密教修法の際に鳴らして諸仏を道場に迎える《金銅四天王五鈷鈴》中国・唐時代 8-9世紀 香川・弥谷寺
それまでの読経中心の学問仏教に比べて、真言というインド由来の”呪文(マントラ)”で世界を動かそうとする密教は、都の貴族たちは新鮮な驚きだったこどでしょう。空海のさまざまな活躍によって密教は国じゅうに浸透していきました。
その後は、いよいよ密教勢力が拡大していく時代に入ります。

後七日御修法で礼拝される三尊。清涼殿二間に置かれたことから「二間観音」とよばれる。重要文化財《聖観音菩薩・梵天・帝釈天立像(二間観音)》鎌倉時代・13世紀 京都・教王護国寺[東寺]

秘仏「二間観音」の背後も見られる。精緻な金属製の光背も目を見張る美しさ
空海は、平安京大内裏の中に真言院という施設を設けることが許され、国のための公式儀式を行いました。
それだけ、当時の朝廷は、空海がもたらした(当時最新の思想である)密教を篤く信奉したのでした。

展示パネルより。儀式の際に、二間観音の厨子の扉が開けられたようす。より神秘性を感じる
そんな「後七日御修法」は、国家行事として長年執り行われてきましたが、
この連載ですっかりおなじみ、明治の神仏分離策のあおりをうけて、明治4年(1871)に一旦廃止となります。
廃仏の機運が沈静化すると、明治16(1883)年に再開。このときから会場が東寺境内の「灌頂院」に変更され、現在に至っています。
それでは聴いてください。
宮澤やすみ で「抜け殻や」。
(新アルバム『小唄橋』リリースしました)
【弘法大師生誕1250年記念 特別展「空海と真言の名宝」】
東京国立博物館 平成館
2026年7月14日(火)~9月6日(日)
詳細
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/kukai2026/
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https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20190402-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com


