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第495回 造形作家・竹谷隆之が造る「人智を超えた存在」。現代の神像・仏像

”おどろおどろしさが存分に表現されていながら、仏像としてのルールをはずさない――”

音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。連載500回記念のイベントを開いてくださることになりました宮澤やすみです。イベントの詳細については後日。

そんな中、造形作家・竹谷隆之さんの工房におじゃましてきました。

造形作家とは、広い意味では彫刻家も含めて「立体物全般を作る人」のことですが、昨今の通例では架空のキャラクターや動物などを立体に仕上げる人を指すかと思います。

また、竹谷さんの場合は映画などに登場する架空のキャラクターの原型を作る原型師でもあり、もはや世界的にファンが多い第一人者です。
有名どころでは、まずシン・ゴジラの造形、それにスタジオジブリの展示における王蟲や巨神兵などの立体造形も、多くの人を惹きつけました。


腐海に沈む巨神兵。「アニメージュとジブリ展」2023年より

そんな竹谷さんと僕とのつながりは仏像でして、
過去には、竹谷さんが海洋堂の仏像フィギュア「リボルテック仏像」を手掛けたときに僕と雑誌で対談させていただき、それを機に作品集『リボタケ本』(二見書房)の共著、トークイベント出演などいろいろご一緒してきました。


歴史発掘? 2014年秋葉原でのトークショーにて、宮澤やすみ(左)と竹谷隆之(右)

それももう12年以上前のこと。
竹谷さんの活躍ぶりを遠くでみるにつけ、彼の仕事場をのぞいてみたくなり、取材を申し込んで工房にお邪魔してきました。

都内某所の仕事場に上がると、3名のスタッフとともに黙々と作業なさってます。


まさに職人の仕事場といった感じの作業机でデモを見せてくれた

造形の基本的な手仕事をデモンストレーションしてくれました。造形用の粘土を使い、名人の手さばきを間近で拝見。ものの数分でみるみるうちにリアルな男性の顔ができあがります。

端正な顔立ちが完成したところで、「ゾンビみたいに潰れた顔なんかもリアルに作りますよね」と僕が言うと、ああそういうのはこうして、と数秒で右目が裂けたグロ造形に変化させてくれました。


竹谷隆之のゴッドハンドで、ゾンビ化した右目の表現が数秒で形に

竹谷さんは、異様なクリーチャーを作らせたら世界にも右に出る人はいない、トップクラスの造形作家です。
その作品を見ると、生物の筋肉、骨、皮膚の、ずるずるぐちゃぐちゃしたテクスチャーが本当にリアルで架空の存在なのに生きているよう。もちろん人間や動物の造形もまさに生き人形。

これは本人の著書にも語られていますが、漁師かつ猟師であった父の仕事についていって動物や魚の死骸をつぶさに見てきたことが大きく影響しています(次回また触れます)。
形だけでなく、手触りやにおいも強烈に頭の中に焼き付いていて、その記憶が空想のクリーチャーに生命を吹込みます。

そして、仏像ファン目線でいうと、神秘的な造形にも注目。「人智を超えた存在を作ろうと思って」とポツリと言う竹谷さんが、オリジナルで創造した神像が「マクタカムイ」です。


竹谷隆之オリジナルの神の姿。《マクタカムイ》

「マクタ」はアイヌ語で「奥の方」、「カムイ」は「神」という意味。
奥の方とは、時間をずっとさかのぼって古代の神といいますか、あまたある神の姿のもっと原初的なものを竹谷さんなりに想像して創造した姿がこれになります。


マクタカムイの上半身

「実在感を出したい」と竹谷さんが言うように、架空の姿でありながら古代の壁画などに描かれていそうな、説得力があります。

もちろん竹谷さんは仏像にも大いに関心があり、竹谷さんが「リボルテック仏像」を作ったときは相当仏像を勉強したらしいです。運慶が大好き。


リボルテック・タケヤ仏像より、阿修羅

過去にご一緒したときに見た阿修羅も多聞天も、竹谷さん流のおどろおどろしさが存分に表現されていながら、仏像としてのルールをはずさない、その加減がすばらしかったのを覚えています。


”ニセ弥勒菩薩”を成敗する天部。下北沢「造形家・竹谷隆之『漁師で猟師の家に生まれましたが、継げませんでした。』発売記念展」2026年より

先日この連載で紹介した上根拓馬さんは現代アートとしての仏像を作っているし、イスムさんは会社として仏像を製造。そして同系列の仏像ワールドさんは信仰に根差した現代仏像を世に出している。
その姿や目的は異なるけれど、こうした「お寺じゃないところに置く仏像」がどんどん出ているのが現代です。

これからも、こうした現代仏像(神像含む)にも注目していきたいと思います。

竹谷さんの話は次回もつづきます。


それでは聴いてください。
ザ・ブッツ で「阿修羅イメージソング "Ash-La La La"」。
(竹谷さんのリボルテック仏像が登場)



参考:竹谷隆之関連本
『リボタケ本』
『竹谷隆之 畏怖の造形』
腐海創造 写真で見る造形プロセス』
『漁師で猟師の家に生まれましたが、継げませんでした。』
など



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--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html


宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com