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第496回 竹谷隆之と運慶-「造形」と「アート」の間で

”どんな仕事をしても、隠しきれない個性が自然ににじみ出てくる。そうなったら本物ですかね――”

音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。現代活動弁士のレジェンド・澤登翠師匠との共演を目前にして緊張している宮澤やすみです。下記「出演情報」ご参照ください。

そんな中、造形作家・竹谷隆之さんの工房におじゃましています。


これぞ職人の仕事場。竹谷さんの工房を訪問

竹谷さんとは、雑誌の対談でお目にかかって以来、作品集『リボタケ本』(二見書房)の共著、トークイベント出演などいろいろご一緒してきました。
それももう12年以上前のこと。
竹谷さんの活躍ぶりを遠くでみるにつけ、彼の仕事場をのぞいてみたくなり、取材を申し込んで工房にお邪魔してきました。

前回は、竹谷さんのオリジナル神像「マクタカムイ」を紹介して、現代の神仏像の話に触れました。


「マクタカムイ」の上半身

竹谷さんは仏像にも詳しく、とくに運慶の像はいろいろ勉強なさったそう。
運慶さんも竹谷さんも、人智を超えたキャラクターをこの世に出現させ、生気みなぎる造形を造り上げる作家で、運慶が今に生きていたら、または竹谷さんが鎌倉時代にいたらどうなるか、と想像します。
タイムマシンがあったら二人で対談してもらいたい。


重量感、存在感のあるクリーチャー達。袋を背負った風神もいる

仏像は、その姿に対してわりとこまごまとルールがあって、それを「儀軌(ぎき)」といいます。
如来の髪はクルクルの螺髪だとか、観音菩薩は蓮のつぼみを持つとか、いろいろある。
それを踏まえながら、仏師や作家は自分なりの造形を作っていくわけですが、そこに「個性」は必要だったんでしょうか。


巨神兵の牙

私たちが「美術」とか「アート」とか言うようになったのは明治の文明開化以降のことで、それ以前は美術という概念がなかったといわれます。

仏像に関して言えば、発願者(つまり発注元)がいて、その発注内容に応じて仏師が造仏します。
つまり、仏師は職人であり、作家の個性とかそういう話とは無縁の存在でありました。

運慶も、奈良の興福寺には古代の仏像ぽい厳格な眼つきを作ったり、東国では武士好みの力強い造形を作ったりしました。
実際どこまで発注者の意見があったのかわかりませんが、運慶自身のエゴというよりは注文主の趣味趣向を取り入れて作ったように思います。

竹谷さんは、映画などのキャラクターを造形するとき、脚本(または企画書の設定や監督の意向)を読み込んで、それに合わせて造形をするそう。まあ仕事の場合当たり前のことですが、クライアントの意向に応じた仕事をするのが世の常です。

竹谷さんが、受注仕事ではない自分発信の作品として造り上げたのが、先述の「マクタカムイ」です。
そして、以前出されたヴィジュアルブック『猟師の角度』は、竹谷さん独自の世界観が凝縮した空想科学漁師ファンタジー(検索すればわかる)です。

竹谷さんは、近年は自身の半生を綴ったエッセイ『漁師で猟師の家に生まれましたが、継げませんでした。』を刊行。これを読むと竹谷さんのルーツがよくわかります。


竹谷隆之・著『漁師で猟師の家に生まれましたが、継げませんでした。』

漁師かつ猟師であった父上を取り巻く家族の破天荒エピソードと、動物の死骸やにおいに囲まれて育った少年・隆之のくらし。造形の仕事をしてからの様々な体験。
おぞましい話やひどい体験も笑いに昇華して、楽しく読めるずっこけエッセイでありながら、にじみ出る家族愛にいつの間にかジーンときてしまうという、稀有な文章で、本のタイトルを見事に回収。
お父様のよい供養になったんじゃないでしょうか。


骨格標本は大事な資料

こうしてアーティストとしても活躍する竹谷さんですが、運慶はどうだったんでしょうか。
運慶の場合、仏像以外の作品は見つかっていません。しかし各地に残る運慶仏は、どれも運慶らしい作風が見られます。
のちの時代の仏師がこれをまねて運慶風がお手本になっていくわけで、それだけ運慶の個性は際立っていたといえるでしょう。


運慶の息子・湛慶作といわれる「子犬」。これは自分の趣味で造ったのだろうか?

どんな仕事をしても、隠しきれない個性が自然ににじみ出てくる。そうなったら本物ですかね。そういう意味では、運慶はやはり一流のアーティストと呼べる存在といえるかもしれないですね。

それでは聴いてください。
宮澤やすみ で「マイケルの(Mr. Michel Schenker)」。
(アルバム『小唄橋』より)


竹谷隆之関連本
『リボタケ本』
『竹谷隆之 畏怖の造形』
『漁師で猟師の家に生まれましたが、継げませんでした。』
『漁師の角度 完全増補改訂版』


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--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html


宮澤やすみ公式サイト:https://yasumimiyazawa.com