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第462回 汚れも迷いも払う「払子」をもつ仏像たち

”梵天の払子で、若き釈迦の迷いを払ったのでしょうか――”

音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。渋谷の映画館で活弁(無声映画)の生伴奏を終えた宮澤やすみです。この先も各所で演奏するので記事末リンクで情報チェックお願いします。

そんな中、世間は年末モードに突入。大掃除をする人も多いかもしれません。

仏像の世界も、なにかと物事をキレイにする事項がよくあります。
先日はお口と息をキレイにする仏像を紹介しましたが、身の回りをきれいにする払子(ほっす)を持つ仏像もいます。

払子とは、掃除のときにパタパタとはたいてホコリを落とすハタキのこと。
令和のいま、ハタキ自体がもう歴史上の遺物かもしれませんが、ハタキの歴史はとても古い。

仏像や仏教の世界では、払子は自分の身のみならず周りを清浄に保つ大事なアイテムつまり持物(じもつ)なのでした。
神奈川県立歴史博物館の画像を引用します。


《龍文払子》江戸時代 神奈川県立歴史博物館 詳細

インドは高温多湿。そこでも瞑想修行を想像しますと、
ハエなどの虫がぶんぶん飛び回る中での瞑想は、集中を乱されることが多いことでしょう。
そこで今日ご紹介のアイテム「払子」です!

とくに最高級の「白払(びゃくほつ)」と呼ばれる払子は、最高級、白牛の長い毛を使用、柄は金銀で造られます。
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・・・妄想が過ぎましたが、ほこりや虫を払う実用品だったのが、僧の心の乱れを払う意味合いが付き、法要や儀式で使われるアイテムになりました。
高僧が持つ払子は先ほどのような豪華な造りもあるそうです(釈迦は華美なものを固く禁じたそうですが)。

仏像の場合、払子をもつ仏像といえばまず梵天。


Wikipedia の画像を引用。払子は、ちょっと切れているが画面右端に見える

こちらは京都・東寺講堂の像で、右端にちょっと切れてはいますが払子が見えます。

東寺の像は密教世界での姿で、若々しい姿とガチョウの台座が目につきます。
そのほかの宗派では、梵天は着物をまとって静かに立つ姿がよくありますが、やはり払子を持つことが多いです。

梵天は、古代インド神話における最高神ブラフマーのこと。
万物の創造をつかさどるインド神の頂点のような存在です。

そんな高位の神が、悟りを開いた釈迦に対してその素晴らしい悟りを皆に教えるように勧めたという「梵天勧請」のエピソードがよく知られます。

梵天の払子で、若き釈迦の迷いを払ったのでしょうか。梵天の勧めがなかったら、仏教は存在しなかったわけで、さすが創造の神ですね。

仏像としては本尊の脇侍として、帝釈天(こちらはインド神話の最強神)とペアで立つことが多いです。

さて、ほかに払子を持つ仏像といえば、やっぱり千手観音が上がるでしょう。
あのお方、手が多いからなんでもお持ちなんですよね。


イスム 千手観音細密再現仕様。払子を持つ手はどれ?

千手観音は、仏の悟りを象徴する聖具と、魔物(煩悩)を打ち消す武具を持っていますが、払子も煩悩を払うための道具として持っていると思われます。


向かって右下(左下)の手にもつ、ニョロっとした持物が払子

神社でお払いをしてもらうときに使われる棒「大幣(おおぬさ)」と同じ機能をするのが、払子というわけですね。

ちなみに、各地の神社の祭りで「梵天祭り」がありますが、竹に房飾りを付けたものを「梵天」といってこれをもって町を練り歩きます。

その「梵天」の名前の由来はわかりませんが、おそらく梵天の払子のイメージが、物事を清める祭りの道具になったのかと思います。


それでは聴いてください。
宮澤やすみ 三味線弾き語りで「風をあつめて」。



参考文献:
秋山正美『仏像の持ちもの小事典』燃焼社


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--おしらせ---
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