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第479回 モナリザは観音? ひとひねりが面白い「下村観山展」

”仏像でみる完璧なポーズをした姿ではなくて、ここでは人目を気にしないプライベートのようす――”

音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。三味線で新作の小唄を作曲中の宮澤やすみです。ふつうのポピュラーソングとちがうので最初は苦労しましたがなんとか形になってきました。

そんな中、春の美術展シーズンたけなわです。
先日は、東京国立近代美術館「下村観山展」報道内覧会に行ってきました。

横山大観などと並んで近代絵画ファンにはとても知られた巨匠中の巨匠でありますが、仏像ファンにはあまりなじみがないでしょうか。ぼくも無かったです。

そんなわたくしでも、いや~この人はすごいや、と思わせる凄みがありました。


ただの美人画では終わらせない。《美人と舎利》1909(明治42)年 豊田市美術館

作品を一見すると、古典的な教科書的な作風に見えるけれど、よく見ると古典をしっかり踏襲しながら独自のひとひねりを加えてある、そのひねりを違和感なく鑑賞者に伝える卓越した技術とバランス感覚に感服します。

この方は、まず、日本美術の古典を徹底的に学んで自分のものにしています。
そのうえでイギリス留学で西洋絵画も修得し、なにしろ当時わかりうるさまざまな芸術を一身にどん欲に取り入れた人でありました。
こうした伝統の「型」をただマネするのでなく独自のアレンジを施すという、まさしく良い意味での「型破り」の手本のようなことを実行なさってます。

古典的な金屏風の画面に写実的な立体感をもたらすといったことは、下村観山なりの和洋ハイブリッド絵画といえるんじゃないでしょうか。


立体感のあるリアルを写実を屏風絵に取り入れた。《唐茄子畑》1911(明治44)年 東京国立近代美術館

時は明治の初期。廃仏毀釈の運動が高まった時に、寺社の宝物を日本の宝として保存しようとした岡倉天心とアーネスト・フェノロサ。
その二人の運動で、西洋文化もいいけれど日本国内の良いものも大事にしようと、日本美術を見直すようになります。
そうして設立された東京美術学校の一期生として入学したのが、下村観山でした。明治22年(1889)のこと。のちの東京芸術大学です。


古典的な王朝美も、大胆かつ緻密な画面構成で独自の境地をみせる。《小倉山》部分 1909(明治42)年 横浜美術館蔵

その後、岡倉天心が設立した日本美術院の仕事に携わり、岡倉天心の死後廃れた美術院の復興に尽力し、東京美術学校の教授にも復帰します。

そんなわけで、日本近代美術のメインストリームを歩む下村観山。
作品を見るとその巨人ぶりがうかがえます。

大正期は個人主義、昭和の前衛などの美術界の動きもなんのそので、一見古典的な作風ながら時代にあったものだったり、古典を知らなくても鑑賞できる抽象的な作品もあったり。


モナリザ風の顔をしているのは観音。《魚籃観音》部分 1928(昭和3)年 西中山 妙福寺蔵

そのどれもが、卓越した画面構成のバランス感覚と超絶技巧で完璧に仕上げられています。

仏像ファン目線で興味深かったのはこちらの作品。


展示風景より《闍維》1898(明治31)年 横浜美術館蔵

釈迦の涅槃図はよくありますが、これは荼毘に付されたあとの光景を描いたもの。
煙がたなびく棺のまわりに、菩薩や天部が大集合。
そのどれもが、いつも仏像でみる完璧なポーズをした姿ではなくて、「素」のままで立っています。
つまり、仏像でみるのが表向きのパブリックなイメージなのが、ここでは人目を気にしないプライベートのようす。
心配そうな顔をした増長天とか、菩薩の悲しそうな顔、そんな普段お寺では見られない姿を垣間見られるのが、ちょっとワイドショー的でいいですね。


古典的仏画のスタイルも。獅子のたてがみが跳ね上がる。通例と文殊普賢の位置が逆になっている。中央に釈迦如来があったと思われる。《普賢文殊》部分 1909(明治42)年頃 新潟県立近代美術館、万代島美術館

仏関連の画題も多いので、ここの読者のみなさんも興味深く観覧できると思います。


それでは聴いてください。
69 Jazz Clubで「梅は咲いたか ジャズバージョン」


下村観山展
2026年3月17日(火)~5月10日(日)
東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
詳細 https://art.nikkei.com/kanzan/



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--おしらせ---
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