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藤田嗣治は空海になれなかった
東京都美術館での「藤田嗣治展」非常におもしろかったです。
少年期から最晩年までを通して作品を展示、これだけ大規模な回顧展はかなりレアなことです。
しりあがり寿さんによる藤田とネコイラストがかわいい
フジタは、若いころからフランスに渡り、1920年代にはフランスでかなりの評価を得て、人気アーティストとなりました。
彼の作風を代表する「乳白色の下地」のなまめかしい美しさ、それから極細の墨線で描かれた輪郭線が特徴です。
これ、油絵なんですけど、画風はまさしく日本画をまねているんですよね。
金箔や銀箔を使うところなんかも、狩野派とかそのへんの障壁画を想起させます。
画題も画材も洋画のものなんですが、表現の仕方は和風です。
グッズのメインイメージは晩年の名作《カフェ》より
ヨーロッパの画壇で、こうしてジャポニスム的な感性で描いたら、フランス人は驚くんじゃないでしょうか。
日本人が海外で勝負するなら、やはり「日本らしさ」を前面に出すのが一番ですね。
と思っていたら、後日、ある講演会で面白い話を聞きました。
講師は、あの山田五郎さん。
テレビで見る感じとはちがい、西洋美術の評論家としてフジタ展の楽しみ方を存分に語り尽くしてくださいました。
が、冒頭おっしゃったのが
「日本人が海外で活躍するときは、気を付けて」
という話。
つまり、海外で活躍した日本人が、国内ですんなり受け入れられるとは限らない、というのですね。
じつは自分も思い当たるフシがありまして・・・
五郎さんがおっしゃるには、日本人の気質としてそういうのがあるのだそうです。
ちなみに山田五郎さんには、仏像バンドThe Buttzの推薦文を書いてもらいました。CDジャケット帯に注目
フジタの時代、近代化した日本は、西洋への渡航も増えていた。
その主な目的は、西洋文化を学んで日本に持ち帰ること。
しかし、フジタは逆のことをしちゃいました(笑)
西洋の地に「ニッポン」を持ち込んで、勝ってしまったんですね。
大いに称賛されるべきことですが、当時の日本は西洋崇拝が色濃い時代でしたから、日本の美意識をアチラへもたらして評価を受けるなんて、考えられなかったんじゃないでしょうか。
かつては浮世絵の評価だって江戸の人にはピンとこなかったそうですしね。
今回の展示を見れば、フジタの画業がとんでもなくすばらしいものであることは一目瞭然なのですが、日本より海外のほうが評価が高いんですよね(当時の日本にも熱狂的なファンはいたそうですが)。
フランスで名声を得て帰国したフジタは、日本政府の要請で、日本の暮らしを海外に紹介する映画を制作。しかし、お蔵入りになってしまいました。
今回の展示で上映していますが、子供たちが遊ぶ田舎の里の風景が郷愁をそそる、日本の良いところがつまった映像です。
しかし、当時はそれが前時代的と思われちゃったんですね。フランス人の目線では絶対ウケるはずなんですが、日本政府は近代化したモダン日本を見せたかった。時代がフジタと合わなかった一例です。
ところで、
仏像ファン目線で、海外へ渡って天下を取った日本人というと、空海がいますよね。
空海は、密教という海外文化を国にうまく活用して大活躍しましたが、フジタはどうだったでしょう。
国の要請でよかれと思って映画を作ったけどダメ。
その後、よかれと思って戦争画の仕事もしたけど戦後はそのことが裏目にでてしまうという残念さ。
よかれと思ってやったのに……くやしいですね。
遣唐使の時代から、日本はいつでも海外から文化を持ち帰るのが好きで、日本から文化を広めることが得意じゃなかったみたいですね。
そんな中、今はクールジャパンとか言って日本文化を広めようとしているようですが、うまくいっているのかどうか。
フジタは戦後ふたたびフランスへ。そしてフランス国籍を取りフランス人として亡くなります。
山田五郎さんの話によると、フランス人になった後も、くらしぶりは丹前を着てお茶漬け食べて、というコテコテの日本人の生活だったそうです。だったら日本で暮らせばいいのに、と思うのですが、それが叶わなかったんですね。
時は下って、昭和後期から平成へ。YMOや草間彌生など海外でも国内でも高い評価を得る人が出てきました。
藤田さんも、もしこの時代に生きていたらどうなったでしょうね。
藤田嗣治、今こそ日本で再評価すべき偉大なアーティストだと思います。
で、こうした方々とは格が違うんですけど、
ぼくが所属する「映楽四重奏」というグループも、何度もヨーロッパ公演ツアーをしてきました。
ちょうどフジタの時代に作られた古い無声映画を、弁士の語りと生演奏で上演する「活動写真」公演です。
この連載でもドイツやベルギーの記事を書いてますけど、このツアーの合間に取材したものでした。
今回、ひさしぶりに東京で公演します。逆に日本で公演するチャンスが少ない私達ですので、ぜひこの機会に見ていただきたいです。
やはり僕もいちおう日本人なんで、海外での活動成果を国内向けに振り向けていきたいと思うんですよね。
ドイツで熱狂的な喝采を受けた「鞍馬天狗」を上演。ヨーロッパでどんなことをやっていたのかを見てもらえればうれしいです。
(おしらせ)
【映楽四重奏ヨーロッパツアー凱旋公演】
活動写真弁士&和洋合奏団のユニット「映楽四重奏」がベルギー、ドイツでの公演で大成功を収めました。
その凱旋公演を開催致します。演目はドイツの日本映画ファンが熱狂の坩堝と化した『鞍馬天狗』です。
■日時:平成30年9月16日(日) 18:15開場 19:00開演
■場所:ワロスロード・カフェ(上野)
■出演:片岡一郎(弁士)宮澤やすみ(三味線)上屋安由美(ピアノ)田中まさよし(太鼓)
■料金:ライブチャージ 3,300円(※消費税込)
※軽食+ワンドリンク付き
■ご予約:Facebookメッセージ・E-mail・お電話にてお受け致します。
E-mail: waross@j-spirit.biz
Tel: 03-6803-0508
会場地図など詳細:
https://www.facebook.com/events/460117064486371/
活弁ユニット「映楽四重奏」
【没後50年 藤田嗣治展】
2018年7月31日(火)~ 10月8日(月・祝)
東京都美術館
公式サイト:
http://foujita2018.jp/
少年期から最晩年までを通して作品を展示、これだけ大規模な回顧展はかなりレアなことです。
しりあがり寿さんによる藤田とネコイラストがかわいい
フジタは、若いころからフランスに渡り、1920年代にはフランスでかなりの評価を得て、人気アーティストとなりました。
彼の作風を代表する「乳白色の下地」のなまめかしい美しさ、それから極細の墨線で描かれた輪郭線が特徴です。
これ、油絵なんですけど、画風はまさしく日本画をまねているんですよね。
金箔や銀箔を使うところなんかも、狩野派とかそのへんの障壁画を想起させます。
画題も画材も洋画のものなんですが、表現の仕方は和風です。
グッズのメインイメージは晩年の名作《カフェ》より
ヨーロッパの画壇で、こうしてジャポニスム的な感性で描いたら、フランス人は驚くんじゃないでしょうか。
日本人が海外で勝負するなら、やはり「日本らしさ」を前面に出すのが一番ですね。
と思っていたら、後日、ある講演会で面白い話を聞きました。
講師は、あの山田五郎さん。
テレビで見る感じとはちがい、西洋美術の評論家としてフジタ展の楽しみ方を存分に語り尽くしてくださいました。
が、冒頭おっしゃったのが
「日本人が海外で活躍するときは、気を付けて」
という話。
つまり、海外で活躍した日本人が、国内ですんなり受け入れられるとは限らない、というのですね。
じつは自分も思い当たるフシがありまして・・・
五郎さんがおっしゃるには、日本人の気質としてそういうのがあるのだそうです。
ちなみに山田五郎さんには、仏像バンドThe Buttzの推薦文を書いてもらいました。CDジャケット帯に注目
フジタの時代、近代化した日本は、西洋への渡航も増えていた。
その主な目的は、西洋文化を学んで日本に持ち帰ること。
しかし、フジタは逆のことをしちゃいました(笑)
西洋の地に「ニッポン」を持ち込んで、勝ってしまったんですね。
大いに称賛されるべきことですが、当時の日本は西洋崇拝が色濃い時代でしたから、日本の美意識をアチラへもたらして評価を受けるなんて、考えられなかったんじゃないでしょうか。
かつては浮世絵の評価だって江戸の人にはピンとこなかったそうですしね。
今回の展示を見れば、フジタの画業がとんでもなくすばらしいものであることは一目瞭然なのですが、日本より海外のほうが評価が高いんですよね(当時の日本にも熱狂的なファンはいたそうですが)。
フランスで名声を得て帰国したフジタは、日本政府の要請で、日本の暮らしを海外に紹介する映画を制作。しかし、お蔵入りになってしまいました。
今回の展示で上映していますが、子供たちが遊ぶ田舎の里の風景が郷愁をそそる、日本の良いところがつまった映像です。
しかし、当時はそれが前時代的と思われちゃったんですね。フランス人の目線では絶対ウケるはずなんですが、日本政府は近代化したモダン日本を見せたかった。時代がフジタと合わなかった一例です。
ところで、
仏像ファン目線で、海外へ渡って天下を取った日本人というと、空海がいますよね。
空海は、密教という海外文化を国にうまく活用して大活躍しましたが、フジタはどうだったでしょう。
国の要請でよかれと思って映画を作ったけどダメ。
その後、よかれと思って戦争画の仕事もしたけど戦後はそのことが裏目にでてしまうという残念さ。
よかれと思ってやったのに……くやしいですね。
遣唐使の時代から、日本はいつでも海外から文化を持ち帰るのが好きで、日本から文化を広めることが得意じゃなかったみたいですね。
そんな中、今はクールジャパンとか言って日本文化を広めようとしているようですが、うまくいっているのかどうか。
フジタは戦後ふたたびフランスへ。そしてフランス国籍を取りフランス人として亡くなります。
山田五郎さんの話によると、フランス人になった後も、くらしぶりは丹前を着てお茶漬け食べて、というコテコテの日本人の生活だったそうです。だったら日本で暮らせばいいのに、と思うのですが、それが叶わなかったんですね。
時は下って、昭和後期から平成へ。YMOや草間彌生など海外でも国内でも高い評価を得る人が出てきました。
藤田さんも、もしこの時代に生きていたらどうなったでしょうね。
藤田嗣治、今こそ日本で再評価すべき偉大なアーティストだと思います。
で、こうした方々とは格が違うんですけど、
ぼくが所属する「映楽四重奏」というグループも、何度もヨーロッパ公演ツアーをしてきました。
ちょうどフジタの時代に作られた古い無声映画を、弁士の語りと生演奏で上演する「活動写真」公演です。
この連載でもドイツやベルギーの記事を書いてますけど、このツアーの合間に取材したものでした。
今回、ひさしぶりに東京で公演します。逆に日本で公演するチャンスが少ない私達ですので、ぜひこの機会に見ていただきたいです。
やはり僕もいちおう日本人なんで、海外での活動成果を国内向けに振り向けていきたいと思うんですよね。
ドイツで熱狂的な喝采を受けた「鞍馬天狗」を上演。ヨーロッパでどんなことをやっていたのかを見てもらえればうれしいです。
(おしらせ)
【映楽四重奏ヨーロッパツアー凱旋公演】
活動写真弁士&和洋合奏団のユニット「映楽四重奏」がベルギー、ドイツでの公演で大成功を収めました。
その凱旋公演を開催致します。演目はドイツの日本映画ファンが熱狂の坩堝と化した『鞍馬天狗』です。
■日時:平成30年9月16日(日) 18:15開場 19:00開演
■場所:ワロスロード・カフェ(上野)
■出演:片岡一郎(弁士)宮澤やすみ(三味線)上屋安由美(ピアノ)田中まさよし(太鼓)
■料金:ライブチャージ 3,300円(※消費税込)
※軽食+ワンドリンク付き
■ご予約:Facebookメッセージ・E-mail・お電話にてお受け致します。
E-mail: waross@j-spirit.biz
Tel: 03-6803-0508
会場地図など詳細:
https://www.facebook.com/events/460117064486371/
活弁ユニット「映楽四重奏」
【没後50年 藤田嗣治展】
2018年7月31日(火)~ 10月8日(月・祝)
東京都美術館
公式サイト:
http://foujita2018.jp/