- HOME
- 宮澤やすみの仏像ブツブツ
- 東北仏の魅力を写真で「土門拳 × 藤森武写真展 みちのくの仏像」
東北仏の魅力を写真で「土門拳 × 藤森武写真展 みちのくの仏像」
”お二人の写真は、ゆがみも誇張もなく、実物に対面したときの印象を崩さない写真ばかり……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。仏像を歌うバンド「ザ・ブッツ（The Buttz）」の再始動にむけて準備をしています。新メンバーのお披露目は4/10（土）を予定しています。
さて、先日の「横浜の仏像」につづき、東京都の八王子市夢美術館へいってきました。
特別展「土門拳 × 藤森武写真展 みちのくの仏像」が、3月28日まで開催中です。
東北６県の仏像に焦点をあて、端正精緻な像から豪快素朴な像まで、珠玉の仏像写真を展示。
撮影者は、仏像ファンにはおなじみの土門拳と、その弟子だった藤森武の両氏です。
土門さんは東北行く機会が少なかったそうですが、藤森さんの写真がまた見ごたえありました。
展示入口にお目見えするのは双林寺の薬師如来坐像。2015年には東京国立博物館の特別展「みちのくの仏像」でもお出ましになりました
東北地方の仏像は、奈良時代には都の政治的な目的もからんで仏教が広められ、最初は法相宗、つぎに天台宗が広まり、たくさんの仏像が造られました。
国宝になっている福島の勝常寺、山形の立石寺、宮城の中尊寺など、都の影響を受けた仏像が残っています。
写真の展示でも、勝常寺の堂々とした風格あふれる薬師如来にほれぼれし、中尊寺の秘仏・一字金輪の端正なお顔がどアップで拝めます。
これは写真ならではの迫力ですね。得したような気分になりました。
仏像ファンおなじみの有名ブツだけでなく、土着の素朴な仏像も非常に見ごたえありました。
岩手県・二戸市・天台寺の薬師如来立像は、衣も螺髪も彫られてなく、ノミの彫り跡がうすく残っている。前回記事で紹介したような鉈彫りではなく、表面を平滑に仕上げようとした痕跡です。
ずんぐりした体型と「地元民のような風貌」（図録解説より）。こういう像は、都からやってきた仏像が十分に広まって、土着化した証かと思います。
地元の人が、地元に合わせて造ったもの。それは、教科書通りの仏教ではなく、地元のカミへの信仰を下地にした神仏習合の像で、図録でも「カミとしての仏像の代表例」と解説されています。
チラシのメインビジュアルは、鉈彫りが美しい岩手県二戸市天台寺の聖観音菩薩立像（撮影：藤森武）
秋田・小沼神社に伝わるという聖観音菩薩立像は、奈良・平安時代にさかのぼるという古い一木造像ですが、ちょっとなよっとした細身のスタイルに細やかで古風な衣文が丁寧に彫られて、都の造りに倣ったものと思いきや、顔立ちはちょっと下膨れの、地元の娘さんのよう。
頭上の化仏はおまんじゅうような形にチョンチョンと目鼻が彫られているという、地方仏らしい素朴な味わいで大変素敵な観音さんです。
写真だからこそ、細かいところまでまじまじと観ることができるわけです。
解説によると、「山上に湧き出た小さな沼のほとりに鎮座する」とあり、この一文を読むだけでも鬱蒼とした森の神秘的な光景が想像されてワクワクします。いつか現地にも行ってみたい。
本展は写真展であり、過去に肉眼で拝んだことがある仏像もなつかしく拝見しました。
私、宮澤やすみも、取材で仏像の写真を撮らせてもらう機会がありますが、レンズによる歪みはけっこう大きいもので、肉眼で見た印象と異なってしまうものです。
だから、自分がお寺や博物館で実物を拝んだあとは、なるべく写真とかおみやげの絵葉書とかを見ないで、肉眼の印象を忘れないようにしているのですが、今回はだいじょうぶでした。
土門拳、藤森武のお二人の写真は、ゆがみも誇張もなく、実物に対面したときの印象を崩さない写真ばかり。
そのへん、仏像ファンの心をよく理解されているんじゃないでしょうか。
それでは聴いてください。
ピチカート・ファイヴで「メッセージソング」
特別展【東日本大震災から10年 土門拳 × 藤森武写真展 みちのくの仏像】
2021/2/11（木・祝）〜 2021/3/28(日)
https://www.yumebi.com/exb.html
●おしらせ
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
１．
宮澤やすみソロアルバム
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
2021年1月13日発売しました
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
（ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応）
２．
宮澤やすみ監修 中村文人著
『仏像”ここ見て”調査隊 奈良編』
『仏像”ここ見て”調査隊 京都編』
くもん出版から発売中
https://amzn.to/3dDMYpn
宮澤やすみ公式サイト：http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター：https://twitter.com/yasumi_m
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。仏像を歌うバンド「ザ・ブッツ（The Buttz）」の再始動にむけて準備をしています。新メンバーのお披露目は4/10（土）を予定しています。
さて、先日の「横浜の仏像」につづき、東京都の八王子市夢美術館へいってきました。
特別展「土門拳 × 藤森武写真展 みちのくの仏像」が、3月28日まで開催中です。
東北６県の仏像に焦点をあて、端正精緻な像から豪快素朴な像まで、珠玉の仏像写真を展示。
撮影者は、仏像ファンにはおなじみの土門拳と、その弟子だった藤森武の両氏です。
土門さんは東北行く機会が少なかったそうですが、藤森さんの写真がまた見ごたえありました。
展示入口にお目見えするのは双林寺の薬師如来坐像。2015年には東京国立博物館の特別展「みちのくの仏像」でもお出ましになりました
東北地方の仏像は、奈良時代には都の政治的な目的もからんで仏教が広められ、最初は法相宗、つぎに天台宗が広まり、たくさんの仏像が造られました。
国宝になっている福島の勝常寺、山形の立石寺、宮城の中尊寺など、都の影響を受けた仏像が残っています。
写真の展示でも、勝常寺の堂々とした風格あふれる薬師如来にほれぼれし、中尊寺の秘仏・一字金輪の端正なお顔がどアップで拝めます。
これは写真ならではの迫力ですね。得したような気分になりました。
仏像ファンおなじみの有名ブツだけでなく、土着の素朴な仏像も非常に見ごたえありました。
岩手県・二戸市・天台寺の薬師如来立像は、衣も螺髪も彫られてなく、ノミの彫り跡がうすく残っている。前回記事で紹介したような鉈彫りではなく、表面を平滑に仕上げようとした痕跡です。
ずんぐりした体型と「地元民のような風貌」（図録解説より）。こういう像は、都からやってきた仏像が十分に広まって、土着化した証かと思います。
地元の人が、地元に合わせて造ったもの。それは、教科書通りの仏教ではなく、地元のカミへの信仰を下地にした神仏習合の像で、図録でも「カミとしての仏像の代表例」と解説されています。
チラシのメインビジュアルは、鉈彫りが美しい岩手県二戸市天台寺の聖観音菩薩立像（撮影：藤森武）
秋田・小沼神社に伝わるという聖観音菩薩立像は、奈良・平安時代にさかのぼるという古い一木造像ですが、ちょっとなよっとした細身のスタイルに細やかで古風な衣文が丁寧に彫られて、都の造りに倣ったものと思いきや、顔立ちはちょっと下膨れの、地元の娘さんのよう。
頭上の化仏はおまんじゅうような形にチョンチョンと目鼻が彫られているという、地方仏らしい素朴な味わいで大変素敵な観音さんです。
写真だからこそ、細かいところまでまじまじと観ることができるわけです。
解説によると、「山上に湧き出た小さな沼のほとりに鎮座する」とあり、この一文を読むだけでも鬱蒼とした森の神秘的な光景が想像されてワクワクします。いつか現地にも行ってみたい。
本展は写真展であり、過去に肉眼で拝んだことがある仏像もなつかしく拝見しました。
私、宮澤やすみも、取材で仏像の写真を撮らせてもらう機会がありますが、レンズによる歪みはけっこう大きいもので、肉眼で見た印象と異なってしまうものです。
だから、自分がお寺や博物館で実物を拝んだあとは、なるべく写真とかおみやげの絵葉書とかを見ないで、肉眼の印象を忘れないようにしているのですが、今回はだいじょうぶでした。
土門拳、藤森武のお二人の写真は、ゆがみも誇張もなく、実物に対面したときの印象を崩さない写真ばかり。
そのへん、仏像ファンの心をよく理解されているんじゃないでしょうか。
それでは聴いてください。
ピチカート・ファイヴで「メッセージソング」
特別展【東日本大震災から10年 土門拳 × 藤森武写真展 みちのくの仏像】
2021/2/11（木・祝）〜 2021/3/28(日)
https://www.yumebi.com/exb.html
●おしらせ
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
１．
宮澤やすみソロアルバム
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
2021年1月13日発売しました
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
（ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応）
２．
宮澤やすみ監修 中村文人著
『仏像”ここ見て”調査隊 奈良編』
『仏像”ここ見て”調査隊 京都編』
くもん出版から発売中
https://amzn.to/3dDMYpn
宮澤やすみ公式サイト：http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター：https://twitter.com/yasumi_m
