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第351回 下北沢で見つけた”地蔵のような”ナゾの庚申塔

”お堂に祀られている石塔をみて、おどろきました--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。三味線のイベント(下記おしらせ参照)のチラシを作り、各所に置いてもらうようお願いして回っている宮澤やすみです。やっぱり最後は紙が頼りです。

そんな中、東京の若者文化の聖地・下北沢でおもしろい庚申塔(こうしんとう)を見かけました。
下北沢は、ぼくもライブハウスでバンドのライブをやったりした、にぎやかな街です。


下北沢の庚申堂

庚申塔は、庚申信仰をもとに集まる「庚申講」が立てる記念碑のこと。
庚申とは、昔の暦で60日に一度来る特別な日。
「庚申」の日、自分のツミケガレを天に知られないよう物忌みし、寝ずに過ごすという道教由来の習わしが庚申信仰の原型なのですが、次第に仏教や民間の俗信と入り混じり宗教色は薄れます。
江戸時代ごろは、地域の仲間で集まって夜通し過ごし宴会するような、ご町内の寄合みたいな行事だったようです。

ではまったく信心が無いイケイケパーティだったのかというと、そうとも言えないようで。
庚申塔は、村の辻々に置かれ、外界から来る疫病や祟りといった邪気を封じ集落を守る結界のような役割も込められたようです。江戸では馬頭観音なども同じような意味合いでよく見られます。信州では道祖神があるし各地で特色があるのでしょうね。


ここ下北沢の庚申堂がある場所も、古い道や小川がそのまま残ったような入り組んだ四つ辻で、集落の要に位置するように見える

今に残る庚申塔は、レジャーと信仰が一体になっていた近世庶民のくらしぶりが想像できる、歴史遺産でもあります。

ここ下北沢の庚申堂は木造の小さなお堂で、中に石の庚申塔が祀られています。
若者が行き交うにぎやかな街ですが、観察していると近隣のバーの店主みたいなシュッとしたイケオジが、丁寧にお参りしていくのを見かけました(バーの店主かどうかは知りません)。

都会にも、昔からの信仰が息づいている。
そんなほっこりした気分になったのもつかの間…、

お堂に祀られている石塔をみて、おどろきました。

赤い前掛けと、赤い頭巾が付けられて、
まるでお地蔵さんのようではありませんか。


赤い前掛けのおかげでお地蔵さんのように見えるが、じつは塔上部の宝輪部分を覆ったもの。画面下部の石像の広がりは、塔の屋根形の部分

以前見たときは夜の暗がりで、お地蔵さんがいるのかと思って素通りしたのですが、昼間によくよく見ると四角い石塔(宝篋印塔のような角ばった塔)なのです。

これはめずらしいんじゃないでしょうか。

そもそも赤い前掛けは、水子供養など子供への追善供養でお地蔵さんに施す衣装です。
子供を救う地蔵を子供の姿にするという習俗で、じつは近代以降に広まったスタイルらしいんですが。

今ではもう地蔵に限らず馬頭観音でも如意輪観音でも、石仏であればなんでもという勢いで、赤い前掛けが付けられます。

まあごもっともなことで、一般庶民の方は、地蔵は前掛けOK、これは観音だから前掛けナシ!なんて、いちいち区別しませんもんね。
見た目にかわいいから、ちょっと信心深い近所のおばさん等が、手作りして奉納したりするんでしょうか。

それでも、まさか仏像でない塔にまで赤い前掛けをするとは・・・


画面奥が下北沢駅。車の進入は道路標識が、邪気の侵入は庚申塔が止めている

よっぽど、石像には赤い前掛けを付けないと気が済まない層が、一定数いらっしゃるんでしょうか。
それとも、下北沢庚申塔ならではの、なにか特別ないわくがあるのでしょうか?
もし何かわかったらお知らせしますが、もしご存知の方がいらしたら、ご教示くださいますか。

都会の雑踏にまぎれて、ちょっと不思議な光景を見つけました。

それでは聴いてください。
レディオヘッドで「Kid A」


(参考)
庚申塔(こうしんとう)って何│目黒区ホームページ
※庚申信仰の説明がわかりやすく書いてあります
https://www.city.meguro.tokyo.jp/smph/gyosei/shokai_rekishi/konnamachi/koshinto/nani.html



---おしらせ---

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宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m