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第450回 塑像の眼を模した運慶の技量「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」
”運慶はそれに応えて、地元・奈良で幼少から見てきた古い仏像の姿(様式)を取り入れ――”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。今月9/27土曜に自主企画ソロライブを控えている宮澤やすみです。シルバーウイークの存在をすっかり忘れて日程を組んでしまいましたが、どなたもなんとか来てほしいです。
そんな中、東京国立博物館では「運慶展」が開幕。プレス内覧会に行ってきました。
今回は、奈良・興福寺北円堂の仏像が主役です。
平安末~鎌倉時代を代表する仏師・運慶晩年の傑作といわれます。

展示風景より。多くの報道陣が集まる
本尊は弥勒如来。このクールでりりしいお顔、ファンが多い仏像です。
今回は間近で見ることができましたが、厳格な表情でありながら、ほっぺたがぷっくりふくらんでやわらかそう。
「思わずつまんでみたくなる」と学芸員の方もうれしそうでした。
このぷっくりほっぺは、運慶の如来像にはよく見られ、円成寺の大日如来像なども赤ちゃんのようなふくぶくしい頬に表現されています。
その様子は展示室で間近にごらんください。

展示風景より。本尊の弥勒如来坐像を中心に、無著菩薩、世親菩薩の立像が並ぶ。三躯とも国宝
胎内納入物の解説も興味深かったです。
弥勒如来像内の空洞には数々の納入物が収められていて、その写真が展示室パネルや図録で見ることができました。
体部には、仏の魂「密教で悟りを求める清浄な心(図録より)」を表す、水晶製の心月輪(しんがちりん)が収められ、
頭部には、五輪塔と経巻のほか、像高7.1cmの小さな弥勒菩薩像も入っています。
頭の中に小さな像。スーパーロボ好きの筆者としては、マジンガーZを想起します。
そして、脇に立つ無著(むじゃく)・世親(せしん)の両像は、鎌倉写実表現の極致。
彩色が剥げているし、厚手の衣をまとうシンプルな出で立ちではあるのですが、なぜか生きて息遣いが聞こえてきそうな迫真の写実に驚きます。
後ろから見てみると、衣が揺れて動きそうなほどのリアルさを感じました。

後ろから見ると、無著菩薩、世親菩薩の衣のリアルさが際立つ
そして、現在は中金堂に安置されている四天王。
弥勒や無著世親と同じくカツラ材で造られた四天王立像は、本来は北円堂に安置されていたとされます。
つまり、今回は北円堂ゆかりの仏像群が勢ぞろいし、かつての内陣の再現がされているというわけです。

国宝 多聞天立像。本企画のメインヴィジュアルやグッズになって人気の尊像
北円堂という建物は奈良時代からあったのですが、平安末期の焼き討ち後に再建。その再建時に活躍したのが運慶をリーダーとする慶派仏師たちでした。
図録の解説によると、興福寺からは焼失した仏像のありし姿を踏襲したものを発注されたようです。
運慶はそれに応えて、地元・奈良で幼少から見てきた古い仏像の姿(様式)を取り入れました。
弥勒如来の場合は、胸元にみえる薄い衣の表現が奈良の古い仏像に共通。
四天王の場合は、衣服が背後にはためく表現や、顔のパーツを中心に寄せた造作が奈良時代の様式なのだそう。

グッズ売場より「チーム北円堂」のアクリルスタンド
さらに、眼にも注目。かつての北円堂の四天王像は塑像(粘土で造った像)で、黒目の部分(瞳)に碁石のような黒い石などをはめ込んでいたそうで、運慶はそれを木彫で踏襲しました。
四天王の瞳を少し盛り上げた形に彫り上げ、塑像の黒石の瞳のように別材を埋め込んだかに見える工夫を施してあるそうです。

持国天と弥勒仏、無著。大きく見開いた持国天の眼に注目
運慶自身から見ても奈良時代は何百年も前のいにしえの時代。こうした古い様式を盛り込みつつ、全体的には迫真の写実表現で運慶&慶派のお家芸を見せてくれている点が、北円堂仏像の特徴といえるでしょうか。
この北円堂は、藤原氏の大御所・藤原不比等の追善のために建てられたお堂です。

国宝 広目天立像。広目天が持つとされる筆と巻物が無い。その理由はまたこんど
そこになぜ弥勒如来、弥勒菩薩が祀られたのか、その意味はまた次週以降(たぶん次々週)紹介したいと思います。
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「運慶イメージソング "Great Sunshine Boy"」(円成寺大日如来をモチーフにしたオリジナルソング)
特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」
2025年9月9日(火)~11月30日(日)
東京国立博物館 本館特別5室
詳細:
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/unkei2025/index.html
■あわせて読む(関連記事)
気分は仏像同窓会!?「運慶展」(2017年の運慶展)
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20170930-2/
ダ・ヴィンチより早い! 運慶の「仏像ルネサンス」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20171007-2/
フリーランサー注目、運慶のサインから見えるプロ根性
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20171014-2/
--おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
吉原の酔狂と悲哀を歌った古典小唄集
『廓の夜』 宮澤やすみ(唄、三味線、解説)
https://yasumimiyazawa.com/kuruwanoyorubook.html
歌詞と解説をまとめたガイドブック発売中
※楽曲はYoutube、Spotifyなどで誰でも聴けますが、これがあればよりよくわかる!
宮澤やすみ出演情報(これからとこれまで)まとめ
https://yasumimiyazawa.com/live.html
宮澤やすみ公式サイト:
https://yasumimiyazawa.com
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。今月9/27土曜に自主企画ソロライブを控えている宮澤やすみです。シルバーウイークの存在をすっかり忘れて日程を組んでしまいましたが、どなたもなんとか来てほしいです。
そんな中、東京国立博物館では「運慶展」が開幕。プレス内覧会に行ってきました。
今回は、奈良・興福寺北円堂の仏像が主役です。
平安末~鎌倉時代を代表する仏師・運慶晩年の傑作といわれます。

展示風景より。多くの報道陣が集まる
本尊は弥勒如来。このクールでりりしいお顔、ファンが多い仏像です。
今回は間近で見ることができましたが、厳格な表情でありながら、ほっぺたがぷっくりふくらんでやわらかそう。
「思わずつまんでみたくなる」と学芸員の方もうれしそうでした。
このぷっくりほっぺは、運慶の如来像にはよく見られ、円成寺の大日如来像なども赤ちゃんのようなふくぶくしい頬に表現されています。
その様子は展示室で間近にごらんください。

展示風景より。本尊の弥勒如来坐像を中心に、無著菩薩、世親菩薩の立像が並ぶ。三躯とも国宝
胎内納入物の解説も興味深かったです。
弥勒如来像内の空洞には数々の納入物が収められていて、その写真が展示室パネルや図録で見ることができました。
体部には、仏の魂「密教で悟りを求める清浄な心(図録より)」を表す、水晶製の心月輪(しんがちりん)が収められ、
頭部には、五輪塔と経巻のほか、像高7.1cmの小さな弥勒菩薩像も入っています。
頭の中に小さな像。スーパーロボ好きの筆者としては、マジンガーZを想起します。
そして、脇に立つ無著(むじゃく)・世親(せしん)の両像は、鎌倉写実表現の極致。
彩色が剥げているし、厚手の衣をまとうシンプルな出で立ちではあるのですが、なぜか生きて息遣いが聞こえてきそうな迫真の写実に驚きます。
後ろから見てみると、衣が揺れて動きそうなほどのリアルさを感じました。

後ろから見ると、無著菩薩、世親菩薩の衣のリアルさが際立つ
そして、現在は中金堂に安置されている四天王。
弥勒や無著世親と同じくカツラ材で造られた四天王立像は、本来は北円堂に安置されていたとされます。
つまり、今回は北円堂ゆかりの仏像群が勢ぞろいし、かつての内陣の再現がされているというわけです。

国宝 多聞天立像。本企画のメインヴィジュアルやグッズになって人気の尊像
北円堂という建物は奈良時代からあったのですが、平安末期の焼き討ち後に再建。その再建時に活躍したのが運慶をリーダーとする慶派仏師たちでした。
図録の解説によると、興福寺からは焼失した仏像のありし姿を踏襲したものを発注されたようです。
運慶はそれに応えて、地元・奈良で幼少から見てきた古い仏像の姿(様式)を取り入れました。
弥勒如来の場合は、胸元にみえる薄い衣の表現が奈良の古い仏像に共通。
四天王の場合は、衣服が背後にはためく表現や、顔のパーツを中心に寄せた造作が奈良時代の様式なのだそう。

グッズ売場より「チーム北円堂」のアクリルスタンド
さらに、眼にも注目。かつての北円堂の四天王像は塑像(粘土で造った像)で、黒目の部分(瞳)に碁石のような黒い石などをはめ込んでいたそうで、運慶はそれを木彫で踏襲しました。
四天王の瞳を少し盛り上げた形に彫り上げ、塑像の黒石の瞳のように別材を埋め込んだかに見える工夫を施してあるそうです。

持国天と弥勒仏、無著。大きく見開いた持国天の眼に注目
運慶自身から見ても奈良時代は何百年も前のいにしえの時代。こうした古い様式を盛り込みつつ、全体的には迫真の写実表現で運慶&慶派のお家芸を見せてくれている点が、北円堂仏像の特徴といえるでしょうか。
この北円堂は、藤原氏の大御所・藤原不比等の追善のために建てられたお堂です。

国宝 広目天立像。広目天が持つとされる筆と巻物が無い。その理由はまたこんど
そこになぜ弥勒如来、弥勒菩薩が祀られたのか、その意味はまた次週以降(たぶん次々週)紹介したいと思います。
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「運慶イメージソング "Great Sunshine Boy"」(円成寺大日如来をモチーフにしたオリジナルソング)
特別展「運慶 祈りの空間―興福寺北円堂」
2025年9月9日(火)~11月30日(日)
東京国立博物館 本館特別5室
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歌詞と解説をまとめたガイドブック発売中
※楽曲はYoutube、Spotifyなどで誰でも聴けますが、これがあればよりよくわかる!
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宮澤やすみ公式サイト:
https://yasumimiyazawa.com


