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第5回 インテリアとしての仏像とAR


VR(仮想現実)とAR(拡張現実)

近年、VR(Virtual Reality)AR(Augmented Reality)が話題を呼んでいます。そうした技術と仏像に何の関係があるのだろうかと思われるかもしれませんが、今回は、仏像を個人の生活空間の中に置くということと、VRやARとの間にみられる類比的な関係について哲学してみたいと思います。

VR(Virtual Reality)」は「仮想現実」と訳されます。コンピュータで作られたために、本物ではないけれど現実のように見たり感じたりできることを意味し、実質的には現実として機能するということが含意されています。

それに対して、「AR(Augmented Reality)」は「拡張現実」と訳されます。現実の世界に何らかのデジタル情報(文字、図形、音声など)を追加することで現実世界の意味を拡張するものです。例えば、ナイアンティック社のアプリ「ポケモンGO」は、当たり前の日常の空間にポケモンの情報を追加することによって、日常生活の場を冒険の場に変えています。


イスム 千手観音

VR、ARと仏像

仏像の置き方に類比させてみるならば、VRに相当するのが、異空間を現実の中に作り出し、その中に仏像を配置するものです。この置き方の典型例として、平等院が挙げられるでしょう。平等院は、庭も含めて寺院全体が浄土を表現したものとなっています。現世にありながら、その空間の中では浄土を体験できるのです。仏壇というのも、小さな異空間であると考えられます。仏間がある場合はもちろん、仏間がない場合であっても、そこは生活の場とは異なる異空間であり、儀礼のような特別な振る舞いを行うことになります。

一方、ARに相当するのがインテリアとしての仏像です。仏像を書斎や居間に置くことで、仏像は生活空間の一部となります。そしてARが現実世界の意味を拡張するように、インテリアとしての仏像は日常空間の意味を拡張し、日常を特別な場所に変えるのではないでしょうか。それによって、日常とも非日常とも言えないハイブリッドな空間も生まれると考えられ、そのような空間が、どのような意味、ないし物語を体現するかは、その空間を設計する仏像の所有者の自由に委ねられています。


isumu Interior Photo Contest 投稿作品

日常を特別な場所に変える

イスムが毎年開催している「Interior Photo Contest」では、インテリアとして仏像を配置することで、日常空間にどのような新しい意味を作り出しているのかを競います。これは、仏像の複製という観点から考えると興味深い事態です。オリジナルの仏像がその歴史も含めて複製されるとき、唯一無二の存在が多数の複製品へと拡散します。それぞれが平等にオリジナルを継承する存在でありながら、それぞれが置かれた場所で別々の道を歩み始めるのです。パブリックな場ではなく、通常は知り得ない所有者それぞれのプライベートな生活空間の中に置かれた仏像を、コンテストやSNSを通して知ることが可能となります。そして他人の空間デザインの仕方を見ることによって、自分の空間デザインを行う上でのヒントをもらうということも起こり得ます。そのようにして、個人の生活空間同士の間で相互作用が生じる可能性があり、同じ仏像を所有する人同士の相互作用を通して仏像の歴史が共同的に更新されていくという事態が生じ得るのです。

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執筆者: 岡田基生
上智大学大学院哲学研究科・博士前期課程修了。専門は、京都学派の哲学。論文に「歴史の動きに関する基礎的研究―後期西田哲学を手がかりとして―」(『哲学論集』、上智大学哲学会、2017年)などがある。