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都心で鎌倉時代の秘仏に逢う・大観音寺鉄造菩薩

”幾多の災禍を潜り抜けて、現在も東京のどまんなかで……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。誰も気づいてないと思いますが、この連載は今回で232回となります。そろそろ単行本化の話も来てよさそうなんですけどね、出版社のみなさま遠慮なく。

さて、先日4月8日は釈迦誕生日。一般には「花祭り」の日として知られ、お寺では「灌仏会(かんぶつえ)」「仏生会(ぶっしょうえ)」などと呼ばれる法要がある大事な日でした。

僕がやっている”仏像を歌うバンド”ことザ・ブッツの面々も久しぶりに集まり、花祭りで華やかなお寺に赴きました。

伺ったのは、東京の日本橋人形町・大観音寺(おおがんのんじ)。


大観音寺本堂前に釈迦誕生仏。赤ん坊姿のお釈迦さまに甘茶をかけて供養する

都心ながら、鎌倉時代の大きな観音菩薩頭部があることで、仏像ファンにはよく知られたお寺です。
この日は、ご信徒さんが集まり護摩法要が行われていました。


本尊を前に燃え盛る護摩の炎。ご年配の方が多いのですが少人数かつマスクで厳重に注意しながらの法要でした

今回は動画撮影を許可いただき、たくさん撮ってきました。下記リンクでご覧になれます。

画像で見える観音立像は、秘仏本尊の前に立つ「お前立」。
この日は厨子の扉が開けられ、秘仏ご本尊が見えているのですが、画像でわかりますか?


本堂内陣。ご本尊は見えますか……?

黒い背景のようにみえる部分に、目を凝らすと・・・


動画より抜粋。お前立に背後に見える巨大な顔

大きな観音頭部の存在に気づくでしょうか。
初めて観る人は驚くんじゃないかと思います。一緒に行ったバンドメンバーも初めてで、存在に気付いた瞬間驚いていました。

この観音頭部(文化財としては「菩薩頭部」なのですが、来歴から観音と思われます)、もとは鎌倉時代、北条政子の発願で建てられた新清水寺(しんせいすいじ)の本尊だったそう。材料は鉄で造られました。
お寺の火災後は長い間忘れられ、江戸時代に井戸から発見(鎌倉・小町通りにある「鉄の井」として残っている)、鎌倉・鶴岡八幡宮に祀られ、神仏分離にともないここ人形町に遷座したといいます。
じつに数奇な運命をたどった観音さま。
僕もすっかり魅了され、何度本に書き、テレビで紹介し、ラジオで語ったことでしょう。

ここ大観音寺さんは自分にとって大変ご縁のあるお寺のひとつで、我々ザ・ブッツのMV(ミュージック・ビデオ)の撮影もさせていただいたことから、今回はメンバー全員で伺ったのでした。


動画より。ご住職にもお話いただきました

動画で、ご住職の話もいただいているので、よかったらご覧ください。
いちおう投げ銭をお受けしています。詳細は動画の解説文で。ご協力お願いします。
3月11日の東日本大震災にまつわる、この観音様のエピソードが興味深いですよ。

鎌倉時代の造立から火災、廃仏毀釈、関東大震災、戦災、そして東日本大震災と、幾多の災禍を潜り抜けて、現在も東京のどまんなかで本尊として拝まれている稀有な像。
コロナ禍の今、あらためて拝みたくなるのでした。


動画より。バンドメンバーも初めての甘茶供養

それでは聴いてください。
と、いつもやるのですが今回はその動画リンクを貼っておきます。

(参考動画)
大観音寺ご開帳と花祭り!
仏像を歌うバンドThe Buttz(ザ・ブッツ)春のフラワーパーティ配信
 https://youtu.be/GLWDs-k6_68

ザ・ブッツのメンバー4人。演奏もお聴かせします。ぜひご覧ください!




●おしらせ
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.(アルバムCD,ダウンロード)
久保沙里菜の「仏像ニュース」収録
仏像バンド”The Buttz(ザ・ブッツ)”『欣喜雀躍』ほか発売中
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)


2.(著書)
宮澤やすみ監修 中村文人著
『仏像”ここ見て”調査隊 奈良編』
『仏像”ここ見て”調査隊 京都編』
くもん出版から発売中
https://amzn.to/3dDMYpn



宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m