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大聖堂のお宝は「曼荼羅」だった? ベルギー国宝《神秘の子羊》

ヨーロッパ4都市演奏ツアー。オフ日のお寺めぐり(教会めぐり)。
今回はベルギーにも行きましたが、ゲント(Gent、オランダ語では”ヘント”)の街並みはすごかったです。
広場を中心に、右を見ても左を見ても大きな教会!
寺社好きの旅人なら心が浮き立って、もうどっちから見て回ろうかと、わけもなく走り出してしまいます。

そんな「教会の街」ゲントでももっとも古く、かつ有名なのは聖バーフ大聖堂(Sint-Baafskathedraal / St Bavo's Cathedral)です。
中に入ると、こんな感じでした!


聖バーフ大聖堂の内部

13世紀から16世紀にかけて再建されたという内陣は広くて、天井の梁の組み合わせが花のようで美しいです。

そして、聖バーフ聖堂にあるのが、「ベルギー七大秘宝」のひとつに数えられる、『神秘の子羊』という祭壇画です。
撮影は禁止なのですが、パブリック・ドメインの画像がありました。


《神秘の子羊》内面(クリックで拡大)

15世紀前半、フーベルトとヤンのファン・アイク兄弟の手による大きな多翼祭壇画で、
下段にある広場に、子羊がいますがこれが絵の中心で、胸から血を流しています。

この連載での教会ネタは、血が流れてばっかりですが……(笑)、ここでは傷つく子羊がキリストの犠牲を象徴しているそうです。
子羊の前には「生命の泉」を表す噴水があり、キリストの復活も暗示しています。

そこに聖職者、使徒、巡礼者などなどが集まってキリストを称える、といったようなドラマティックな展開になっています(くわしくは現場で日本語ガイドが聞けます)。

上段には、王の姿をしたキリスト(もしくは父なる神)を中心に、マリア、洗礼者ヨハネ。天使が聖なる歌を歌い、両端にはアダムとイブがいます。

キリスト教の世界観を、主要なキャラクターや場面を組み合わせて一つの作品に仕上げたもので、これ、ぼくら仏像ファン向けの用語でいうと「曼荼羅」みたいなものですね。

なかでも、極楽浄土曼荼羅とか阿弥陀来迎図のような、ある主要場面を中心に宗教世界を説いているような。
文字が読めない民衆でも、ひとつひとつの絵を見ながら物語を聞いているうちに、その世界にハマってしまうというものですね。




こちらは近隣の聖ミハイル教会にあるファン-ダイク作「ゴルゴタ」

それにしても、ファン・アイク兄弟の筆致がすばらしい。
中世からルネサンスへと時代が移るころの古い絵ですけど、非常に微細な筆遣いで、表情なんかもすごく写実的。
ベルギーを代表する「フランドル絵画」というジャンルにあたる絵画作品ですが、その中でも完成度がずば抜けていて、国のお宝になる理由がよく分かります。
深い宗教性と高い芸術性の双方が感じられます。

宗教世界を、高い芸術性とめくるめく荘厳で表現して、なんかもう「よくわかんないけど、すごい!」と圧倒させるこの感覚は、日本の国宝仏像と同じですね。

宗教芸術が面白いのは、伝えたいテーマは決まっていて、その「伝えたい」という熱情がハンパないわけでして、その振り切った熱レベルで制作するから、もう画家の個人的な想いとか人生とかを超越してしまって、ものすごいものができあがる。
そのへんが、近現代美術のような作家個人の想いが前面に出るのとは異なるところですね。
たんに絵の上手さとか技法がどうのとかいう話でもないですしね。

昔だったら、ぼくもこの祭壇画に大感動してカトリック教徒になったかも知れません。しかし、そんな宗教の熱意に没入しなくても、宗教美術を楽しめるというのが現代の特徴かと思います。

ぼくは日ごろ、各宗教宗派とは等距離を置いて、俯瞰する立場で仕事をしていますが、それでもいろんな宗教芸術の熱情に感動を味わうことができる、そんな現代でよかったと思います。


聖バーフ教会と私

次回は、近隣の聖ミハイル教会、聖ニコラス教会を訪れます!
ゲントの町は教会がひしめきあっております!(笑)




光の演出も教会の特徴




今回のツアーは、無声映画を弁士の語りと楽士の生演奏とともに上演する活弁上演でした。
活動写真弁士・片岡一郎を筆頭に、ピアノ:上屋安由美、太鼓:田中まさよし、三味線に私・宮澤やすみという4名による「映楽四重奏 The Filmquartet」というグループ名で出演。
ベルギー、ドイツの4都市を回りました。
参考:
【ダイジェスト動画「活弁」活動写真の上演:映楽四重奏ヨーロッパツアーより】
https://www.youtube.com/watch?v=iFzsrX3dlVY
(前回2017年ツアーのダイジェストです)