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立山の女人救済「おんば様」と謎の「布橋灌頂会」

立山の旅レポ第二弾。
いま立山博物館が建っている場所は、もともと芦峅寺(あしくらじ)といって、立山そのものを神とする立山権現信仰をベースに、地獄信仰と民間信仰が入り混じった、民俗信仰のワンダーランドなのでした。


この橋を渡る法会「布橋灌頂」とは?

立山は、火山活動が活発で、煙と硫黄の出るエリアは「地獄谷」といいます。
そこで地獄を、山頂では浄土を体験して救いを得るというのが立山登拝のコンセプトなんですけど、こうした登拝は男性しか許されなかったんですね。

女性はどうしたかというと、ふもとの芦峅寺で、独自の神様に救いを求めます。
これが「おんば様」というものです。「おんば」は女偏に田を3つ書きます。
写真が掲載できないんですけど、こちらに出ています。

[おんば様 白装束新しく 立山・芦峅寺の閻魔堂]北日本新聞
http://webun.jp/item/7352823

シワシワの老婆の姿で、ニタリと奇怪な笑みをたたえたおばあさんの姿。
怖いような、ユーモラスなような、この地域特有の民俗神像ですね。

意味合いとしては、立山の女神であり、実りをもたらす地母神であり、そんなイメージに、地獄の入り口にいるという「奪衣婆」のヴィジュアルも混ざったかもしれません。

ともかく、おんば様は、立山登拝を許されない女性たちを救う神として信仰されました。
このおんば様による女人救済の儀式が「布橋灌頂会(ぬのはしかんじょうえ)」というんですけど、これがとても興味深いです。


これを渡れば、此岸の世界・・・?

芦峅寺境内の谷を少し降りると、閻魔堂があって、まずそこに女性たちが入ります。
ここで女性は全員目隠しをして、外に出て、真言宗の僧の導きで朱塗りの「布橋」を渡るんですね。
すぐ下は常願寺川が流れて、昔は落ちる人もいたとか。
そこを無事に渡り切り、立山を望む開けたエリアに「おんば堂」があります。
堂内にはたくさんのおんば様像があって、ここでお坊さんから灌頂儀式を受けるというもの。

布橋を挟んで、閻魔堂とおんば堂で彼岸と此岸の境を象徴しているわけですね。

実際に行ってみると、閻魔堂はジメッとした空気で重苦しい空気。
おんば堂は今は基壇だけですが、視界が開けて立山が見えて、開放感があります。
このエリアは墓地にもなっていて、住民にとって特別な場所なんでしょう。


おんば堂跡から立山を望む(この日は曇りのため見えず)

前回記事のとおり、明治政府の「神仏判然令」いわゆる神仏分離によって、おんば様信仰は徹底的に廃止されました。
おんば堂は跡形もなく破壊。布橋灌頂の儀式も廃絶。
閻魔堂だけは、住民の寄合にも使われていたので、なんとか破壊を免れました。


閻魔堂

神仏分離による破壊(廃仏毀釈)は、仏教だけでなく、地域独自の民俗信仰にも及んだんですね。
中央政府にとってみれば、得体の知れない俗信は「前近代的」とみなされたんでしょう。
民俗学によって地域文化が見直されるのは、もっと後のことですから、当時は仕方なかったんですね。


苔むした旧参道を生活道路が分断する、象徴的な光景

こうして廃絶した「おんば様」信仰ですけど、実際はいきなり廃止と言ったって、人の心の問題ですから、「ハイそうですか」とすぐ廃止できるわけないですよね。
表面的には「わかりました」という形をとって、お堂は取り壊したけれど、おんば様の像はひそかに隠されて保存されたそうです。
そんなわけで、今では博物館の常設展示で見ることができます。
その所蔵者は地域の古い住民の方々。何代にも渡って、おんば様を守っていたんですね。

布橋灌頂の儀式も、平成になって復元されました。そのもようが動画で出ています。
白装束を左前にし(つまり死装束)、目隠しした女性たちが、白布を渡した橋をしずしずと歩く様子は幻想的です。


おんば堂の隣には近代的な「立山博物館遥望館」がかなりの違和感で建ってます


布橋の欄干に赤とんぼがたくさん止まっていました

---おしらせ---

宮澤やすみ出演
【小唄 in 神楽坂 15周年記念特別会】
10月27日(土)14:30開場 15:00開演

神楽坂の小唄師範・宮澤やすみと弟子一門による年に一度の小唄演奏会。
お寺のお座敷で気軽に楽しめます(椅子席あり)。
15周年記念の今回は、日本舞踊のほか鳴物も入り、華やかで豪華な会になります。
解説トークを交えた初心者向けの気軽な雰囲気でおとどけします。
神楽坂散策のついでにお立ち寄りください!

●会場 神楽坂善国寺(毘沙門天)書院
●料金 前売2000円、当日2500円

●出演
宮澤やすみ(歌、三味線)
弟子一同
吾妻春瑞(舞踊)
冨田慎平(鳴物)

●詳細
http://yasumimiyazawa.com/kouta.html