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流血する阿弥陀如来のナゾ。立山信仰のヒミツ

立山の旅。立山連峰の一番の聖地は、中心にそびえる雄山(おやま)です。
この雄山を祀るのが雄山神社で、雄山の山頂に峰本社があります。
次いで信仰されたのが剣岳(つるぎだけ)。人を拒む霊峰として恐れられました。


富山電鉄の車窓から立山連峰を望む

私が今回訪れた旧芦峅(あしくら)寺は、山頂の峰本社へ登拝する入り口にあたり、「中宮祈願殿」とも呼ばれます。
そこは、お寺なんだけど神社、神社なんだけどお寺という、まさに神仏混淆の境内だったそうです。

江戸時代の境内絵図をみると、仏堂が少なくて、そのかわりに大宮と若宮と書かれた神社がある。
さらにそこへ、閻魔堂やうば堂という地獄&民俗信仰スポットも広がって(前回記事参照)、寺とか神社とかひと口に言いきれない世界がありました。

ディズニーランドで言えば、パーク内をちょっと歩けば、ハワイもSFも海賊の世界も体験できちゃうという、あの感じに似てますね。
まさに、独自の信仰テーマパーク状態だったわけです。


旧・芦峅寺境内にある雄山神社祈願殿

そんなわけで、立山の信仰対象は、雄山と剣岳。それをまとめて「立山権現」とか「立山両権現」と呼びますが、
仏目線でいうと、阿弥陀如来(雄山)と不動明王(剣岳)
神目線でいうと、イザナギ神(雄山)とタヂカラオ神(剣岳)
という構造になるんですね。
はぁーややこしい。

複雑な構造になるのは、長い歴史の中で信仰のかたちが変わってきたから。
立山に阿弥陀と不動が出現したエピソードがおもしろいので、紹介します。


立山信仰を説く「立山曼荼羅」に描かれた阿弥陀と不動。阿弥陀さん血がダラダラ~

立山の伝承では、佐伯有頼(さえきありより)という地元の武家の少年が登場します。
時は文武天皇、西暦701年ごろ。有頼少年は、お父さんが大事にしていた白い鷹を勝手に連れ出して、山へ鷹狩りに出かけたんですが、白鷹が逃げちゃった。どうしよう、お父さんに怒られる!
白鷹を探していると熊に遭遇。さらにピンチです。有頼クンが矢を射ると見事熊の胸に命中。熊は逃げていきますが、血の跡を目印に山の奥へ。血の跡は洞窟へと続いています。
この暗い洞窟で、有頼クンが見たのは、なんと阿弥陀如来だったんです!
しかも胸に矢が刺さっています。さっきの熊は阿弥陀如来の化身だったんですね。
しかもですよ。探していた白鷹は不動明王に変化していたというんですね。
「山の信仰を多くの人に伝えるため、僧になりなさい」
という阿弥陀如来のお告げを受けて、佐伯有頼は仏道に帰依し、僧名を慈興として立山開山に努めたそうです。

これが、立山開山の伝承です。
阿弥陀と不動という尊格が流行するのは平安時代なので、実際はそのころに形ができたと思われます(開山伝承はわざと古く設定するものですからね)。

この仏教的な「開山」の前から、古代の山岳信仰はあったはずです。時とともにいろんな信仰が重なっていき、複雑になっていったんですね。

立山博物館では、阿弥陀如来の像が展示されていましたが、だいたいは立像で、わざと胸に穴が開けられます。矢傷を表しているんですね(現在は北名古屋市の林證寺の所蔵)。

そして、阿弥陀の横には不動明王がいて、2体セットで祀るのが通例です。


立山博物館所蔵の阿弥陀&不動。これは小さな念持仏なので穴開いてないけど、穴あきの像もいくつかありました

これが、立山信仰のキホンなのですが、前々回の記事で書いたように、明治の神仏分離で仏像は散逸。しかし雄山神社のWEBサイトを見ると、現在でも神と仏の「同時信仰」は保たれているようです。


前回紹介した布橋のたもとには、奈良・興福寺南円堂の不空羂索観音を分祀した石仏が。西国三十三観音の分霊仏が各所にあります



(参考)
雄山神社WEBサイト
http://www.oyamajinja.org

立山を開いた有頼少年 (立山黒部アルペンルート)
https://www.alpen-route.com/enjoy_navi/legend/legend_vol1.html

---おしらせ---

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