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463年ぶりの観音里帰り-「円覚寺の至宝」展

先日のTBSラジオ「日曜天国」聴いていただけました?
この連載では、仏像に関連する話題(ときに関係ない話もあるけど)をブツブツつぶやきます。
今回は都内で開催中の「円覚寺の至宝」展の取材レポートです。

円覚寺は、鎌倉五山の大名刹で、臨済宗の大本山。

貴重な寺宝が一挙に観られますが、仏像目線でいうと、ふだん同列に並ばないはずの仏像たちが一列に並ぶという、ナイスな陳列が二か所あります。

まずは、円覚寺の国宝・舎利殿の旧本尊に注目しましょう。
このお方、現在は東慶寺という別のお寺の所蔵なのに、なぜ円覚寺展にお出ましなのか、これにはちょっとしたエピソードがあるんです。


東慶寺蔵・聖観音菩薩立像。土紋という独自の装飾が美しい
(写真は報道内覧会で許可を得て撮影)

円覚寺舎利殿は、もともと同地域にあった太平寺というお寺の本堂で、その本尊がこの観音菩薩立像なのでした。鎌倉から南北朝時代の作です。
しかし、太平寺が1556年(弘治元年)に廃絶となり本尊は房総の里見氏が略奪。のちに東慶寺の要山尼が取り返したという経緯があります。

いっぽう、太平寺の本堂は円覚寺に移設されて、舎利殿として現在に至っています。堂内は、舎利厨子を中心に観音と地蔵の二体が安置されています。
この観音と地蔵も、旧本尊と同時期の作と目される、クールな顔立ちの宋風様式です。

そうして、長い間本尊と仏殿がばらばらにあったのですが、ついにこの日本橋三井記念美術館で再会し、旧本尊と現在舎利殿安置の二菩薩が出会いました!
きっと、お三方も喜んでいるんじゃないでしょうか。

「いやどうも、私がいないうちにお堂を守っていただいて」
「いやいやいや、あなたこそ最初のご本尊で、先輩なんですから。しかしだいぶ苦労されたそうで」
「いやあ、おかげさまで今は東慶寺さんでよくしてもらってましてね」

いや、妄想が過ぎましたけど、お三方で仲良くしゃべってるような気になるんですよ。

しかし、本尊略奪から463年ですよ。これは歴史的な邂逅ではないでしょうか。
旧本尊の東慶寺像は、今までに取材やプライベートで何度となく参拝してますが、今回は少し誇らしげな様子に見えました。いつか舎利殿の堂内でこの像を見たいなあとも思いますが。

脇侍の二体は普段非公開なのでお見逃し無いように。

つぎの「ナイス陳列」はこちら、


禅宗ビッグ2!無学祖元(左)と蘭渓道隆(右奥)が仲良く並ぶ。ひじ掛けの龍と鳥にも注目

鎌倉の二大禅宗寺院、つまりちょっとライバル関係にあるのが、円覚寺と建長寺。
その二大寺院の開山、無学祖元(円覚寺)と、その先輩格である蘭渓道隆(建長寺)の像が同列に並ぶという事態。
ぱっと見では、偉いお坊さんの像(頂相彫刻)が並んでいるだけですが、これもまた歴史的邂逅といいますか、普段交わることのない2名が仲良く並ぶ様は、仏教ファンからすれば特別なことです。

たとえて言うなら、ロックの長老ミック・ジャガーとポール・マッカートニーが一緒に並ぶ様子を想像してみましょう。

先の観音の例も例えるなら、
歴史的メタルバンド、ブラック・サバスの初代ヴォーカル、オジー・オズボーンと後任のロニー・ジェイムズ・ディオが2ショットで登場するとか、ちょっと有り得ない超レアな場面。ワクワクしませんか(ロック知らない人わからないねゴメン)。
ともかく、ビッグな存在が同席する特別な場面なわけです。
どちらも、美術館学芸員さんの粋なはからいが見て取れる演出ですね。

あとは、円覚寺の本尊は宝冠をかぶった「宝冠釈迦如来」なのですが、その理由も解説されていました。
私の新刊『仏像の光と闇』でもこのことに触れていますが、華厳との関係があるんですよね。興味ある人は注目してみてください。


円覚寺の塔頭・白雲庵の宝冠釈迦如来坐像

ちなみに、美術館のある日本橋や大手町、丸の内一帯は、中世のころ「江戸前島」といって、なんと円覚寺の寺領だったんだそうです。
それが、徳川家康の江戸入りにともない寺領が没収。そこに今回円覚寺の展示があるというのも、因縁めいたものを感じますね。

禅宗寺院は仏像以外にも魅力たっぷり。開山である無学祖元ゆかりの寺宝や青磁などの名宝も展示。
6月23日までやっています。
坐禅体験会や法話会、講座も開催されます。

大用国師二百年・釈宗演老師百年大遠諱記念特別展
【鎌倉禅林の美「円覚寺の至宝」】
2019年4月20日~6月23日
三井記念美術館にて
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

---おしらせ---

本コラム著者・宮澤やすみ出演

【「小唄かふぇ」Vol.26】
5月17日(金)20時
上野・御徒町 ワロスロード・カフェにて
ゲスト:山内菜々子(活動写真弁士)

昭和レトロな雰囲気いっぱいのカフェで、気軽に楽しむ三味線コンサート「小唄かふぇ」。
宮澤の小唄ソロ演奏のほか、ゲストコーナーは、今注目の「活動写真」をご紹介。
サイレント映画に、山内弁士が語りを付け、宮澤が三味線で演出します。
大河ドラマ「いだてん」や周防正行監督の新作でも注目される「活動写真」。
映画なのに生ライブ、それが活動写真の楽しさです。

詳細、ご予約はWEBサイト
http://yasumimiyazawa.com/koutacafe/