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仏像の殿堂・法隆寺で原点に帰る

”たしかに金箔がうすく残ってはいますが、ここまで黄金の輝きを感じるとは。写真とはかなり印象がちがいました。そして顔立ちが--”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは、宮澤やすみです。
今回も奈良の旅のつづきです。

先ほど行った海龍王寺、法華寺は、平城京の中心ですが、このあと行ったのは法隆寺。

東大寺と並んで、日本で一番有名なお寺じゃないでしょうか。聖徳太子の斑鳩宮を原型に伽藍が整備。
世界最古・8世紀初頭の木造建築が残る伽藍として世界遺産登録されていますが、仏像のほうは建物よりもっと古い。


中門の金剛力士は露仏なのに、五重塔と同じくらい古く、しかも粘土で作った塑像! かなり貴重な仏像なのです。よくぞ令和まで残った

11月は、東側の夢殿の本尊、通称「救世観音」が公開されているから、まず先にそっちに行ってみました。
修学旅行の団体が次から次に来る中、中を覗いてみるといましたよ。
等身大よりも少し大きめで、すらっと細身の観音さん。
照明の加減でしょうか、昔みたときより金ピカに見えます。修学旅行の中学生たちも口々に「うわっ!金ピカ!」とはしゃいでます。


夢殿。ひっきりなしに来る団体が途切れた瞬間を狙って撮影

よく出回っている写真を見ると、たしかに金箔がうすく残ってはいますが、ここまで黄金の輝きを感じるとは。写真とはかなり印象がちがいました。
そして顔立ちが怖いというか、渋いというか。
観音菩薩というと、「微笑みをたたえた慈悲のお顔」という言い方がよくされますが、顔の表現は時代によって異なるもの。
仏教が入ってきたばかりの飛鳥時代、仏像は日本には無い霊力をもつ、ナゾの神像だったでしょう。慈悲も呪いもひっくるめて、力強い古代の霊力を秘めた顔に見えたのでした。

まあ、仏像の表情は微妙なもので、見え方は人それぞれだし、自分の気分や体調でも異なってくるものなので、次回拝するときはべつの印象になるかもしれませんけどね。

あらためて、教科書でもよく見る西院伽藍へ。
あたりまえだけど、今日も五重塔と金堂が雄々しく建っていました。

ぼくの著書やラジオ番組などで語った話ですが、ぼくが仏像に目覚めたのはここです。

小学5年生ぐらいのとき、夏休みに訪れた法隆寺でみた、金堂の内陣の光景。
暗がりにどーんと存在する釈迦三尊像の威容が、怖いようなカッコいいような。
取材で答えるときは、「マジンガーZみたい!と思いました」と、小学生らしい感覚を強調したものですが、実際はそれだけでなく、マジンガーZ的なカッコよさと、怪物を見たような恐ろしさと、1300年という時間の途方も無さ(一番古い寺院を調べて訪れたので)など、いろんな思いがないまぜになって、頭がまっしろになったところへ、壁画のなまめかしい菩薩像と目が合って、その瞬間になんだかワナワナして涙が溢れ出てしまったという体験をしました。


西日に輝く法隆寺五重塔と金堂

そこから数十年、あちこち寄り道をしつつも、今も仏像と向き合ってきて、なかなか不思議な人生だったなあと思います。いやまだ死ぬわけじゃないので、振り返るには早いけど。

中学生のときは「大人になったらお坊さんになる」とか、人目を避けて森で暮らすみたいなこと言ってたんだけど、実際そうはいかない。逆に今、人目に触れる仕事をして、しかも歌まで歌っているんだから、おかしなもんですね。


この回廊もじつは国宝。わりと自由に撮影できるのもうれしい

仏像を理解するのに仏教だけでは足りず神道や陰陽道の深い沼にハマり、最近は中世ヨーロッパのカトリック世界まで手を出し…、というカオスな状況ですが(要は古いものが好き)、自分の原点であるここ法隆寺で小休止し、来し方行く末を想ったのでありました。

(参考)
法隆寺の金堂壁画と百済観音がトーハクにやってきます!
特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」
https://horyujikondo2020.jp/

---おしらせ---
本稿の筆者・宮澤やすみ出演

12月14日(金)18:40開演
【セブンシネマ倶楽部】
--活動写真弁士の歴史と映画の青春時代--
最近の話題作「ジョーカー」に通じる、社会のアウトローの暴走を描いた名作「雄呂血」(大正14年)を上演。
池袋コミュニティカレッジにて。
出演:
片岡一郎(活動写真弁士)
宮澤やすみ(三味線)
https://www.7cn.co.jp/7cn/culture/cc/sevencinema/