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特別展「出雲と大和」展でみた驚くべき”出雲スタイル”
”大きな社殿は、はるか昔の出雲独自の文明にフタをしたモニュメント……--”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは、新春の音楽出演と、自身のバンドThe Buttz(ザ・ブッツ)のレコーディングが重なって、大忙しなのにちっとも儲からない状態の宮澤やすみです。
そんな貧乏暇なし状態でも、絶対はずせないのが東京国立博物館の特別展「出雲と大和」です。
報道内覧会で許可を得て撮影した映像とともにご紹介します。
今年は『日本書紀』編纂1300年記念。
古代の出雲と大和の関係は?
ライト層にもなじみ深い出雲大社関連の展示から、銅鐸、古墳、神社、仏像、刀剣、鎧などなど……
日本史系マニアさんの興味分野は細分化されているとはいえ、これだけ揃えればどこかしら刺さるツボがあるんじゃないかという、新春らしいなんとも贅沢な展示です。
展示の目玉のひとつ、出雲で発掘されたおびただしい数の銅矛
展示は、出雲大社の巨大な柱から始まって、急に古代へと時間がさかのぼります。そこで頭がこんがらがるかもしれませんが、きっと次第に、出雲は「出雲大社」だけじゃない、と気付くことでしょう。
むしろ、出雲は大社以前がおもしろい。あの大きな社殿は、はるか昔の出雲独自の文明にフタをしたモニュメントである、と考えれば、そのあとの展示がわかりやすいんじゃないでしょうか。「出雲」という地域がなんだったのか。そして、出雲にフタをしたのは誰だったのか?
ともかく、仏像ファンはじめ日本の古い物事に興味ある人なら、やっぱり出雲と大和の関係性というテーマは気になるところですよね。
古代の出雲文明を、ヤマトが征服したのか?
大国主神が、天照大神に国を譲った神話はなにを象徴しているのか?
謎めいた古代史ミステリーに興味がそそられます。
出雲大社の真の意味とは…?
結論からいうと、今回の展示ではそういう歴史ミステリーには踏み込んでいないです……。
しかし、展示物の時間軸にそって見ていくと、出雲の独自文化がヤマトに同化していく様が、なんとなく感じ取れるのでした。
ともかく時間のスケールが長大です。弥生時代のものは『日本書紀』が書かれた時代からゆうに700年はさかのぼるのですから。
そのころは、各地でそれぞれ独自の文明圏があったので、出雲だって出雲なりの独自文化が開いていたわけです。
2000年以上前の土笛。儀礼や祭祀で吹いたという。どんな音がするんだろう……?
それが、次第に地域交流がさかんになり、文化がまじりあっていくと、出雲が山陰地域の重要拠点になってくる。その証拠が大量の青銅器(冒頭の写真)なんだそうです。記事下の動画もごらんください。圧倒されますよ。
あとはお墓のかたちにも地域差がみえてくるので、出雲独自の四隅突出型墳墓から、前方後円墳が造られるように、このあたりからヤマト王権の影響が見えてくるのだそう。
しかし、出雲の勢力はただヤマトの文化を丸コピーするのではなく、ちょっと出雲アレンジをするんですね。
そのなかで、僕が一番興味をひかれたのが、コレです。
まるで現代美術? 奇怪なオブジェも出雲地域独特のもの
須恵器という焼き物なんですが、現代美術のオブジェかと思いました。
大きな壺に、小さな子壺がいくつもくっつくというデザインです。子持ち壺というそうで、おめでたい意匠なんでしょう。
ほかの地域ではハニワを並べるのに、出雲はこうした独自のやり方をしていた。ヤマトのやり方に沿いながら、ちょっと独自色を出しちゃう気質が見て取れます。
ぼくらの周囲にもそういう人、いましたよね。中学時代に学ランを標準服じゃなくてちょっと改造したりして、ほんの少しの反抗を見せたりしましたもんね。
それはともかく、神話では、出雲で国造りをした大国主神が、天照大神の側に国をゆずり、かわりに出雲に大きな社殿を立てて手厚く祀ってもらうことになります。
それが出雲大社でして、それによっていよいよヤマトとのつながりが色濃くなって、のちに「日本」というひとつに国になっていくというが、おおまかな歴史です。
ちなみに、出雲と大和展図録にある「ヤマトから日本へ--古代国家の成立」(執筆・東野治之氏)という文章が非常におもしろかったです。
ヤマトに取り込まれてからも、祭祀で使われる玉は出雲で生産をほぼ独占した
そんな流れを受けて、やっと『日本書紀』が編さんされるに至り、お待たせしました、仏像が登場してくるのですね。
しかし、ここに至るまで長すぎました。
珠玉のブツラインナップは、次回ご紹介します!
(20秒動画)出雲大社地下から発掘!心御柱と宇豆柱
(30秒動画)どこまでも銅剣!?展示風景
【日本書紀成立1300年 特別展「出雲と大和」】
2020年1月15日(水)-3月8日(日)
東京国立博物館・平成館にて
https://izumo-yamato2020.jp
---おしらせ---
■本コラム筆者・宮澤やすみ出演
2020年2月21日(日)20:00開演(19:00開場)
【宮澤やすみの小唄かふぇ Vol.28】
シックなバーで楽しむ江戸の小唄とおもしろゲスト。
今回はジャズピアノと弾き語りの名手がコラボ。
詳細、予約は↓
http://yasumimiyazawa.com/koutacafe
(出演)
宮澤やすみ(小唄、三味線)
岡田啓佑(a.k.a. センチメンタル岡田:ピアノ、ラップ、歌)
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは、新春の音楽出演と、自身のバンドThe Buttz(ザ・ブッツ)のレコーディングが重なって、大忙しなのにちっとも儲からない状態の宮澤やすみです。
そんな貧乏暇なし状態でも、絶対はずせないのが東京国立博物館の特別展「出雲と大和」です。
報道内覧会で許可を得て撮影した映像とともにご紹介します。
今年は『日本書紀』編纂1300年記念。
古代の出雲と大和の関係は?
ライト層にもなじみ深い出雲大社関連の展示から、銅鐸、古墳、神社、仏像、刀剣、鎧などなど……
日本史系マニアさんの興味分野は細分化されているとはいえ、これだけ揃えればどこかしら刺さるツボがあるんじゃないかという、新春らしいなんとも贅沢な展示です。
展示の目玉のひとつ、出雲で発掘されたおびただしい数の銅矛
展示は、出雲大社の巨大な柱から始まって、急に古代へと時間がさかのぼります。そこで頭がこんがらがるかもしれませんが、きっと次第に、出雲は「出雲大社」だけじゃない、と気付くことでしょう。
むしろ、出雲は大社以前がおもしろい。あの大きな社殿は、はるか昔の出雲独自の文明にフタをしたモニュメントである、と考えれば、そのあとの展示がわかりやすいんじゃないでしょうか。「出雲」という地域がなんだったのか。そして、出雲にフタをしたのは誰だったのか?
ともかく、仏像ファンはじめ日本の古い物事に興味ある人なら、やっぱり出雲と大和の関係性というテーマは気になるところですよね。
古代の出雲文明を、ヤマトが征服したのか?
大国主神が、天照大神に国を譲った神話はなにを象徴しているのか?
謎めいた古代史ミステリーに興味がそそられます。
出雲大社の真の意味とは…?
結論からいうと、今回の展示ではそういう歴史ミステリーには踏み込んでいないです……。
しかし、展示物の時間軸にそって見ていくと、出雲の独自文化がヤマトに同化していく様が、なんとなく感じ取れるのでした。
ともかく時間のスケールが長大です。弥生時代のものは『日本書紀』が書かれた時代からゆうに700年はさかのぼるのですから。
そのころは、各地でそれぞれ独自の文明圏があったので、出雲だって出雲なりの独自文化が開いていたわけです。
2000年以上前の土笛。儀礼や祭祀で吹いたという。どんな音がするんだろう……?
それが、次第に地域交流がさかんになり、文化がまじりあっていくと、出雲が山陰地域の重要拠点になってくる。その証拠が大量の青銅器(冒頭の写真)なんだそうです。記事下の動画もごらんください。圧倒されますよ。
あとはお墓のかたちにも地域差がみえてくるので、出雲独自の四隅突出型墳墓から、前方後円墳が造られるように、このあたりからヤマト王権の影響が見えてくるのだそう。
しかし、出雲の勢力はただヤマトの文化を丸コピーするのではなく、ちょっと出雲アレンジをするんですね。
そのなかで、僕が一番興味をひかれたのが、コレです。
まるで現代美術? 奇怪なオブジェも出雲地域独特のもの
須恵器という焼き物なんですが、現代美術のオブジェかと思いました。
大きな壺に、小さな子壺がいくつもくっつくというデザインです。子持ち壺というそうで、おめでたい意匠なんでしょう。
ほかの地域ではハニワを並べるのに、出雲はこうした独自のやり方をしていた。ヤマトのやり方に沿いながら、ちょっと独自色を出しちゃう気質が見て取れます。
ぼくらの周囲にもそういう人、いましたよね。中学時代に学ランを標準服じゃなくてちょっと改造したりして、ほんの少しの反抗を見せたりしましたもんね。
それはともかく、神話では、出雲で国造りをした大国主神が、天照大神の側に国をゆずり、かわりに出雲に大きな社殿を立てて手厚く祀ってもらうことになります。
それが出雲大社でして、それによっていよいよヤマトとのつながりが色濃くなって、のちに「日本」というひとつに国になっていくというが、おおまかな歴史です。
ちなみに、出雲と大和展図録にある「ヤマトから日本へ--古代国家の成立」(執筆・東野治之氏)という文章が非常におもしろかったです。
ヤマトに取り込まれてからも、祭祀で使われる玉は出雲で生産をほぼ独占した
そんな流れを受けて、やっと『日本書紀』が編さんされるに至り、お待たせしました、仏像が登場してくるのですね。
しかし、ここに至るまで長すぎました。
珠玉のブツラインナップは、次回ご紹介します!
(20秒動画)出雲大社地下から発掘!心御柱と宇豆柱
(30秒動画)どこまでも銅剣!?展示風景
【日本書紀成立1300年 特別展「出雲と大和」】
2020年1月15日(水)-3月8日(日)
東京国立博物館・平成館にて
https://izumo-yamato2020.jp
---おしらせ---
■本コラム筆者・宮澤やすみ出演
2020年2月21日(日)20:00開演(19:00開場)
【宮澤やすみの小唄かふぇ Vol.28】
シックなバーで楽しむ江戸の小唄とおもしろゲスト。
今回はジャズピアノと弾き語りの名手がコラボ。
詳細、予約は↓
http://yasumimiyazawa.com/koutacafe
(出演)
宮澤やすみ(小唄、三味線)
岡田啓佑(a.k.a. センチメンタル岡田:ピアノ、ラップ、歌)