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初の県外公開 特別展「国宝 聖林寺十一面観音-三輪山信仰のみほとけ」展

”カミとホトケを、シームレスに見ていくことで、日本という国が見えてくる--”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。2020年のひな祭りですが、コロナウイルス禍でなかなか不安な情勢、ワタクシも講演仕事がぜんぶキャンセルになり収入のアテが無くなっている宮澤やすみです。誰でもいいのでお仕事ください。
そんな中、東京国立博物館では、6月16日より開催の特別展「国宝 聖林寺十一面観音̶三輪山信仰のみほとけ」が報道発表されました。

ついに来ますね。聖林寺の国宝 十一面観音。
奈良県外に出るのは初めてだそうです。


国宝 十一面観音菩薩立像(部分) 奈良時代・8世紀 奈良・聖林寺蔵

歴史を感じる聖林寺で拝観するのは、この上ない体験で、ワタクシも仕事やプライベートで何度も伺いました。
初心者のころは、本堂に入ってまずどでかいお地蔵さん(本尊)にびっくりしたものでした。
本堂の左から、観音堂へ階段を上がるときワクワク感を感じました。
堂内ではガラスの反射を避けようといろんな角度に身体をねじったものでした。最終的には真ん中に正座しじっくり拝んだものでした。

仏像ファンなら、あるある体験かと思います。

国宝指定されている十一面観音菩薩は、ぜんぶで7躯ありますが、そのなかでも天平の昔にさかのぼる歴史、さらに写真のとおりの究極の美しさ。
仏像ファンならずとも、誰からも愛される究極の美仏です。


国宝 十一面観音菩薩立像(部分) 奈良時代・8世紀 奈良・聖林寺蔵

今回の展示のキモは、「三輪山信仰」と結びついていることです。
この十一面さん、もともとは近隣の聖山・三輪山をご神体とする大神神社(おおみわじんじゃ)に安置されていました。

日本古来の山の信仰、なかでも奈良・桜井の三輪山は古代ヤマト王権の中心をなす祭祀の拠点でした。
もともと、古い時代の日本には、神を形で表す風習はなく、大きな岩とか木などを依代として崇めるのが原初的な祭祀のかたちでした。その後、仏教流入と共にカミを拝むための社殿ができ、仏像や神像が祀られるようになります。
そうして、できた大神神社の境内に、大神寺という寺ができ(鎌倉時代から大御輪寺)、その本尊だったのが、今回登場の十一面観音菩薩というわけ。
それが、明治時代の神仏分離令により廃仏運動が起き、行き場のなくなった十一面さんが聖林寺に移座されました。


聖林寺から望む三輪山と大和盆地

歴史のあれやこれやでスタイルは変わりますが、各時代にあったやり方で、脈々と三輪山信仰は続いてきました。
この、神と仏の信仰が一体になった「神仏習合」の世界観を、わたしは日頃の講義や著書でお話ししてまして、今回の展覧会は、先日惜しまれつつ閉幕した「出雲と大和」と並んで、わたし個人にとって最重要の展示となるでしょう。
最近は、仏像仏教一辺倒でなく古代史や神道資料と合わせた包括的な企画が続いて、わたしのような神仏習合ファンにはうれしい限りです。

カミとホトケを、シームレスに見ていくことで、日本という国が見えてくる。
世界の中で日本が孤立しがちなこのご時世、今こそこういう視点で日本をもう一度洗い直してみる必要が、あるのかなあと思う次第です。


特別展【国宝 聖林寺十一面観音-三輪山信仰のみほとけ】
2020年6月16日(火)~8月31日(月)
東京国立博物館 本館特別5室
開催情報は変更の可能性がございます。最新情報は展覧会公式サイトをご覧ください。
 https://tsumugu.yomiuri.co.jp/shorinji2020


国宝 十一面観音菩薩立像 奈良時代・8世紀 奈良・聖林寺蔵