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観音か、埴輪か…多摩川観音塚古墳のナゾ

”はたして、埴輪を観音として祀ったのか、それとも一緒に出土した観音像を祀ったのか……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。配信でのソロライブを終えて、近所の温泉施設に行ってきました宮澤やすみです。箱根のお湯をわざわざ東京まで運んでいるんだそうです。

さて、前回に続いて、ここ大田区多摩川台公園は、川から急激にせり上がる高台に古墳が点在。

その公園内に、「多摩川台公園古墳展示室」という施設が面白いです。

ここの古墳で何が行われていたのか、どんなくらしだったのかが分かります。


古墳展示室にて、埴輪から復元した古代人の姿

そこに展示されていた観音塚古墳と埴輪(はにわ)の写真が興味をひきました。解説によると、

「観音塚という名は、江戸時代にここから出土した人物(男子)形埴輪を、観音様として、古墳上に御堂を建ててお祀りしたことに由来する」(『大田区 古墳ガイドブック』大田区発行 より引用)

というもの。


観音塚古墳から出土した人物埴輪 写真提供:大田区立郷土博物館 ※無断コピーはご遠慮ください

これが本当だったらすごいですよね。もちろん、埴輪は仏教以前の時代の遺物ですから、仏教の観音とは接点がないはずです。
観音塚古墳は6世紀の遺構とのこと。
埴輪が発見されたのは、それから約1000年後の江戸時代のこと。庶民まで仏教が深く浸透していた時代です。
そんな時代にこの埴輪が発見されたら、村の人はきっとこんな会話をしたことでしょう……
(以下、妄想)

「長老…これはいったい…、何なんでしょう?」
「これは……そうさな、観音さまじゃろうかの」

「オラ、こんな土の人形が観音様なんて、とても信じらんねえ」
「バカ野郎、長老がいうんだから間違いねえ!これは観音様じゃ!」

いつもの妄想で、こんな会話が聞こえてきます。

もしこれが本当だとすると、民俗学的な視点では、非常に興味深いエピソードです。
もともと仏像として作ったわけでないのに、後の時代の人が勝手に観音様に仕立て上げるという話。
石や木なんかを、仏の姿として祀ったりしているようなパターン、各地に伝承があるんじゃないでしょうか。

庶民の素朴な信仰ですから、石だろうと埴輪だろうと、自分たちの身近な神仏になぞらえて、ありがたがることは、よくあることだったでしょう。

写真をみると、この埴輪の端正な顔立ちは、阿弥陀さんや地蔵さんじゃ似合わない、やっぱり観音なのかな、と思ってしまいますね。
それに、頭に巻いた冠か帽子の中央に飾りがあり、これを観音のシンボルである「化仏」と見立てたのかもしれません。
当時の村に「見立て」上手な人がいたら、観音と言うかもしれませんね。

逆に、お寺のお坊さんだったら、こんな自由な見立ては(プロとしての立場上)できないかもしれません。


ところが・・・

おもしろい話だなあと思っていたのですが、少し取材してみると、また話が変わってきました。

近隣のお寺さんに話を聞いてみると、ちがう話が得られたのです。

「観音塚の由来は、あの古墳から埴輪と一緒に小さな観音像が見つかった。それを祀ったから観音塚なのです」

とのお答え。
つまり、この小さな観音像のほうが観音塚の由来で、埴輪は関係ないという話です。

はたして、埴輪を観音として祀ったのか、それとも一緒に出土した観音像を祀ったのか。
『古墳ガイドブック』を執筆された大田区の方はすでに退任(?)されているようで、はっきりした真相はよくわからない、という状況です。

そして、本当に「小さな観音像」が古墳から出土したとしたら、これも大変めずらしいことです。実際のところどうだったのでしょうか?

話の方向が、埴輪から観音像に替わってきました。


多摩川台公園から多摩川を望む。古墳時代の人も江戸時代の人も同じ夕景を見たのでしょうか

事の真相は謎のままです。ただ「これはひょっとして…」、という話があるので、次週に続けたいと思います。
ナゾを解くカギは、ここでもやはり「神仏習合」。
先週ご紹介した浅間神社古墳にあるようです。
それでは来週、また「仏像ブツブツ」にアクセスお願いします。

それでは聴いてください。
ケミカル・ブラザースで、Dig Your Own Hole。




●おしらせ
本コラム筆者・宮澤やすみ出演

1.
本コラム筆者・宮澤やすみの”仏像バンド”ことThe Buttz(ザ・ブッツ)
新譜音源発売中

「日本書紀」成立1300年記念
飛鳥をテーマにしたミニアルバム『欣喜雀躍』。
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アルバムジャケットは飛鳥・橘寺の風景



宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m