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観音か、埴輪か…多摩川観音塚古墳のナゾに迫る2つの仮説
”仮説を立てたワタクシは、浅間神社に問い合わせてみました。すると回答は……なんと!”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。
さて、多摩川台公園周辺の古墳群をめぐる三回目です。
公園の古墳群でひときわ大きく形がよく残る亀甲山(かめのこやま)古墳。途中のくびれ部分が前方後円墳の特徴
前回ご紹介した観音塚古墳では、江戸時代に人物型埴輪(はにわ)が発見され、それを観音様としてお祀りしたという話。
しかし、近隣のS寺さん(寺名は伏せてほしいとのことでこう表記します)によると、埴輪と同時に観音像も発見され、それをお祀りしたのだという話もある。
実際はどうだったんでしょうか?
観音塚古墳から出土した人物埴輪 写真提供:大田区立郷土博物館 ※無断コピーはご遠慮ください
よそ者である私が大変恐縮ではありましたが、ひとつ考えをめぐらせました。
謎を解くカギは、前々回ご紹介した浅間神社古墳にあるのかもしれません。
そこで書いたとおり、こちらも江戸時代(承応元年(1652))に観音像が発見されているんですよね。
観音塚と浅間神社、同じ多摩川台地域で、江戸時代にそんなに観音像が連続して出土するとは、考えにくいように思います。
「浅間神社の観音像発見の話が、観音塚古墳の話とごっちゃになってやしないか?」
という仮説を立てたワタクシは、浅間神社に問い合わせてみました。
すると回答は……なんと!
多摩川浅間神社。多摩川台公園の東南端にあり、観音塚とは公園を挟んで約900mほどの距離
「その観音像は、隣の東光院にありますよ」
とのこと。
東光院は、浅間神社に隣接するようにあるお寺です。そちらにも聞いてみると、「たしかにウチの本堂内陣にある」とのことで、一般には非公開。
当時は神仏習合の時代。神社に観音を祀るのはよくある話ですが、明治の神仏分離でお寺に移したのでしょう。
位置関係は地図のとおり。左上の黄色い丸が観音塚古墳、右下の緑の丸が多摩川浅間神社
観音塚古墳にも観音像、浅間神社にも観音像。
同じ地域でそんなにポンポンと観音像が発見されるものでしょうか?
いよいよ、真相がわからなくなってきました……
情報を整理すると、
1.浅間神社から観音像が発見、現存
2.観音塚古墳から観音像が発見、現存せず(観音堂は存在)
3.観音塚古墳から埴輪が発見、現存
となります。
あらためて仮説がふたつ出来るかと思います。
まず、2.の、「現存せず」の観音像が本当にあったとすると、この地域はある時期(おそらく白鳳期)小金銅仏の観音像が複数祀られていた可能性があり、江戸時代に次々発掘された。
多摩川流域は古代から仏教寺院が建てられ、支流・野川の深大寺には白鳳期の仏像が残っています。千葉の龍角寺は古墳と古代寺院があるので、ここ多摩川台も同じような状況だったのでしょうか。
もうひとつは、1.浅間神社の観音像発見と、3.埴輪を観音として祀ったのが本当で、2.の説は浅間神社の話と混同して後から作られたか(埴輪を祀っていたのがいつのまにか観音像に話が変わっていたとか)。いずれも証拠はありません。ひとまず推測はここまでにしましょう。
はたして、多摩川台の古墳と観音像との関連、その真相は・・・?
歴史ミステリーの真相は、多摩川の流れと共に……
現在、観音塚古墳だったところは宅地化されていて跡形も残っていません。
発掘作業ができず、文献もないとなると、今後も真相は神のみぞ知る、いや、埴輪のみぞ知る、といったところでしょうか。
ともかく、この地域のご関係のみなさんが、ぜひとも仲良く、一致協力して、地域の歴史ロマンを盛り立てていただけたらと思うばかりです。
公園の遊具も前方後円墳フォルム(笑)
大田区発行『古墳ガイドブック』を書かれた人がまだご存命なら、お話を伺ってみたいです。
「よくわからないということ」を楽しむのも、古代史の楽しいところ。仏像と古墳と神社が3つ巴で歴史を語りかけてくる多摩川台公園。これからも何度も行ってみたくなります。
それでは聴いてください。
キンクスで、「ウォータールー・サンセット (Waterloo Sunset)」。
(過去記事)
観音か、埴輪か…多摩川観音塚古墳のナゾ
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20201117-2/
神仏習合さんぽ 観音-神社-古墳がつながる聖地・多摩川浅間神社
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20201110-2/
●おしらせ
本コラム筆者・宮澤やすみ出演
1.
【ひとりワロス Vol.3】
新型コロナで出番を失った宮澤やすみの、気ままなソロライブを配信。
三味線で洋楽カバーに懐かしポップ。お江戸の小唄も。
12月11日(金)19:30~生配信。
※開演後いつでも見られます
https://youtu.be/yhKfbwVFm6M
※会場観覧も歓迎です(上野御徒町ワロスロードカフェ。18:30会場)
2.
本コラム筆者・宮澤やすみの”仏像バンド”ことThe Buttz(ザ・ブッツ)
新譜音源発売中
「日本書紀」成立1300年記念
飛鳥をテーマにしたミニアルバム『欣喜雀躍』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/buybuttz.html
アルバムジャケットは飛鳥・橘寺の風景
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。
さて、多摩川台公園周辺の古墳群をめぐる三回目です。
公園の古墳群でひときわ大きく形がよく残る亀甲山(かめのこやま)古墳。途中のくびれ部分が前方後円墳の特徴
前回ご紹介した観音塚古墳では、江戸時代に人物型埴輪(はにわ)が発見され、それを観音様としてお祀りしたという話。
しかし、近隣のS寺さん(寺名は伏せてほしいとのことでこう表記します)によると、埴輪と同時に観音像も発見され、それをお祀りしたのだという話もある。
実際はどうだったんでしょうか?
観音塚古墳から出土した人物埴輪 写真提供:大田区立郷土博物館 ※無断コピーはご遠慮ください
よそ者である私が大変恐縮ではありましたが、ひとつ考えをめぐらせました。
謎を解くカギは、前々回ご紹介した浅間神社古墳にあるのかもしれません。
そこで書いたとおり、こちらも江戸時代(承応元年(1652))に観音像が発見されているんですよね。
観音塚と浅間神社、同じ多摩川台地域で、江戸時代にそんなに観音像が連続して出土するとは、考えにくいように思います。
「浅間神社の観音像発見の話が、観音塚古墳の話とごっちゃになってやしないか?」
という仮説を立てたワタクシは、浅間神社に問い合わせてみました。
すると回答は……なんと!
多摩川浅間神社。多摩川台公園の東南端にあり、観音塚とは公園を挟んで約900mほどの距離
「その観音像は、隣の東光院にありますよ」
とのこと。
東光院は、浅間神社に隣接するようにあるお寺です。そちらにも聞いてみると、「たしかにウチの本堂内陣にある」とのことで、一般には非公開。
当時は神仏習合の時代。神社に観音を祀るのはよくある話ですが、明治の神仏分離でお寺に移したのでしょう。
位置関係は地図のとおり。左上の黄色い丸が観音塚古墳、右下の緑の丸が多摩川浅間神社
観音塚古墳にも観音像、浅間神社にも観音像。
同じ地域でそんなにポンポンと観音像が発見されるものでしょうか?
いよいよ、真相がわからなくなってきました……
情報を整理すると、
1.浅間神社から観音像が発見、現存
2.観音塚古墳から観音像が発見、現存せず(観音堂は存在)
3.観音塚古墳から埴輪が発見、現存
となります。
あらためて仮説がふたつ出来るかと思います。
まず、2.の、「現存せず」の観音像が本当にあったとすると、この地域はある時期(おそらく白鳳期)小金銅仏の観音像が複数祀られていた可能性があり、江戸時代に次々発掘された。
多摩川流域は古代から仏教寺院が建てられ、支流・野川の深大寺には白鳳期の仏像が残っています。千葉の龍角寺は古墳と古代寺院があるので、ここ多摩川台も同じような状況だったのでしょうか。
もうひとつは、1.浅間神社の観音像発見と、3.埴輪を観音として祀ったのが本当で、2.の説は浅間神社の話と混同して後から作られたか(埴輪を祀っていたのがいつのまにか観音像に話が変わっていたとか)。いずれも証拠はありません。ひとまず推測はここまでにしましょう。
はたして、多摩川台の古墳と観音像との関連、その真相は・・・?
歴史ミステリーの真相は、多摩川の流れと共に……
現在、観音塚古墳だったところは宅地化されていて跡形も残っていません。
発掘作業ができず、文献もないとなると、今後も真相は神のみぞ知る、いや、埴輪のみぞ知る、といったところでしょうか。
ともかく、この地域のご関係のみなさんが、ぜひとも仲良く、一致協力して、地域の歴史ロマンを盛り立てていただけたらと思うばかりです。
公園の遊具も前方後円墳フォルム(笑)
大田区発行『古墳ガイドブック』を書かれた人がまだご存命なら、お話を伺ってみたいです。
「よくわからないということ」を楽しむのも、古代史の楽しいところ。仏像と古墳と神社が3つ巴で歴史を語りかけてくる多摩川台公園。これからも何度も行ってみたくなります。
それでは聴いてください。
キンクスで、「ウォータールー・サンセット (Waterloo Sunset)」。
(過去記事)
観音か、埴輪か…多摩川観音塚古墳のナゾ
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20201117-2/
神仏習合さんぽ 観音-神社-古墳がつながる聖地・多摩川浅間神社
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20201110-2/
●おしらせ
本コラム筆者・宮澤やすみ出演
1.
【ひとりワロス Vol.3】
新型コロナで出番を失った宮澤やすみの、気ままなソロライブを配信。
三味線で洋楽カバーに懐かしポップ。お江戸の小唄も。
12月11日(金)19:30~生配信。
※開演後いつでも見られます
https://youtu.be/yhKfbwVFm6M
※会場観覧も歓迎です(上野御徒町ワロスロードカフェ。18:30会場)
2.
本コラム筆者・宮澤やすみの”仏像バンド”ことThe Buttz(ザ・ブッツ)
新譜音源発売中
「日本書紀」成立1300年記念
飛鳥をテーマにしたミニアルバム『欣喜雀躍』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/buybuttz.html
アルバムジャケットは飛鳥・橘寺の風景
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m