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牡丹でつながる長谷寺の霊験-西新井大師「ぼたん観音」

”この観音さまの由来をひもとくと、まさしく美人のイメージがぴったりくるのでした……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。このご時世で音楽の仕事がめっきり無くなり、その時間でひたすら動画制作にいそしんでいる宮澤やすみです。今回の記事末「それでは聴いてください」コーナーはそれをお届けします。

さて、前々回から女性的な観音について書いていますが、そのつづきです。

東京・西新井大師は、昨年NHK「ひるまえほっと」で取材したお寺ですが、放送であまりご紹介できなかったのが六角堂の観音菩薩(聖観世音菩薩)です。
すらりと細身のお姿、やや釣り目の目元、通った鼻筋、口には紅が残っており、全身から美人のオーラを出しまくっています。


優雅に腰をくねらせる姿が美しい:写真提供・西新井大師

「美人」と言い切ってしまいましたが、通称「ぼたん観音」と呼ばれるこの観音さまの由来をひもとくと、まさしく美人のイメージがぴったりくるのでした。

由来は、鎌倉時代に書かれた『長谷寺霊験記」によります。長谷寺とは奈良の観音霊場である長谷寺です。


奈良・長谷寺の本堂外陣。観音の霊験が唐にまで届いていたというお話

話の舞台は中国・唐。
皇帝のお妃に馬頭夫人(めずぶにん)という方がいて、その優しい心から皇帝の寵愛が厚かったのですが、ほかのお妃が嫉妬。お妃たちは馬頭夫人を、明るい昼のうちに皇帝に会わせ、顔をよく見てもらおうと画策します。
というのも、馬頭夫人は名前のとおり面長の馬ヅラで、灯りのない夜ならまだしも、昼に顔を見せるのは自信がなかったようです。

ちなみに筆者の世代で馬ヅラというと先代の三遊亭円楽を思い浮かべますけども、じつはこの方若いころは相当なイケメンだったそうで、馬ヅラでもそんなに悩まなくていいと思うんですが、顔の悩みは人それぞれ、本人にとっては深い悩みだったんでしょう。


テレビ番組収録で、女優の相武紗季さんと訪れた時の記念写真。ぼくはバンドの衣装で三味線も少し弾きました

皇帝に顔を見せるのは15日後。その前になんとかしないと、と各所に相談します。薬は効かない、修行してもダメ。タイムリミットは迫ります。ある仙人に相談すると、アドバイスをもらいました。
それが、「大和の国にある長谷寺の観音の霊験を信じて祈るとよいだろう」ということだったのです。
日本の長谷寺の霊験あらたかなことは、唐の国にも伝わっていたのでした。
馬頭夫人はさっそく道場を設け一生懸命祈願しました。七日七晩を経た朝、東の果てからやってきた僧が、手にした瓶から水を顔に注いでくれたような、夢とも現ともつかない感覚を得ました。そこで鏡を見ると、美しいお顔が! 馬頭夫人の祈りが通じたのでした。

おかげで、皇帝からの寵愛は一層深く、ほかのお妃との仲もむつまじくなったというお話なんですけど、このお話と、西新井大師の観音様のつながりがまだ見えてこないですね。まあそうあせらずに。話は続きます。


六角堂安置の聖観世音菩薩。ふっくらした頬の美人さん:写真提供・西新井大師

馬頭夫人は、長谷寺観音の霊験に深く帰依し、日本へ舟を出してお礼の宝物を送り、自らも護法善神となって衆生に恵みを施すとの誓いを立てました。

その舟が長谷寺に到着するんですけど、そのお礼の品のなかにあったのが、中国原産の花である牡丹だったのです。
それが、いま長谷寺に牡丹の花が咲き乱れる由来、というわけでした。

そして、その長谷寺の牡丹を移植したのが西新井大師の牡丹でして、「西の長谷寺、東の西新井」と東西の牡丹の名所として親しまれるようになったそうです。

長谷寺の牡丹と美人のエピソードから、牡丹といえば美人、美人といえば牡丹というイメージがつきもの。六角堂の美人観音さんも「ぼたん観音」と呼ばれるゆえんはこんなところにあったのでした。

観音さまを安置する六角堂は、昭和天皇在位60年を記念して建てられました。お寺の中では比較的最近お目見えになったお堂と仏像ではありますが、今回あらためてお寺の方に伺ったら、仏像としてはかなり古い時代の貴重な作なんだそうです。お寺に行かれたらぜひ拝んでください。

(参考)
牡丹|式の花々|西新井大師のご案内
https://www.nishiaraidaishi.or.jp/info/botan.html




それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「むかえにきたよ」




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宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m