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第254回 「甘美なるフランス」の時代、祖父はパリにいた①
”当時パリを訪れていた祖父は、マリー・ローランサンと道ですれ違っていたりして……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。今月のライブを終えてほっとしている宮澤やすみです。三味線とベースでのデュオはなかなか成功したのではないかと思います。
さて、この連載は「仏像とその周辺」の話題を扱っていて、筆者個人的には「仏」は「仏」でも仏蘭西(フランス)の文化もかねてより注目している次第です。
このたび、渋谷のBunkamuraミュージアムにて開幕した「ポーラ美術館コレクション展 甘美なるフランス」の報道内覧会に行ってきました。
箱根・仙石原のポーラ美術館所蔵作品から選りすぐりのものを展示していて、フランス気分に浸れる展覧会になっています。
とくに19世紀後半の印象派から始まる、絵画の大変革。その中心となった街がフランス・パリでした。
チラシなどのメインビジュアルになっているラウフ・デュフィ作の《パリ》。撮影:古川裕也
展示では、時代の移り変わりとリンクして、画家たちの絵画制作の「挑戦」が見てとれます。
1850年代から、パリ市街の大整備が行われ、それまで汚物だらけだったパリが現在のかたちに近いきれいなものになりました。
科学が発達し、写真技術が発明され、近代化が一気に進む中で、
「おいおい、これから絵描きはどうするよ」
という意識から、印象派が始まったということです。
もともと「印象派」という呼称は、モネの絵を揶揄する言葉だったのが良い意味で広がったもので、言葉自体に深い意味はありません。
自然光の元で自然のままの色彩を絵画に落とし込みたい、というのがモネなど印象派画家の目論見でした。
チーフ・キュレーターの宮澤政男さんによる解説を伺いました
以前、ポーラ美術館を取材したことがあるのですが、その時は、モネが描いた水辺の舟遊びの絵とともに、鳥やせせらぎの音を流す試みが行われていました。
その音を聞いたとたんに、モネのふわふわした絵がものすごくリアルに感じられた体験をしました。
私自身、音楽の人間なので目より耳からの情報に敏感だからなのかもしれません。
このときから、モネとしては自分なりの写実表現を目指したんだなということを実感した次第です。
絵画の題材も、ひと昔前なら神話の世界を描いたものが、街の女性たちの入浴シーンを書くなど日常的な題材に替わります。
今だったら、スナップ写真で気軽にぱぱっと撮るような一瞬を絵画にしたのもこの時代の特徴。つまり絵の題材も写実的になっていった。
ルノワール《レースの帽子の少女》など印象派の代表作が続々。アールデコのガラス工芸品も展示
パリ・モンマルトルでの印象派絵画が美術界でひとつの潮流になると、海外から画家たちが一斉にパリに集まります。
こんどはパリの南側、モンパルナスがホットな地域になる。
ピカソ、マティス、シャガールや、日本人の藤田嗣治もその中にいて、モンパルナスの芸術「エコール・ド・パリ」が花開きます。
(藤田の作品は今回展示ありません)
私はパリに何度か行きましたが、モンマルトルは丘の斜面に位置する坂道の街、今でこそ観光地ですが、どこかどんより湿り気のある隠れ家的な地域。
いっぽう、モンパルナスは開けた平地で、大通りがあって、パッと明るい気持ちになる印象。
まさに、アングラ芸術だった印象派が世に認められ、華開く過程を象徴するかのようです。
20世紀初頭のパリ・ノートルダム寺院の絵葉書(祖父の手紙に同封されていた)
展示は、その後のマリーローランサンなどの洗練された作品で締めくくられて、出口を出るころにはすっかりパリ気分。
このローランサンの作品が1927年ということですが、ここで気づいたことがありました。
私事で恐縮ですが、ちょうどこの1927年に、私の祖父がパリに滞在していたのです。
祖父の遺品で、その当時パリから東京の家族に宛てた手紙を私が譲り受けていて、その日付が1927年の7月7日。
当時、パリを訪れていた祖父は、マリー・ローランサンと道ですれ違っていたりして、そんな妄想をかきたてる作品でありました。
次回の連載で、もう少しご紹介したいと思っています。
まさに1927年(昭和2年)、パリから祖父が家族に宛てた手紙。その内容はまた次回検証します
さて、美術館を出ると目の前にはカフェ・ドゥー・マゴ。
パリに本店を置く歴史的名カフェがあります。
そこで展覧会コラボメニューなどいただきながら、アート談議に花を咲かせたくなるのであります(取材はひとりなので黙って帰りましたけどね)。
それでは聴いてください。
アート・ブレイキー&ザ・ジャズメッセンジャーズで「モーニン」
(パリ・サンジェルマンのライブ)
ポーラ美術館コレクション展 甘美なるフランス
2021/9/18(土)~ 11/23(火・祝)
*9/28(火)、10/26(火)は休館
Bunkamura ザ・ミュージアム
詳細は公式サイトへ:
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/21_pola/
(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ一門演奏会「小唄 in 神楽坂」
10/23(金)15:00開演(16:30終了)
神楽坂 善國寺(毘沙門天)書院
フランスのシャンソンと並ぶ、小粋な歌が日本の「小唄」
それを専門に指導している宮澤やすみ一門の年に一度の演奏会です。
(イベント詳細ページ)
https://machitobi.org/2021/204/
2.
新作MV公開「寄木造」宮澤やすみアンド・ザ・ブッツ
宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/
3.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。今月のライブを終えてほっとしている宮澤やすみです。三味線とベースでのデュオはなかなか成功したのではないかと思います。
さて、この連載は「仏像とその周辺」の話題を扱っていて、筆者個人的には「仏」は「仏」でも仏蘭西(フランス)の文化もかねてより注目している次第です。
このたび、渋谷のBunkamuraミュージアムにて開幕した「ポーラ美術館コレクション展 甘美なるフランス」の報道内覧会に行ってきました。
箱根・仙石原のポーラ美術館所蔵作品から選りすぐりのものを展示していて、フランス気分に浸れる展覧会になっています。
とくに19世紀後半の印象派から始まる、絵画の大変革。その中心となった街がフランス・パリでした。
チラシなどのメインビジュアルになっているラウフ・デュフィ作の《パリ》。撮影:古川裕也
展示では、時代の移り変わりとリンクして、画家たちの絵画制作の「挑戦」が見てとれます。
1850年代から、パリ市街の大整備が行われ、それまで汚物だらけだったパリが現在のかたちに近いきれいなものになりました。
科学が発達し、写真技術が発明され、近代化が一気に進む中で、
「おいおい、これから絵描きはどうするよ」
という意識から、印象派が始まったということです。
もともと「印象派」という呼称は、モネの絵を揶揄する言葉だったのが良い意味で広がったもので、言葉自体に深い意味はありません。
自然光の元で自然のままの色彩を絵画に落とし込みたい、というのがモネなど印象派画家の目論見でした。
チーフ・キュレーターの宮澤政男さんによる解説を伺いました
以前、ポーラ美術館を取材したことがあるのですが、その時は、モネが描いた水辺の舟遊びの絵とともに、鳥やせせらぎの音を流す試みが行われていました。
その音を聞いたとたんに、モネのふわふわした絵がものすごくリアルに感じられた体験をしました。
私自身、音楽の人間なので目より耳からの情報に敏感だからなのかもしれません。
このときから、モネとしては自分なりの写実表現を目指したんだなということを実感した次第です。
絵画の題材も、ひと昔前なら神話の世界を描いたものが、街の女性たちの入浴シーンを書くなど日常的な題材に替わります。
今だったら、スナップ写真で気軽にぱぱっと撮るような一瞬を絵画にしたのもこの時代の特徴。つまり絵の題材も写実的になっていった。
ルノワール《レースの帽子の少女》など印象派の代表作が続々。アールデコのガラス工芸品も展示
パリ・モンマルトルでの印象派絵画が美術界でひとつの潮流になると、海外から画家たちが一斉にパリに集まります。
こんどはパリの南側、モンパルナスがホットな地域になる。
ピカソ、マティス、シャガールや、日本人の藤田嗣治もその中にいて、モンパルナスの芸術「エコール・ド・パリ」が花開きます。
(藤田の作品は今回展示ありません)
私はパリに何度か行きましたが、モンマルトルは丘の斜面に位置する坂道の街、今でこそ観光地ですが、どこかどんより湿り気のある隠れ家的な地域。
いっぽう、モンパルナスは開けた平地で、大通りがあって、パッと明るい気持ちになる印象。
まさに、アングラ芸術だった印象派が世に認められ、華開く過程を象徴するかのようです。
20世紀初頭のパリ・ノートルダム寺院の絵葉書(祖父の手紙に同封されていた)
展示は、その後のマリーローランサンなどの洗練された作品で締めくくられて、出口を出るころにはすっかりパリ気分。
このローランサンの作品が1927年ということですが、ここで気づいたことがありました。
私事で恐縮ですが、ちょうどこの1927年に、私の祖父がパリに滞在していたのです。
祖父の遺品で、その当時パリから東京の家族に宛てた手紙を私が譲り受けていて、その日付が1927年の7月7日。
当時、パリを訪れていた祖父は、マリー・ローランサンと道ですれ違っていたりして、そんな妄想をかきたてる作品でありました。
次回の連載で、もう少しご紹介したいと思っています。
まさに1927年(昭和2年)、パリから祖父が家族に宛てた手紙。その内容はまた次回検証します
さて、美術館を出ると目の前にはカフェ・ドゥー・マゴ。
パリに本店を置く歴史的名カフェがあります。
そこで展覧会コラボメニューなどいただきながら、アート談議に花を咲かせたくなるのであります(取材はひとりなので黙って帰りましたけどね)。
それでは聴いてください。
アート・ブレイキー&ザ・ジャズメッセンジャーズで「モーニン」
(パリ・サンジェルマンのライブ)
ポーラ美術館コレクション展 甘美なるフランス
2021/9/18(土)~ 11/23(火・祝)
*9/28(火)、10/26(火)は休館
Bunkamura ザ・ミュージアム
詳細は公式サイトへ:
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/21_pola/
(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ一門演奏会「小唄 in 神楽坂」
10/23(金)15:00開演(16:30終了)
神楽坂 善國寺(毘沙門天)書院
フランスのシャンソンと並ぶ、小粋な歌が日本の「小唄」
それを専門に指導している宮澤やすみ一門の年に一度の演奏会です。
(イベント詳細ページ)
https://machitobi.org/2021/204/
2.
新作MV公開「寄木造」宮澤やすみアンド・ザ・ブッツ
宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/
3.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m