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第263回 千葉・佐原の十一面観音② 廃仏毀釈の嵐を逃れて

”近くの畑に捨てられ野ざらしになっていたとか……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。しばらくぶりにサイレント映画の伴奏のお仕事をいただき、映画を観て曲の仕込みにかかっている宮澤やすみです。いわゆる「活動写真」楽しいですよ。

さて、先週ご紹介した、千葉県の佐原(さわら)の十一面観音菩薩立像。

幕府も重んじたという理由は、この地域の神社にありました。

じつはここ、すぐ近くに香取神宮があるのです。
香取神宮は、ご祭神が経津主神(フツヌシ)といって、武家や朝廷に尊崇される武神です。


香取神宮拝殿

まずは、このフツヌシについて、ごく手短に整理しましょう。

日本神話では、天照大神の命によって、大国主命に国譲りを迫った神です。
この時ペアを組んだのが建御雷神(タケミカヅチ)で、お隣茨城県の鹿島神宮のご祭神がそうです。

さらに、鹿島のタケミカヅチと香取のフツヌシは、奈良の春日大社の主祭神にもなっています。

つまり、古代ヤマト朝廷を導く代表的な神様であり、それを祀る香取神宮は奈良朝の東国統治の拠点だったというわけですね。


で、時は平安時代、神仏習合の考え方がふつうだった時に、香取神宮の境内に神宮寺(神社を管理するお寺)がありました。寺院の名前は金剛宝寺といいます。

その金剛宝寺のご本尊が、今回ご紹介している十一面観音菩薩ということなのです。

奈良から江戸時代までの日本では、「本地垂迹(ほんじすいじゃく:日本の神の本体は仏である)」という考え方があって、神社の神に対応した「本地仏(ほんじぶつ)」が造られました。

この十一面観音も、フツヌシの本地仏のような意味合いがあったと思われます。


像高3.25m。見上げる大きさの十一面観音。荘厳寺にて撮影

日本を代表する古社・香取神宮ゆかりの十一面観音が、なぜ今佐原のお寺にあるのかというと、時代はぐっと下って明治維新のことになります。

江戸幕府が倒れて新政府が出したお触れが「神仏判然令」といって、神社とお寺を分ける政策でした。

これによって、神社に仏像があるのがNGとされて、香取神宮にあった金剛宝寺の仏像や仏具が流出。あるものは売りに出され、あるものは廃棄されました。

十一面観音は大きいのでそう簡単に処分できず、近くの畑に捨てられ野ざらしになっていたとか。
それを嘆いた佐藤要助さんという地元の方が譲り受け、佐原の荘厳寺に寄贈したとのこと。

十一面観音の頭部にあるはずの小面が無くなっているのは、捨てられた経緯を物語っているのでありました。


筆者が仏像ガイドとしてツアー客をご案内したときのようす。みなさん興味深く拝観されていました

明治初期、神仏判然令から始まった神仏分離の動きは、地域によっては過激な「廃仏毀釈」に発展し、仏像が捨てられました。
その辺の経緯は令和の今になって再検証されています。
明治13年ごろには廃仏の熱も冷め、一旦禁止された修験道なども復活しました。その後、文化財として仏像や寺院建築の保護という考え方が芽生えたきっかけになったとも言えるでしょう

この荘厳寺の十一面観音立像は、当時の騒動を物語る貴重な仏像で、国の重要文化財に指定されています。
拝観は事前にお寺にご連絡を。


それでは聴いてください。
ピチカート・ファイヴで「陽の当たる大通り」。



荘厳寺WEBサイト
http://www.syougonji-fudouson.jp/index.html


(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ出演
〈ジェンダーギャップ映画祭〉
12/4土13:15 
12/6月18:50
渋谷ユーロスペース
https://fnmnl.tv/2021/09/24/135866
映画祭のうちサイレント映画『新女性』で三味線生伴奏します。活動弁士:山内菜々子
http://nichigei-eigasai.com/film1.html


2.
新作MV公開「欣喜雀躍」宮澤やすみ アンド・ザ・ブッツ


宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/


3.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)



宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m