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第264回 首だけの仏像「みしるし不動」-千葉・荘厳寺
”時代に翻弄されながら令和の今に残る、波乱のヒストリーが……”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。この先音楽の出演が予定されるなか、手を負傷してちょっとピンチだった宮澤やすみです。完治はまだですが回復傾向にありまあなんとか演奏できそうでございます。
さて、前々回から、千葉県の佐原(さわら)の荘厳寺を訪れ、十一面観音菩薩立像をご紹介しました。
神仏分離によって香取神宮にあった仏像が荘厳寺に移設されたのでした。
さて、その荘厳寺ですが、本堂には別のちょっと変わった仏像が安置されています。
それが「みしるし不動」という尊像。
荘厳寺の入り口からその存在を存分にアピール
それは、本堂にあります。靴を脱いで本堂の正面右側に行くと、ガラス越しでも拝することができます。
「こちらから」と親切なご案内があります
中をのぞくと、なんと首だけになった忿怒の形相、不動明王の頭部が奥に鎮座しているじゃないですか。
首だけになった不動明王が、豪華な台座に安置される様はちょっと異様に見える(写真提供:荘厳寺)
不動明王は、空海が日本にもたらした密教の尊像で、怒りの表情で魔物を払い、迷いの多い人間たちを導くとされる力強い仏像です。
その力みなぎる荒々しい姿が、山岳信仰の山伏や武士などの信仰を集めました。
荘厳寺では、わざわざ頭部だけの不動明王を造って丁重にお祀りしているのですが、それにはなかなか深い理由があるそうで、お寺のWEBサイトによると、その発端は越後の国、菅谷寺(かんこくじ)にあるそうです。
現在の新潟県新発田市にある菅谷寺は、比叡山からもたらされた不動明王を、源頼朝の叔父にあたる(源義朝の弟)護念上人が安置したのが開基といいます。
その後火災で頭部だけになったものの信仰は衰えず、「菅谷不動尊(すがたにふどうそん)」として現在に至っています。
ただ、明治の神仏分離の際に苦境に陥り、各地へ不動尊の出開帳(各地へ出向いて仏像の公開を行うこと)をしました。
そして、この連載で話題にしている千葉・佐原の荘厳寺でも出開帳が行われて、それを機に荘厳寺でも菅谷不動尊ゆかりの不動堂が建立。時は明治18年、越後から遠く離れた佐原の地で菅谷不動尊の信仰が盛んになったのでした。
しかし、戦後になって荘厳寺が無住の時代がしばらくあり、菅谷不動信仰も消えかかります。
平成の新しい像ではあるが、その歴史は深い(写真提供:荘厳寺)
それでも、これで終わらないのが荘厳寺のすごいところ。昭和47年に新たにお寺に入ったご住職、時代が下って「大尊像造立の夢」を見たというのが平成24年。それから苦心の末平成27年にこの不動像が完成、開眼供養されました。ここまで長かった。
このときに「みしるし不動尊」という名称が付けられたのですが、わざわざひらがなで表記されるのはワケがあります。
荘厳寺WEBサイトによると、
一つには「み首」、二つには「み標」、三つには「み験」の意味
だそうで、1.大きな首 2.大きな目標に向かう人を応援 3.霊験
という意味が込められています。
わたくし宮澤も各地の不動明王を取材してきましたが、お不動さんの忿怒の形相は、「怒っているのではなく、叱っている顔」と教えてもらったことがあります。
水郷の名所・佐原の地に寺はある
目標に向かってがんばっている人に対して、叱咤激励する役は、たしかに不動明王がぴったりじゃないかと思いました。
頭部だけ残る仏像は各地にありますが、時代に翻弄されながら令和の今に残る、波乱のヒストリーがあるんですよね。
奈良・興福寺の仏頭や、東京・大観音寺の鉄造観音頭部など、私も著書で紹介しました。
みしるし不動さんには、自分の音楽が今はマイナーな存在でありながらも、しぶとく生き残って、たくさんの人に楽しんでもらえるようにとお願いしました。
(参考:荘厳寺WEBサイトより)
菅谷不動尊と荘厳寺の宝物
http://www.syougonji-fudouson.jp/category03/index01.html
菅谷不動大尊像(みしるし不動)
http://www.syougonji-fudouson.jp/category02/index.html
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「Great Sunshine Boy(大日如来のうた)」。
(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ出演
〈ジェンダーギャップ映画祭〉
12/4土13:15
12/6月18:50
渋谷ユーロスペース
https://fnmnl.tv/2021/09/24/135866
映画祭のうちサイレント映画『新女性』で三味線生伴奏します。活動弁士:山内菜々子
http://nichigei-eigasai.com/film1.html
2.
新作MV公開「欣喜雀躍」宮澤やすみ アンド・ザ・ブッツ
宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/
3.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。この先音楽の出演が予定されるなか、手を負傷してちょっとピンチだった宮澤やすみです。完治はまだですが回復傾向にありまあなんとか演奏できそうでございます。
さて、前々回から、千葉県の佐原(さわら)の荘厳寺を訪れ、十一面観音菩薩立像をご紹介しました。
神仏分離によって香取神宮にあった仏像が荘厳寺に移設されたのでした。
さて、その荘厳寺ですが、本堂には別のちょっと変わった仏像が安置されています。
それが「みしるし不動」という尊像。
荘厳寺の入り口からその存在を存分にアピール
それは、本堂にあります。靴を脱いで本堂の正面右側に行くと、ガラス越しでも拝することができます。
「こちらから」と親切なご案内があります
中をのぞくと、なんと首だけになった忿怒の形相、不動明王の頭部が奥に鎮座しているじゃないですか。
首だけになった不動明王が、豪華な台座に安置される様はちょっと異様に見える(写真提供:荘厳寺)
不動明王は、空海が日本にもたらした密教の尊像で、怒りの表情で魔物を払い、迷いの多い人間たちを導くとされる力強い仏像です。
その力みなぎる荒々しい姿が、山岳信仰の山伏や武士などの信仰を集めました。
荘厳寺では、わざわざ頭部だけの不動明王を造って丁重にお祀りしているのですが、それにはなかなか深い理由があるそうで、お寺のWEBサイトによると、その発端は越後の国、菅谷寺(かんこくじ)にあるそうです。
現在の新潟県新発田市にある菅谷寺は、比叡山からもたらされた不動明王を、源頼朝の叔父にあたる(源義朝の弟)護念上人が安置したのが開基といいます。
その後火災で頭部だけになったものの信仰は衰えず、「菅谷不動尊(すがたにふどうそん)」として現在に至っています。
ただ、明治の神仏分離の際に苦境に陥り、各地へ不動尊の出開帳(各地へ出向いて仏像の公開を行うこと)をしました。
そして、この連載で話題にしている千葉・佐原の荘厳寺でも出開帳が行われて、それを機に荘厳寺でも菅谷不動尊ゆかりの不動堂が建立。時は明治18年、越後から遠く離れた佐原の地で菅谷不動尊の信仰が盛んになったのでした。
しかし、戦後になって荘厳寺が無住の時代がしばらくあり、菅谷不動信仰も消えかかります。
平成の新しい像ではあるが、その歴史は深い(写真提供:荘厳寺)
それでも、これで終わらないのが荘厳寺のすごいところ。昭和47年に新たにお寺に入ったご住職、時代が下って「大尊像造立の夢」を見たというのが平成24年。それから苦心の末平成27年にこの不動像が完成、開眼供養されました。ここまで長かった。
このときに「みしるし不動尊」という名称が付けられたのですが、わざわざひらがなで表記されるのはワケがあります。
荘厳寺WEBサイトによると、
一つには「み首」、二つには「み標」、三つには「み験」の意味
だそうで、1.大きな首 2.大きな目標に向かう人を応援 3.霊験
という意味が込められています。
わたくし宮澤も各地の不動明王を取材してきましたが、お不動さんの忿怒の形相は、「怒っているのではなく、叱っている顔」と教えてもらったことがあります。
水郷の名所・佐原の地に寺はある
目標に向かってがんばっている人に対して、叱咤激励する役は、たしかに不動明王がぴったりじゃないかと思いました。
頭部だけ残る仏像は各地にありますが、時代に翻弄されながら令和の今に残る、波乱のヒストリーがあるんですよね。
奈良・興福寺の仏頭や、東京・大観音寺の鉄造観音頭部など、私も著書で紹介しました。
みしるし不動さんには、自分の音楽が今はマイナーな存在でありながらも、しぶとく生き残って、たくさんの人に楽しんでもらえるようにとお願いしました。
(参考:荘厳寺WEBサイトより)
菅谷不動尊と荘厳寺の宝物
http://www.syougonji-fudouson.jp/category03/index01.html
菅谷不動大尊像(みしるし不動)
http://www.syougonji-fudouson.jp/category02/index.html
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「Great Sunshine Boy(大日如来のうた)」。
(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ出演
〈ジェンダーギャップ映画祭〉
12/4土13:15
12/6月18:50
渋谷ユーロスペース
https://fnmnl.tv/2021/09/24/135866
映画祭のうちサイレント映画『新女性』で三味線生伴奏します。活動弁士:山内菜々子
http://nichigei-eigasai.com/film1.html
2.
新作MV公開「欣喜雀躍」宮澤やすみ アンド・ザ・ブッツ
宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/
3.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
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宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m