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第281回 仏像の殿堂・観世音寺の仏像たちと大宰府のなぞ

”なぜこんなにすごい仏像がここにあるのか?それを知る手掛かりは--”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。いよいよ今週末に我がバンド、The Buttz(ザ・ブッツ)のライブを控えている宮澤やすみです。めったに出番が無いのでどなたもご注目ください。配信でどこからでも観られます。

前回からつづいて九州の旅。
せっかく太宰府天満宮まで行ったので、やっぱり仏像ファン的にはここに行かねばなりますまい。
観世音寺です。


観世音寺は正面に講堂が建つ。仏像ファンは収蔵庫「宝蔵」にまっしぐら

広い境内の右側にどーんと大きな宝蔵があり、仏像ファンは足早にここに吸い込まれることになります。
階段を上がっていくと、もうメインの仏像の巨大な姿が見えてきます。
真ん中の壇には、5メートルを超す巨大立像が三体。どれも観音菩薩変化形です。
左から、十一面観音、馬頭観音、不空羂索観音 の順に並んでいます。


観世音寺、宝蔵

多臂(腕が何本もある)の異形像で、しかも見上げるような大きな像でありながら、均整のとれたプロポーションで、損傷もそれほどなく平安時代に造られたまま現在まで残っているという、とても貴重な例。
大きさ、古さ、出来栄えの三拍子そろった、仏像ファンが興奮してやまない像です。私も若いころ初めて拝観したときは鼻血が出そうでした(ちょっと出たかも)。今はいい大人なので興奮は胸の中に収めて、表向きはあくまでも静かに向き合う素振りをするとしましょう。


宝蔵内は撮影禁止なのですが、これは屋外の看板。検索すればほかにいくらでも画像が出てきますので

ちなみに、私が好きなのは角にいる聖観音菩薩坐像です。
福岡県文化財データベースに写真が出ています。
本堂の本尊だった像で、おだやかで優しい表情やなだらかな肩の線がいかにも平安時代風なのに、その存在感は圧倒的。如来の風格をたたえ貫禄たっぷりとか言うと聞こえが良いですが、目の当たりにすると威圧されてちょっと怖いくらいです。優しい目つきが逆に怖い。リンクを付けておきながら恐縮ですが、写真ではこの量感が伝わらないと思います。

なぜこんなにすごい仏像がここにあるのか?
それを知る手掛かりは、周囲の山や川などにありそうです。
せっかく現地に来たのなら、その土地をまるごと感じて、仏像のナゾに迫ってみたいものです。


観世音寺の南を流れる御笠川。なんの変哲もない川に見えるが……

仏像の余韻を味わいながら、南側の御笠川を歩いてみましょう。

御笠川は、太宰府天満宮の奥、宝満山を源流として(鬼滅の刃で人気沸騰の竈神社がある)、西北へ流れ、博多湾に注ぎこんでいます。流路は少しちがうものの、博多湾へ到達するのは昔から変わりません。


観世音寺、大宰府政庁、御笠川の位置関係。画面右上(北東)方面に太宰府天満宮がある

大宰府政庁が、西の玄関口といいながらわりと内陸に位置するのは、この川を利用していたからでしょう。
ここから北(観世音寺のほう)を見ると、背後に四王子山(しおうじやま)と呼ばれる山が連なっていて、古代の大野城跡などがあります。大宰府政庁はそのふもと、観世音寺の西隣に位置します。


画面奥の山のむこうに大野城跡がある

山に囲まれた防衛上の拠点に、川で外界と連絡する、そんな地勢を古代の人は選んだわけです。
(東側に水流があることから四神相応にも則しているという話もあります。しかし東から南へも流れがあるのでどうなんでしょうか)


大宰府政庁跡は、地元の人たちの憩いの場になっている

想像すると、都人が大阪の難波を出て瀬戸内海を進み、関門海峡をすり抜けてぐるりと福岡県をまわり博多へ到着。
御笠川を上って大宰府へ到着します。

都人の気分でこの川を眺めると、変哲の無い住宅地が少しちがって見えるかもしれないですよ。


観世音寺の歴史は古く、飛鳥時代、天智天皇の時代にさかのぼります。
この頃は、白村江の戦いに負けて、朝鮮半島との関係が危機的な状況だった時代。
前々回にこの連載で書いた筥崎宮に似た話ですがもっと昔の話、海外への玄関口であった大宰府の守りを固めたのでした。先ほど触れた大野城などは天智天皇の時代に造られた城砦です。

観世音寺の創建は、天智天皇の母・斉明天皇の供養のためとされますが、
こんな時代ですから、観音の霊験によって「睨みを効かせる」意味も込められたんじゃないでしょうか。
不空羂索観音は怨敵調伏のご利益もあるとされますし。

また、観世音寺は”日本の三戒壇”の一つとしても知られます。戒壇とは正式な僧を認可する場で、設置は761年。奈良の都に絢爛豪華な仏教文化が華開く時代。


現在の戒壇院は、観世音寺とは離れ禅宗寺院として再興している。この本堂内に戒壇がある

三戒壇は、奈良の東大寺、栃木の下野薬師寺、そして大宰府の観世音寺の3寺のこと。
奈良の唐招提寺の金堂にある三体の巨像は、この3寺の本尊(廬舎那仏、薬師如来、観音菩薩)になぞらえられているという説もあります。


まるで巨大ロボ!? 圧倒的な迫力の観音像はなぜ必要とされたのか?


それでは聴いてください。
ダフト・パンクで、「所詮人間 Human After All」。




(参考)
■福岡県文化財データベース
 観世音寺 木造馬頭観音立像
 観世音寺 木造不空羂索観音立像
 観世音寺 木造十一面観音立像
 観世音寺 木造聖観音菩薩坐像 

■大野城市
 大野城をあるく(観世音寺口城門)

---おしらせ---

(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
早稲田大学オープンカレッジ
■空から映像で実感!寺社、古墳で解き明かす東京のナゾ
古代から近代まで歴史の痕跡を探る、バーチャルさんぽ

Google Earthで東京を俯瞰しながら、寺社古墳という「点」、街道、河川などの「線」の関係を手掛かりに、重層的な東京のなりたちを紹介します。
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/55034/
早稲田大学エクステンションセンター中野校にて


2.
宮澤やすみのバンド The Buttz(ザ・ブッツ)
2年半ぶりフル編成ライブ「復活祭」
2022年4月9日(土)”大仏の日”17:00開演
東京・高円寺 グリーン・アップルにて
同時配信ツイキャスにてどこからでも視聴可能です。
https://twitcasting.tv/greenappletokyo/shopcart/136386

新曲「一木造」「Benzai-Tennyo」など、仏像から着想を得た楽曲を奏する”仏像バンド”ザ・ブッツ
コロナ休止からの復活となりますが、この機会を逃すとまたしばらく出番はありません。
4月9日大仏の日、ぜひ一度体験してみてください。
詳細案内:
http://yasumimiyazawa.com/buttz/4-9.html


3.
日本書紀を歌った新作MV「欣喜雀躍」宮澤やすみ アンド・ザ・ブッツ


宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/


4.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)



宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m