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第282回 奈良の至宝を渋谷で鑑賞「SHIBUYAで仏教美術」展
”強大な五大明王の力によって敵を呪殺するという--”
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。我がバンド、The Buttz(ザ・ブッツ)のライブは盛況のうちに終えることができました。各方面に感謝です。配信で当分の間観られますので今からでもぜひ。
さて、東京近辺の仏像ファンに朗報。渋谷の松濤美術館で奈良博の所蔵品を展示するという「SHIBUYAで仏教美術」展が始まりました。
写真は、報道内覧会で撮らせてもらったものです。
キーヴィジュアルは如意輪観音
仏像展示は2階の第二会場。
仏像本の表紙にもなっておなじみの如意輪観音がいました。肉感的な姿態は観心寺の像に次ぐ古さだそうです。
珠玉の仏像たちが並ぶ
奈良時代の金銅薬師如来もすばらしい出来でした。台座に垂れかかる衣文の美しさはとてもリアルで、華やかな天平の古典美を表しています。
何度も訪れた奈良博ですが、これは知らなかった。
《薬師如来坐像》銅造 奈良時代 8世紀 重要文化財 奈良国立博物館蔵
また、毘沙門天は、目ヂカラが強烈で印象的です。この像はかつて石清水八幡宮にあったことが墨書により分かっています。
今回の展示は、釈迦の教えから密教、浄土教という日本仏教の歴史をなぞるかたちになっていて、時代を追うごとに仏教そのものが変容していくようすが見て取れます。
毘沙門天に踏まれている邪鬼にも注目。かなり無理な姿勢
その中で興味深いのはやはり「神仏習合」で、その象徴的な展示が毘沙門天ではないでしょうか。
石清水八幡宮という神社に仏像があったわけですが、明治維新の前まではよくあることでした。
神社を管理するお寺(神宮寺とか別当寺という)が建ち、祭神の本体とされる仏像(本地仏)が祀られました。
八幡神の本地仏は阿弥陀如来なのですが、もしかしてその脇に毘沙門天が立っていたのか、今は知る由もありませんが、想像が膨らみます(おもに天台系の寺院では脇侍に毘沙門天と不動明王が並ぶ例もある)。
神仏習合関連ではほかに、春日神と本地仏を描いた曼荼羅や掛け仏などが展示されています。
このほかに目を引いたのは、密教法要で用いられる数々の法具です。
一見地味な竹筒に見える《転法輪筒》は、よく見ると五大明王が描かれています。
この筒に敵の名前か似顔絵などを入れて、強大な五大明王の力によって敵を呪殺するという、物騒な法要「転法輪法」に用いられていた法具です。
よく見ると怨念が籠っているようで怖い《転法輪筒》
拙著『仏像の光と闇』で書きましたが、密教の呪力がある種の兵器として用いられていた時代の遺物が、今では渋谷の閑静な住宅街に置かれていることがちょっと不思議な感覚です。
今回展示の白眉のひとつが国宝・牛皮華鬘(ごひけまん)。
牛皮に彩色した華鬘(堂内の荘厳具)は、1000年経った今でも鮮やかな色を残していて、しなやかな線描も目を見張るものがありました。ずっと眺めていたくなります。
繧繝(うんげん)彩色も確認できる貴重な《牛皮華鬘》
あれもこれも、仏像や寺社ファンなら興奮してやまず、友人と言ったらマニアトークが弾みそうな内容の濃い展示内容。展示数がそれほど多くないぶん短時間で観られて、帰りにカフェに寄る余力も残せます。
そんな中でも、もっとも濃ゆいといいますか、私としても一番目当てにしていたのが「僻邪絵」でした。
長くなったので、次週そのへんに触れたいと思います。
それでは聴いてください。
ジョージ・ハリスンで、「トライ・サム・バイ・サム」。
「SHIBUYAで仏教美術―奈良国立博物館コレクションより」
2022年4月9日(土)~2022年5月29日(日)
月祝休館
松濤美術館
詳細は公式サイトへ
https://shoto-museum.jp/exhibitions/195nara/
---おしらせ---
(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
早稲田大学オープンカレッジ
■空から映像で実感!寺社、古墳で解き明かす東京のナゾ
古代から近代まで歴史の痕跡を探る、バーチャルさんぽ
Google Earthで東京を俯瞰しながら、寺社古墳という「点」、街道、河川などの「線」の関係を手掛かりに、重層的な東京のなりたちを紹介します。
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/55034/
早稲田大学エクステンションセンター中野校にて
2.
宮澤やすみのバンド The Buttz(ザ・ブッツ)
2年半ぶりフル編成ライブ「復活祭」
4/28まで、ツイキャス配信にてどこからでも視聴可能です。
https://twitcasting.tv/greenappletokyo/shopcart/136386
4/9「大仏の日」に行なったライブの録画です。
3.
日本書紀を歌った新作MV「欣喜雀躍」宮澤やすみ アンド・ザ・ブッツ
宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/
4.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
神仏研究家・音楽家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。我がバンド、The Buttz(ザ・ブッツ)のライブは盛況のうちに終えることができました。各方面に感謝です。配信で当分の間観られますので今からでもぜひ。
さて、東京近辺の仏像ファンに朗報。渋谷の松濤美術館で奈良博の所蔵品を展示するという「SHIBUYAで仏教美術」展が始まりました。
写真は、報道内覧会で撮らせてもらったものです。
キーヴィジュアルは如意輪観音
仏像展示は2階の第二会場。
仏像本の表紙にもなっておなじみの如意輪観音がいました。肉感的な姿態は観心寺の像に次ぐ古さだそうです。
珠玉の仏像たちが並ぶ
奈良時代の金銅薬師如来もすばらしい出来でした。台座に垂れかかる衣文の美しさはとてもリアルで、華やかな天平の古典美を表しています。
何度も訪れた奈良博ですが、これは知らなかった。
《薬師如来坐像》銅造 奈良時代 8世紀 重要文化財 奈良国立博物館蔵
また、毘沙門天は、目ヂカラが強烈で印象的です。この像はかつて石清水八幡宮にあったことが墨書により分かっています。
今回の展示は、釈迦の教えから密教、浄土教という日本仏教の歴史をなぞるかたちになっていて、時代を追うごとに仏教そのものが変容していくようすが見て取れます。
毘沙門天に踏まれている邪鬼にも注目。かなり無理な姿勢
その中で興味深いのはやはり「神仏習合」で、その象徴的な展示が毘沙門天ではないでしょうか。
石清水八幡宮という神社に仏像があったわけですが、明治維新の前まではよくあることでした。
神社を管理するお寺(神宮寺とか別当寺という)が建ち、祭神の本体とされる仏像(本地仏)が祀られました。
八幡神の本地仏は阿弥陀如来なのですが、もしかしてその脇に毘沙門天が立っていたのか、今は知る由もありませんが、想像が膨らみます(おもに天台系の寺院では脇侍に毘沙門天と不動明王が並ぶ例もある)。
神仏習合関連ではほかに、春日神と本地仏を描いた曼荼羅や掛け仏などが展示されています。
このほかに目を引いたのは、密教法要で用いられる数々の法具です。
一見地味な竹筒に見える《転法輪筒》は、よく見ると五大明王が描かれています。
この筒に敵の名前か似顔絵などを入れて、強大な五大明王の力によって敵を呪殺するという、物騒な法要「転法輪法」に用いられていた法具です。
よく見ると怨念が籠っているようで怖い《転法輪筒》
拙著『仏像の光と闇』で書きましたが、密教の呪力がある種の兵器として用いられていた時代の遺物が、今では渋谷の閑静な住宅街に置かれていることがちょっと不思議な感覚です。
今回展示の白眉のひとつが国宝・牛皮華鬘(ごひけまん)。
牛皮に彩色した華鬘(堂内の荘厳具)は、1000年経った今でも鮮やかな色を残していて、しなやかな線描も目を見張るものがありました。ずっと眺めていたくなります。
繧繝(うんげん)彩色も確認できる貴重な《牛皮華鬘》
あれもこれも、仏像や寺社ファンなら興奮してやまず、友人と言ったらマニアトークが弾みそうな内容の濃い展示内容。展示数がそれほど多くないぶん短時間で観られて、帰りにカフェに寄る余力も残せます。
そんな中でも、もっとも濃ゆいといいますか、私としても一番目当てにしていたのが「僻邪絵」でした。
長くなったので、次週そのへんに触れたいと思います。
それでは聴いてください。
ジョージ・ハリスンで、「トライ・サム・バイ・サム」。
「SHIBUYAで仏教美術―奈良国立博物館コレクションより」
2022年4月9日(土)~2022年5月29日(日)
月祝休館
松濤美術館
詳細は公式サイトへ
https://shoto-museum.jp/exhibitions/195nara/
---おしらせ---
(おしらせ)本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
早稲田大学オープンカレッジ
■空から映像で実感!寺社、古墳で解き明かす東京のナゾ
古代から近代まで歴史の痕跡を探る、バーチャルさんぽ
Google Earthで東京を俯瞰しながら、寺社古墳という「点」、街道、河川などの「線」の関係を手掛かりに、重層的な東京のなりたちを紹介します。
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/55034/
早稲田大学エクステンションセンター中野校にて
2.
宮澤やすみのバンド The Buttz(ザ・ブッツ)
2年半ぶりフル編成ライブ「復活祭」
4/28まで、ツイキャス配信にてどこからでも視聴可能です。
https://twitcasting.tv/greenappletokyo/shopcart/136386
4/9「大仏の日」に行なったライブの録画です。
3.
日本書紀を歌った新作MV「欣喜雀躍」宮澤やすみ アンド・ザ・ブッツ
宮澤やすみYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/YasumiMiyazawa/
4.
宮澤やすみソロアルバム発売中
『SHAMISEN DYSTOPIA シャミセン・ディストピア』
購入は「やすみ直販」で
http://yasumimiyazawa.com/direct.html
(ネット決済のほか、銀行振込、郵便振替も対応)
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m