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第310回 特別公開!増上寺の三門内部で見た釈迦ワールド
”この連載で最近なかった、直球どまんなかのベーシック仏像話で--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。久しぶりに人前で仏像講座をやることになり、何年ぶりかでパワーポイントをいじっている宮澤やすみです。
そんな中、11月は仏像関連のイベントが盛りだくさんで、前々回は長野県諏訪の神仏プロジェクトを紹介しました。
いっぽう都内では、11年ぶりに増上寺の三門(正式には三解脱門)が公開されています。
増上寺の三解脱門は、都内に残る貴重な木造建築物
増上寺は、徳川家康が江戸の街づくりをするにあたって、徳川家の菩提寺として現在の芝の地に移転。伽藍が整備されました。
慶長16年(1611)には最初の三門ができ、元和8年(1622)に再建。そこから400年後の現在まで奇跡的に残っているという、江戸東京の重要な建造物です。
関東大震災や東京空襲もあったのに、本当によく残りましたね。
ものすごく急な階段をよじのぼって、楼上にあがると、仏像がずらり。
釈迦如来と文殊&普賢の美形菩薩お二方、さらに存在感たっぷりの十六羅漢たちというラインナップが迎えてくれます。
階段はかなり狭くて急こう配だが、上にあがると広い
仏像安置の基本形をひさしぶりに見た気がします。
釈迦三尊像。
中心の釈迦如来が「中尊(ちゅうそん:本尊)」で、両脇にいる仏像が「脇侍(わきじ、きょうじ)」。
写真をごらんください。こちらから見て左が普賢菩薩、右が文殊菩薩です。
増上寺三門の中心に安置される釈迦三尊像
普賢菩薩は白い象に乗っています。女人救済の信仰もある。
文殊菩薩は獅子に乗って、剣をもっています。ご存知智慧の菩薩。
とてもきらびやかで、整ったお顔立ち。
数ある仏像解説本にある特徴をちゃんと押さえたベーシックなお姿で、
仏像鑑賞初心者の方が学ぶにもぴったりの三尊像だと思います。
いやあ、この連載で最近あまりなかった、直球どまんなかのベーシック仏像話ですねえ笑。
たまにはいいですね。
十六羅漢の像も見ごたえあり
作者は、奈良・下御門(現在でいうと奈良観光エリア「もちいどのセンター街」の先)に拠点を置いていた「宗印」という仏師の一派とのこと。この宗印という人は慶派系統の仏師で、秀吉にも重用された安土桃山時代の名仏師です。
当代一流の仏師一門による造像が、災害や戦災のあった東京都心で、いまも現役で安置されているというのは奇跡的なことじゃないでしょうか。
羅漢は釈迦の弟子で、要するに人間の修行者ですが、たくさんいる弟子の中でトップクラスの16名のことです。なかには釈迦の息子もいます。
釈迦本人が涅槃の境地に入り現世から離れるとき、現世で仏法を正しく伝えていくことを託された16人です。
それだけの優秀な尊者たち。ひとりひとりなかなか濃ゆい個性を発揮しています。今回の特別公開プロジェクトでは、拝観者に羅漢のトレカがどれか一枚だけ配られます。
眉が長いと伝わる跋陀羅(ばたら)尊者。デフォルメが過ぎる
こうした釈迦と羅漢という取り合わせは、ふつうは禅宗寺院で観られるラインナップですよね。
増上寺は浄土宗だから、阿弥陀如来一択かと思いきや、ここでは趣がちがうのですね。
浄土宗の総本山である京都・知恩院でも禅宗様の巨大な三門がありますが、こちらの建設は増上寺再建の一年前、元和7年(1621)のことです。
内部はきらびやかな釈迦と羅漢の仏像群などが安置されて、やはり禅宗様の豪壮な世界観になってます。
禅宗の開祖、達磨大師は落ち着いたご様子
どちらも徳川幕府によるものですが、知恩院と増上寺で「東西浄土宗再開発プロジェクト」が同時並行的に進められたようですね。
このころ徳川幕府は二代目の徳川秀忠の時代。まだ江戸の街づくりも幕府自体も始まったばかりです。
政権基盤を盤石にするなか、その権威を東西に知らしめる効果もあったんでしょう。
ところで、増上寺は「江戸城の裏鬼門(南西)に位置するようこの地に移転した」とよく言われます。
でも、地図をみるとおかしいと思いませんか。「南西」というより、かなり南寄りなんですよね。
おかしいなあと思って、いろいろ調べて歩いてみて、少し見えたことがあって、今までトークショーや講座で話してきました。次回その話題をご紹介しますね。
それでは聴いてください。
レインボーで「バビロンの城門」。
特別公開 国指定重要文化財 三解脱門
令和4年10月1日(土)~11月27日(日)
火曜定休
10:00~16:00 (最終入場)
詳細は:
https://www.zojoji.or.jp/sangedatsumon/
---おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
古代史を歌った新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。久しぶりに人前で仏像講座をやることになり、何年ぶりかでパワーポイントをいじっている宮澤やすみです。
そんな中、11月は仏像関連のイベントが盛りだくさんで、前々回は長野県諏訪の神仏プロジェクトを紹介しました。
いっぽう都内では、11年ぶりに増上寺の三門(正式には三解脱門)が公開されています。
増上寺の三解脱門は、都内に残る貴重な木造建築物
増上寺は、徳川家康が江戸の街づくりをするにあたって、徳川家の菩提寺として現在の芝の地に移転。伽藍が整備されました。
慶長16年(1611)には最初の三門ができ、元和8年(1622)に再建。そこから400年後の現在まで奇跡的に残っているという、江戸東京の重要な建造物です。
関東大震災や東京空襲もあったのに、本当によく残りましたね。
ものすごく急な階段をよじのぼって、楼上にあがると、仏像がずらり。
釈迦如来と文殊&普賢の美形菩薩お二方、さらに存在感たっぷりの十六羅漢たちというラインナップが迎えてくれます。
階段はかなり狭くて急こう配だが、上にあがると広い
仏像安置の基本形をひさしぶりに見た気がします。
釈迦三尊像。
中心の釈迦如来が「中尊(ちゅうそん:本尊)」で、両脇にいる仏像が「脇侍(わきじ、きょうじ)」。
写真をごらんください。こちらから見て左が普賢菩薩、右が文殊菩薩です。
増上寺三門の中心に安置される釈迦三尊像
普賢菩薩は白い象に乗っています。女人救済の信仰もある。
文殊菩薩は獅子に乗って、剣をもっています。ご存知智慧の菩薩。
とてもきらびやかで、整ったお顔立ち。
数ある仏像解説本にある特徴をちゃんと押さえたベーシックなお姿で、
仏像鑑賞初心者の方が学ぶにもぴったりの三尊像だと思います。
いやあ、この連載で最近あまりなかった、直球どまんなかのベーシック仏像話ですねえ笑。
たまにはいいですね。
十六羅漢の像も見ごたえあり
作者は、奈良・下御門(現在でいうと奈良観光エリア「もちいどのセンター街」の先)に拠点を置いていた「宗印」という仏師の一派とのこと。この宗印という人は慶派系統の仏師で、秀吉にも重用された安土桃山時代の名仏師です。
当代一流の仏師一門による造像が、災害や戦災のあった東京都心で、いまも現役で安置されているというのは奇跡的なことじゃないでしょうか。
羅漢は釈迦の弟子で、要するに人間の修行者ですが、たくさんいる弟子の中でトップクラスの16名のことです。なかには釈迦の息子もいます。
釈迦本人が涅槃の境地に入り現世から離れるとき、現世で仏法を正しく伝えていくことを託された16人です。
それだけの優秀な尊者たち。ひとりひとりなかなか濃ゆい個性を発揮しています。今回の特別公開プロジェクトでは、拝観者に羅漢のトレカがどれか一枚だけ配られます。
眉が長いと伝わる跋陀羅(ばたら)尊者。デフォルメが過ぎる
こうした釈迦と羅漢という取り合わせは、ふつうは禅宗寺院で観られるラインナップですよね。
増上寺は浄土宗だから、阿弥陀如来一択かと思いきや、ここでは趣がちがうのですね。
浄土宗の総本山である京都・知恩院でも禅宗様の巨大な三門がありますが、こちらの建設は増上寺再建の一年前、元和7年(1621)のことです。
内部はきらびやかな釈迦と羅漢の仏像群などが安置されて、やはり禅宗様の豪壮な世界観になってます。
禅宗の開祖、達磨大師は落ち着いたご様子
どちらも徳川幕府によるものですが、知恩院と増上寺で「東西浄土宗再開発プロジェクト」が同時並行的に進められたようですね。
このころ徳川幕府は二代目の徳川秀忠の時代。まだ江戸の街づくりも幕府自体も始まったばかりです。
政権基盤を盤石にするなか、その権威を東西に知らしめる効果もあったんでしょう。
ところで、増上寺は「江戸城の裏鬼門(南西)に位置するようこの地に移転した」とよく言われます。
でも、地図をみるとおかしいと思いませんか。「南西」というより、かなり南寄りなんですよね。
おかしいなあと思って、いろいろ調べて歩いてみて、少し見えたことがあって、今までトークショーや講座で話してきました。次回その話題をご紹介しますね。
それでは聴いてください。
レインボーで「バビロンの城門」。
特別公開 国指定重要文化財 三解脱門
令和4年10月1日(土)~11月27日(日)
火曜定休
10:00~16:00 (最終入場)
詳細は:
https://www.zojoji.or.jp/sangedatsumon/
---おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
古代史を歌った新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m