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第311回 増上寺は本当に「江戸の裏鬼門」なのか?寺社と古墳のネットワーク

”海上の玄関口を古代には丸山古墳が、江戸期には東照宮と増上寺が睨みを効かせ--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。来月にヨーロッパ遠征を控えていて、その準備を始めている宮澤やすみです。三味線を持ってベルギーとドイツに行きます。

そんな中、都内では、11年ぶりに増上寺の三門が公開されていて、前回記事で紹介しました。

増上寺は浄土宗の大本山で、ご存じのとおり徳川家康によって徳川家の菩提寺とされ、歴代将軍が埋葬されているという江戸で屈指の重要なお寺です。


2017年撮影の増上寺本堂と東京タワー。長らくこの光景に馴染んでいたが、現在はタワーのすぐ横に麻布台ヒルズの巨大なビルが建つ

それで、ここからが今回の本題なんですけど、
よく、増上寺の立地は「江戸城の裏鬼門(南西)に位置するようこの地に移転した」と言われますが、実際は地図をみるとかなり南寄りに位置してるんですよね(下記画像参照)。
これで裏鬼門の方位と言えるのかな、と不思議に思っていました。

まあ、地形とか道路の都合とかで、厳密にぴったり南西方向!とこだわる必要もないんでしょう。
増上寺が現在の芝の地に移転するのは、江戸幕府が動き出す直前の慶長3年(1598年)のこと。
ちょうどこれから江戸の街を造ろうという時点で、増上寺は「なんとなく裏鬼門」的な意味合いもあったのかなと。

それにしても、です。
「なんとなく」の理由でこの地にわざわざ移転させるというのもどうも腑に落ちない。
それ以上にこの地を選ぶ決定打があったんじゃないかと思うわけです。

結論からいうと、そこにあったのは「古墳」です。

現在は増上寺の南側が芝公園になっていますが、そこも本来は増上寺の境内地で、そこには芝東照宮(徳川家康を祭神として祀る)と、その背後に芝丸山古墳があります。
この古墳が都内最大級とされてかなり立派なもの。


現在の芝公園はもともと増上寺の境内地。そこにあるのが芝丸山古墳

この芝丸山古墳を背にして、東照宮が建っていまして、まさしく古墳のパワーというか埋葬されている先人の豪族のお力を借りて、東照宮(=増上寺)の威光が増すような構造になっています。
上空写真でみると、増上寺の目の前が江戸湾が開けていて、海上の玄関口を古代には丸山古墳が、江戸期には東照宮と増上寺が睨みを効かせていたのでした。


東京タワーから撮影。広い増上寺境内。東照宮は丸山古墳を背にする格好でまっすぐ江戸湾の方を向いて建っている

いっぽう、「鬼門封じ」として知られるもう一つの寺院が上野の寛永寺なんですけど、そこにも古墳がいくつもあったそうで、現在も上野公園内には摺鉢山古墳が残っています。

この寛永寺も方角でいうと、正確な鬼門(東北)から少しだけずれていて「なんとなく鬼門」の位置になるんですよね。
それでもきっと、徳川家が江戸の町を開発するとき、古墳のあるところを大事な要としたんじゃないかなと思う次第です。

いっぽう、正確な方角に着目して鬼門/裏鬼門をさぐると、吉原/目黒がぴったりなんですよね。
吉原には鷲神社と長国寺があり、目黒には大鳥神社と目黒不動尊があります。
これ、どちらもヤマトタケル信仰でつながっていて、神仏混淆の世界観で江戸の両端を押さえています。
これらの話題は、この連載でだいぶ前に書いたはずなので、そちらをご参照くださいますか(下記”過去記事”リンク参照)。

なお、目黒には大円寺というお寺もあり、そこには大黒天が祀られ、上野の寛永寺の大黒天と対になって鬼門、裏鬼門の守護を司ったともいいますから、目黒は江戸の寺社を考えるとき欠かせない地域になります。


寛永寺、増上寺、大円寺(目黒)の位置関係。レイラインとして寛永寺と増上寺を線で結んでみても江戸城をはみだしてしまう


こうした話、ときどき早稲田大学オープンカレッジ中野校で話をしていますので、興味があったらご参加ください。
こんどの回は2月から全3回。吉原にかけて小唄の実演も交えてやらせていただきます!
【空から映像で実感! 地形と寺社で解き明かす東京のナゾ】
 早稲田大学エクステンションセンター中野校にて
 2023年2月4日土から全3回
 https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/57581/


それでは聴いてください。
ジョン・ゾーンで「Little Bittern」。



特別公開 国指定重要文化財 三解脱門
令和4年10月1日(土)~11月27日(日)
火曜定休
10:00~16:00 (最終入場)
詳細は:
https://www.zojoji.or.jp/sangedatsumon/


(過去記事)
目黒不動尊の裏にあるもの-その1
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20171104-2/

謎多き丑年の守り本尊:虚空蔵菩薩
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20210119-2/


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---おしらせ---

本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
古代史を歌った新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
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雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです

 収録曲:
 1.Fantastic Dystopia
 2.一木造
 3.Shami on The Water
 4.川のほとりで
 5.Benzai-Tennyo
 6.Black Etenraku
 7.北斗星
 8.いけるとこまで
 ほか、付録CDにボーナストラック




宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m