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第325回 芸術とエロの間で「ルーヴル美術館展 愛を描く」

”エロ?それってあなたの感想ですよね?--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。歯の治療中で硬いものが噛めず、カレーばっかり食べている宮澤やすみです。
そんな中、先日は国立新美術館で開幕した「ルーヴル美術館展 愛を描く」の報道内覧会に行ってきました。仏像仲間の久保沙里菜さん(フリーアナウンサー)も同行。
以下、写真は特別に許可を得て撮影しています。


国立新美術館にて開催

有名作家の名前とか、なんとか主義みたいなお題目が表に出てなく、作品の題材となる愛の物語を味わうかたちで展示が進みます。

アンバサダーの満島ひかりさんが、インタビューで「裸が多いですね(笑)」とコメントされてましたように、展示のどこを見ても男女の美しい裸体がずらり。

たとえば、神話の世界を描いた作品は、もう略奪や不義といった現代では炎上案件の物語ばかりです。まあ神話って日本でも似たようなものですよね。


ヴィーナスの不貞の現場を夫ウルカヌス(画面右)が押さえた図。ルイ=ジャン=フランソワ・ラグルネ(兄)《ウルカヌスに驚かされるマルスとヴィーナス》1768年

キリスト教関連の作品では、聖母子など理想的な家族愛。ただし禁欲が続くとその反動でまた奔放な性愛が描かれます。
オランダ絵画では、プロの女を買う兵士とあっせん役の婆さんの絵もあり、まずそれを描こうとした動機を知りたい。

家族愛でも、年老いた父キモンと娘ペロの絵画は、話を知らないとなかなかスキャンダラスなものかと思います。


若い女性のおっぱいを吸うじいさん。これは獄中で食事を断たれた父に、娘がこっそりと母乳を与えるという「親孝行」の絵なのです。シャルル・メラン《ローマの慈愛》または《キモンとペロ》1628-1630年頃

同行した久保沙里菜さん、女子高時代の授業でこの話を聞き「クラス中大ブーイングだった(笑)」といい、日本の女子高生には受け入れがたいエピソードのようです。
ただ、ヨーロッパ絵画史ではこの題材は流行し、巨匠ルーベンスも大きく描いています。
そういえば、2010年の映画「エッセンシャル・キリング」でも、瀕死の逃亡者(ヴィンセント・ギャロ)が通りかかった女性の母乳を吸って命をつなぐシーンがありました。あれってこのエピソードがモチーフになっているんでしょうか。

そんなこんなで、身もフタもない言い方で恐縮ですが、この展覧会は、おっぱいと乳首のオンパレードです。

昨今のインターネットでは、SNSに乳首映像を載せるのは禁止されています。
でも、今回のような絵画作品をネットに上げる場合、乳首丸出しでもOKらしいですね。

今回の絵画は200~400年前の古典主義的な作品が多いんですが、ここでいう”古典”はギリシャ・ローマ美術のこと。そこで手本としたのは人体のヌードでして、人体こそ美の極致という考え方が、西洋美術にはあります。


アリ・シェフェール《ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊》を鑑賞する久保沙里菜さん

その考え方が根底にあるからエロ目的ではない、というエクスキューズが成り立つんですね。
まあ当時も、エロ目的でヌード絵を注文する人もいたみたいですけど。表向きはあくまでも美の極致だと。

作品を前にして、エロだと思うのは見る側の感性によるところもあります。
自分の例で恐縮ですが、私が作詞作曲した「寄木造」という曲のミュージックビデオを作りまして、仏像の映像使用許可を得て作品を作ったら、最後の最後で
「エロには協力できない」
と言われました。
は?エロ?それってあなたの感想ですよね? とひろゆき氏みたいなことを言いそうになりました(言わなかったけど)。
そのミュージックビデオは、「寄木造」の例として三味線を組み立てる映像を全編に使用しているもので、そこに仏像の写真も織り込もうとしました。
「三味線の組み立て」がなぜ「エロ」と判断されたのか?問題の映像をごらんください。
(もちろんYoutubeからはお咎めナシです)

The Buttz「寄木造」


メンバーの蒼兎一美による演技は妖艶です。
それから、歌詞の内容も、”心のきれいな人は寄木造の技法を理解し、そうでない人は男女和合を想起させる”としており、裸の王様みたいな設定で鑑賞者の判断にゆだねています。

見る人が勝手にエロ解釈してしまうのであって、作り手はもっと崇高な意図があったのだというエクスキューズは、今回の「愛を描く」作品にもあったことでしょう。
きっと何百年もの間繰り返されてきた解釈論なんだろうなと思った次第です。

私の「寄木造」の例だと、最終的に、三味線の映像だけにすることで完成度が高まったので、かえって良かったと思っています。

このように、「芸術」と「エロ」の問題はややこしいのですが、要は観賞する側がどう受け止めるかというところがカギなのではと思います。

まあその、私の場合も、かつてラジオでさんざん「セクシー仏像」とか「エロ弁財天」を語ってきましたしね。
逆に、エロ目的なはずのストリップが、じつは非常に芸術性の高いアートパフォーマンスだったりしますし(私も三味線伴奏で何度も上演参加しました)、なんかもうよくわかんないです。


ミュージアムグッズではすみっコぐらしとコラボ

今回は、作品の題材となった物語を味わうことで、愛欲、肉欲、母性愛、家族愛、淡い初恋など、さまざまな愛をひっくるめて感じられますので、絵の美しさの背後にある「愛の感覚」を味わいに行ってみてはいかがでしょうか。

 
それでは聴いてください。
松崎しげるで「愛のメモリー」。




ルーヴル美術館展 愛を描く
2023年3月1日(水)-6月12日(月)
毎週火曜休館(3/21と5/2は開館し3/22休館)
国立新美術館 企画展示室1E
詳細
https://www.ntv.co.jp/love_louvre/



---おしらせ---

本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

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 2.一木造
 3.Shami on The Water
 4.川のほとりで
 5.Benzai-Tennyo
 6.Black Etenraku
 7.北斗星
 8.いけるとこまで
 ほか、付録CDにボーナストラック




宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m