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第324回 諏訪・神仏の旅⑩ 今も現役の昭和モダン建築・片倉館

”産業は廃れてしまいましたが、文化は後世に残る--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。近所の歯医者に行ったら自分史上最高に痛い思いをして、診察台で足ばたつかせて悶絶するという貴重な体験をした宮澤やすみです。担当医さんがホラー映画に出てくるマッドサイエンティストに見えました。

そんな中、ここでは長野・諏訪の旅を続けて書いております。


二社四宮ある諏訪大社のうち、上社本宮を訪れています

話はいよいよ諏訪大社の謎の真相へ!というところですが、
その前に、諏訪のもうひとつの顔をご紹介します。

国指定の重要文化財は、なにも神社仏閣だけではありません。
ここ、上諏訪の片倉館は、昭和3年竣工の重要文化財建築です。


片倉館の「千人風呂」はこの中に

ゴシック、ロマネスクといったヨーロッパの古典建築を彷彿させる「ゴシックリバイバル」様式。
いわれてみると、昔イタリアのミラノで訪れた古い教会を思い出します。
これほどの建物が、昭和初期から諏訪湖畔のランドマークになっているのです。


SNSに「イタリア旅行中」と投稿しても疑われない?建築。2階テラスから

だいたいこういう建物は、偉い人の邸宅で一般人は入れないというパターンがありますが、片倉館がすごいのは、当初から諏訪の庶民の社交場という目的で建てられたことなんです。しかも現在も現役で利用できる。

右には温泉大浴場。
社交場がある会館棟は見学ができます(ガイド付きは要予約)。


片倉館の会館棟を見学

そこは、昭和のモダン洋館建築の粋が集まる夢の空間。
巨大な蓄音機もあって、当時のにぎわいが偲ばれます。


蓄音機の音は意外にもリアルで臨場感のある音です。これだけ巨大なホーンは初めて見ました。大きな音が出たことでしょう

二階の大広間は204畳で舞台も付くしつらえ。
わたくしも、ぜひ三味線ライブか活動写真上演で使わせていただきたい。
ここで思い切り歌ったら気持ちいいだろうなあ。


片倉館の大広間。ここは和風空間

しかも、温泉施設も充実しているんだからもうすごいことです。
もちろん入ってきました。
浴室は映画「テルマエ・ロマエ」そのもの(実際は設定時代が異なりますが)。
と思ったら、実際『テルマエ・ロマエⅡ』のロケ地なんだそうです。
深い浴槽に立って入るかたちで、浴槽の下に黒い石が敷き詰められほどよく足の裏を刺激。
お湯は上諏訪の源泉。
たまりません。

温泉に癒され、広間で宴会。90年前の諏訪の市民は、こんなに文化度が高い社交をしていたんですね。


重厚な階段は無性に上がりたくなる

片倉館を造ったのは、諏訪の地で絹織物産業で財をなした片倉財閥。
初代が明治6年(1873)に岡谷市で製糸業を興し、二代目のときにはもう片倉財閥が形作られ「シルクエンペラー」と呼ばれました。


繭から生糸を取り出す「ざぐり機」

この二代目片倉兼太郎が、ヨーロッパ視察旅行に出て、地域の人の厚生施設が充実しているようすに感銘を受け、地元に片倉館を建てたというのが経緯です。

「住民のための温泉、社交、娯楽、文化向上を目的とし」

と、片倉館WEBサイトにあります。すばらしい。
やっぱり、本物のお金持ちはお金の使い方が粋じゃありませんか。
こういう振る舞いをしてくれる人が、我々のような音楽家、芸術家のパトロンにもなって、文化が醸成していくわけです。
令和の今でも、誰かわたくしのパトロンになってほしい。

話が逸れました。

三代目のころ昭和14年(1939)には、あの世界遺産・富岡製糸場を買い取って経営をしたというから、いよいよ財閥も絶頂期でしょうか。


建設当初から付いている、クリスタルガラスのドアノブ

家訓として「売らない、貸さない、壊さない」という言葉があるそうで、おかげで富岡製糸場も片倉館もすばらしい保存状態のまま現代に受け継がれているのでした。

絹糸の産業は廃れてしまいましたが、文化は後世に残る。
片倉さんの文化への投資は間違ってなかったですね。

令和の今も、わたくしのような零細三味線芸人、さらには活動写真界隈などに投資してくださる人、大歓迎ですよ(また話が逸れました)。


それでは聴いてください。
山田参助とG.C.R.管絃楽団で「大土蔵録音2020」。
(わたくし三味線とギターで参加しています)



片倉館Webサイト
http://www.katakurakan.or.jp/about_us/

(過去記事)
諏訪大社ゆかりの仏像一斉公開「諏訪神仏プロジェクト」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221101-2/

諏訪・神仏の旅① 「万治の石仏」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221129-2/

諏訪・神仏の旅② 諏訪大社の本地仏-普賢と千手観音
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221206-2/

諏訪・神仏の旅③ 諏訪大社ゆかりの仏像たち
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230110-2/

諏訪・神仏の旅④ 諏訪大社ゆかりの仏像たち-その2-
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230117-2/

諏訪・神仏の旅⑤ 諏訪大社ゆかりの仏像たち-その3-
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230124-2/

諏訪・神仏の旅⑥ 諏訪大社のご神体がお寺にあった
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230131-2/

諏訪・神仏の旅⑦ 諏訪の地酒めぐりと八剱神社
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230207-2/

諏訪・神仏の旅⑧ ”ターミネーター”と戦った神
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230214-2/

諏訪・神仏の旅⑨ 御柱が護る磐座をさがせ
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230221-2/


---おしらせ---

本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
宮澤やすみライブ出演情報、随時更新しています。
http://yasumimiyazawa.com/live.html


2.
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 1.Fantastic Dystopia
 2.一木造
 3.Shami on The Water
 4.川のほとりで
 5.Benzai-Tennyo
 6.Black Etenraku
 7.北斗星
 8.いけるとこまで
 ほか、付録CDにボーナストラック




宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m