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第323回 諏訪・神仏の旅⑨ 御柱が護る磐座をさがせ

”この石がこの諏訪大社上社の核になる--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。早稲田大学の社会人講座で、講義後に三味線弾き歌いのコーナーも設けている宮澤やすみです。いよいよしゃべって歌うキャラが定着しつつあります。

そんな中、ここでは長野・諏訪の旅を続けて書いております。


二社四宮ある諏訪大社のうち、上社本宮を訪れています

前回記事にも書きましたが、諏訪大社では、ふつうご神体を祀るはずの「本殿」が存在しないスタイルの神社です。

本殿があるはずの場所に何があるかというと、神仏習合時代にはご神体として「お鉄塔」と呼ばれる仏塔がありました(このシリーズ⑥参照)。
現在は杉の大木が依代になっているといいます。
どうやら時代によっていろいろあるみたいです。

さて、一般の参拝者としてふらりと訪れたわたくし、
参拝所からかつて仏塔があった空間に向かって拝礼した後、参拝エリアの脇にのびる立派な回廊を歩いてみました。「布橋」といいます。


参拝所横にある「布橋」を進んでみます

じつは、現在の参拝順路は本来と逆向きでして、この布橋の向こうに本来の参拝入り口(東参道)があるのでした。


東参道からの入り口には立派な入口御門が建つ。国指定重要文化財

現在はバス停留所とかの都合で、布橋の出口にあたる北参道から境内に入るのが普通になっています。
ざっくりと境内図描いたので参考にしてください。ざっくりがすぎる手描きですけどね。


紫が古来の参拝ルート。緑が現在の参拝ルート。画面下方が北なので東西も逆になる

その布橋の途中にある立派な建物が「東宝殿」「西宝殿」という建物です。
諏訪大社公式サイトによると、「本宮で最も大切な御社殿」で、寅年と申年、つまり有名な御柱祭と同じタイミングで建替えされるとのこと。
もしかして、ここに本当の御神体、タケミナカタとヤサカトメをお祀りしているのでは? と思ってしまいました。


東宝殿、西宝殿(画面右手前)に挟まれるように建つ四脚門

そして、このふたつの建物の間に、簡素でいて威厳を感じる「四脚門」という門があります。読み方は、文化庁HPでは「しきゃくもん」とあるけど境内の案内には「よつあしもん」とあります。
ともかく、ここに立つと幣拝殿を横から見るかたちになるんですね。

さっきお参りした幣拝殿が左端に見えて、正面には山の斜面があるんですけど、もしかしてこれが昔の(本来の)参拝方向だったりするんでしょうか。

奈良の春日大社でも、社殿の側面にそびえる春日山を拝むかたちになっていたので、それと同じ構造なのかなと。


四脚門の脇からのぞいた光景。左の建物が幣拝殿。その奥に見えるのが……

と思ったら、四脚門から見える先に、苔むした大きな岩があるではないですか。柵に囲まれて結界を張られているかのようです。

上面の凹みに水がたまることから「硯石(すずりいし)」というそうですが、硯にしてはかなり大きすぎる巨人サイズです。

要するに、これが神が降りる磐座なのでした。


画面奥の台形の岩が「硯石」と呼ばれる磐座

鎌倉時代の神楽歌にも、
 明神は 石の御座所に おりたまふ 
  みすふきあげの 風のすすみに

と唄われ、この硯石がこの諏訪大社上社の核になるものなのでした。

だったら、幣拝殿もこの石を背にして建てたらよかったのに…と思うのですが、ちがうんですね。


動画で位置関係が分かりやすいです(17秒)。布橋から西宝殿ごしに四脚門とその先の硯石を見る

解説によると、この四脚門は特別な門で、特別な人しか通ることができませんでした。
それが、大祝(おおほうり)という神職でして、境内の看板の説明書きがちょっとワクワクする文面で、引用します。

--この門はかつては大祝(祭神の子孫であり神を顕現する者)だけが最上段の硯石と呼ばれる磐座へ登って行った門である)--

こういう文面は、神社や古代史ファンの琴線に触れるものですね。仏像ファンにも響くといいのですが。

諏訪を象徴する立派な御柱も、この硯石を中心とした四隅に立てられています。
仏像ファン向けに言うと、硯石がご本尊、四本の御柱が四天王という位置取りですね。

さっきのざっくり境内図で整理いたしましょう。この神社では、
①磐座と御柱による原初的な祭祀形態と、
②参拝所、幣拝殿とお鉄塔による中世の祭祀形態
が同時に存在しているかたち、と言えるでしょうか。


赤いルートが磐座に向かう参拝方向

現在の境内は織田信長による焼討後の再建なので、そのころには参拝のかたちが変わっていたようです。
非常に古い神社ですから、長い時間でその時々の人々の考えによって形を変えてきた、その様子が見て取れる興味深い境内だなと思いました。


四脚門から振り向くと神楽殿がある。つまり磐座参拝の軸線に建つ

しかし、磐座への参拝からなぜ参拝の方向が変わったんでしょう。そして、大祝ってなんなんでしょう?

いやあ、諏訪大社の信仰は謎が多くてですね…
うかつに手を出すと大変な目に合うという、このシリーズもどうなっちゃうんでしょう。

ナゾがナゾを生む諏訪の信仰世界。もう少しおつきあいください。

それでは聴いてください。
AC/DC で「ロック魂(Let There Be Rock)」。



諏訪大社上社本宮 四脚門-文化遺産オンライン(文化庁)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/144648


(過去記事)
諏訪大社ゆかりの仏像一斉公開「諏訪神仏プロジェクト」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221101-2/

諏訪・神仏の旅① 「万治の石仏」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221129-2/

諏訪・神仏の旅② 諏訪大社の本地仏-普賢と千手観音
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221206-2/

諏訪・神仏の旅③ 諏訪大社ゆかりの仏像たち
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230110-2/

諏訪・神仏の旅④ 諏訪大社ゆかりの仏像たち-その2-
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230117-2/

諏訪・神仏の旅⑤ 諏訪大社ゆかりの仏像たち-その3-
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230124-2/

諏訪・神仏の旅⑥ 諏訪大社のご神体がお寺にあった
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230131-2/

諏訪・神仏の旅⑦ 諏訪の地酒めぐりと八剱神社
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230207-2/

諏訪・神仏の旅⑧ ”ターミネーター”と戦った神
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230214-2/

---おしらせ---

本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

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宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m