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第337回 謎めく星の信仰–諏訪・仏法紹隆寺の北斗曼荼羅 その2

”お星さまと仏さまが結びついて、なにやらフシギ世界が展開されて--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。今週も活動写真上映の生伴奏にむけて、上映予定の作品をチェックしている宮澤やすみです。昭和6年の時代劇映画に、三味線で生演奏を付けます。

そんな中、諏訪・仏法紹隆寺さん所蔵の不思議な曼荼羅「北斗曼荼羅」をご紹介しています。

「北斗曼荼羅」と呼ばれるこの掛け軸。
真ん中に大きく描かれた如来を中心に、菩薩形や天部形、または謎のアイテムなど、ぜんぶで59の仏尊が描かれています。


修復が急がれクラウドファンディング募集中。仏法紹隆寺の北斗曼荼羅

真ん中のご本尊も気になりますが、その前に周辺部からみていきましょう。

曼荼羅の一番外側、赤い縁に描かれるのは二十八宿(しゅく)といいます。

基本的にこの曼荼羅は、天の星を神格化した星信仰を表したものです。
星に神(仏)が住むとされて信仰の対象になりました。


赤いエリアに描かれているのが二十八宿

さて二十八宿ですが、月の動きにもとづいて空を28のエリアに分割、そのエリアにある星座を神格化したものです。
ざっくりとした話、天体の動きと二十八宿の位置関係をもとにして、暦の計算や吉凶の占いをしたそうです。

その次の緑のエリアにあるのが、この北斗曼荼羅の大きな特徴なんですけど、十二宮といって、西洋占星術の星座なんですよね。
我々がなじみ深い、おうし座、やぎ座、てんびん座といった、あの12星座です。
描かれた図像も、牛とか蟹とかふたごの姿とか、わかりやすく描かれているんですよね。


緑色のエリアにあるのが、十二宮のうち水瓶座

北斗曼荼羅ではよくある図像らしいですが、このような「東洋の神秘満載」といった曼荼羅に、西洋の星座が描かれるとは知りませんでした。

古代バビロニア由来の十二宮は、ギリシャからヨーロッパへ伝来するとともに、
インドから中国へも伝わり、密教といっしょに日本にも伝わったそうです。
平安時代には伝わっていたそうだから、わりと古くからあったんですね。
図像は西洋の星座とほとんど同じですが、若干東洋的アレンジもあるようです。

仏法紹隆寺がある諏訪の地では空海ゆかりの真言密教が浸透し、諏訪大社の信仰と合わせて発展してきました。
密教は、東洋占星術や道教的な信仰も取り入れて呪術的な祈祷を行ってきた歴史がありまして、もう仏教とひとくちに言えない、世界のスピリチュアル要素大集合!みたいな世界観があるんですよね。

その「大集合!」のなかには西洋占星術(正確には、西洋由来の星座を東洋的解釈で描いたもの)も加えられているということですね。
こうした真言密教の神秘世界は、平安貴族や武士に受け入れられ、絶大な信頼を得たのでした。
やっぱり「海の向こうからやってきた」というものには、弱いものですね。

各地に北斗曼荼羅は存在しますが、宝永年間つまり今から300年前に描かれたものがそのまま残っているのは貴重なことなんじゃないでしょうか。

さて、曼荼羅の内陣には、七曜、北斗七星、北極星という、星信仰の代表選手が描かれます。
それぞれの丸の中に仏が描かれています。密教の曼荼羅ですから、なんでも仏で表現するわけです。
星宿信仰と密教の神仏習合ということですね。

七曜も北斗七星もひとつひとつに意味と名前があるんですが、対応する仏の姿は曼荼羅によってまちまちなんですよね。
よく知られているのは北極星に住むとされる妙見菩薩という仏尊で、これは各地のお寺にも祀られていたりします。

今回の北斗曼荼羅では、北斗七星の第7星である「破軍星」に、不動明王のような姿が描かれています(下の画像参照)。
破軍星に不動明王を当てる例って、聞いたことないですけど? どうなんでしょうか?
ちょっとすぐに分かる話ではありません。
こういうことは、専門家の研究成果を待つことにしましょう。

中心の本尊は一字金輪仏頂尊という、すべてを超越した密教世界の頂点だそうです(一字金輪にも各種あって、これは釈迦の姿で描かれる釈迦金輪)。こうなるともう、我々一般人には到底わかりえない存在ですね。


中尊の一字金輪仏頂の右側に、赤い身体の明王風の尊格が見える。剣をもっているようだがその尊名は不明。一字金輪の上にいるのが北極星=妙見菩薩だろうか

お星さまと仏さまが結びついて、なにやらフシギ世界が展開されている、それが北斗曼荼羅を謎めいた存在にしていて、私のような一介のミュージシャンが気軽に言及しちゃっても大丈夫なんだろうか…、という気持ちになりました。

密教の「密」は「秘密」の密。
ヒミツを知ったとたん、消されちゃったりして(笑)。
まあ今後の研究はプロにおまかせしましょう。

先ほどの明王風尊像?などのヒミツを解き明かすためにも、この北斗曼荼羅は修復が急がれます。
貴重な曼荼羅を後世に残し、研究を進めてもらうためのクラウドファンディングがスタートしています。
金額いろいろあるので、皆さんも歴史遺産を未来に伝えるサポーターになってみてはいかがでしょうか。


クラウドファンディング READYFOR
【諏訪・仏法紹隆寺|北斗曼荼羅保存修復事業、日本文化の遺産を未来へ】
 https://readyfor.jp/projects/buppouji


それでは聴いてください。
ティナ・ターナー with デヴィッド・ボウイで「トゥナイト」(1988 LIVE)。




---おしらせ---

本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

1.
宮澤やすみ出演
【カツベン映画祭】
2023年6月2日(金)
人気活動弁士・坂本頼光&宮澤やすみ(三味線)で、
昭和6年の痛快時代劇を上映
詳細↓
https://filmfest.musashino-k.co.jp/movies/6635/



2.
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 収録曲:
 1.Fantastic Dystopia
 2.一木造
 3.Shami on The Water
 4.川のほとりで
 5.Benzai-Tennyo
 6.Black Etenraku
 7.北斗星
 8.いけるとこまで
 ほか、付録CDにボーナストラック




宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m