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第336回 謎めく星の信仰–諏訪・仏法紹隆寺の北斗曼荼羅 その１
”北斗曼荼羅は、星信仰の世界観を凝縮したもの－－”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。活動写真上映の生伴奏にむけて、上映予定の作品をチェックしている宮澤やすみです。昭和初期の時代劇とチャップリンと古いアニメ（当時は切り絵で作ってた！）に、三味線で生演奏を付けます。
そんな中、この「仏像ブツブツ」で12回にわたって書いてきた諏訪の信仰の話。
取材でお世話になった現地の大きなお寺・仏法紹隆寺さんには不思議な曼荼羅があります。
ご住職の岩崎宥全さんにお話をうかがいました。
「北斗曼荼羅」と呼ばれるこの掛け軸。
真ん中に大きく描かれた如来を中心に、菩薩形や天部形、または謎のアイテムなど、ぜんぶで59の仏尊が描かれています。
これは、古代中国から伝わる古い東洋占星術をもとに、星や星座を神格化して、それらを密教の仏の姿で描いたものです。
星を意味する円の中に仏が坐す。写真提供：仏法紹隆寺
災厄を除く修法に用いられた北斗曼荼羅ですが、仏法紹隆寺では地元諏訪の高島藩主の祈祷に使われていたそうです。
高島藩主を代々務めた諏訪氏は、我々神仏ファンには興味深い存在でして、ただのお殿様じゃなくて、諏訪大社の神職も兼ねていたんですよね。
中世には、大社の信仰に密教を混ぜた祈祷法をあみだしていたそうです。神仏習合ファンはこういう話が大好物なのです。
諏訪大社の本地仏・普賢菩薩。明治の神仏分離に際して仏法紹隆寺に移された
ただ、この北斗曼荼羅が描かれたのは宝永年間（1700年代初頭）だそうで、このころは藩主と神職で別々の家系になって、政教分離していたはずです。
それでも、藩主として諏訪の安寧を祈る祈祷は行われ、仏法紹隆寺が密教の形で担っていたということですね。
我々になじみ深い西洋の星座も「十二宮」として描かれている。詳細は次回
描いたのは法橋隆栄という仏師で、この人の両界曼荼羅が半蔵門ミュージアムに所蔵されています。しかし、北斗曼荼羅も描いていたとは知られず、仏法紹隆寺の曼荼羅は新発見となります。
「醍醐寺で描かれた可能性が高い」そうで、真言密教の総本山での大事な資料になると思われます。
北斗曼荼羅は、星信仰の世界観を凝縮したもの。
中国の道教からインドさらに古代バビロニアまで源流をたどる星の信仰がベースにあって、もう仏教だけでは語り切れない、というか仏教という言葉がいかにあいまいな境界線をもつものか、を思い知らされるきっかけになるものです。
神仏習合の形態をいまに残す諏訪の地で、この北斗曼荼羅の存在は非常に重要ですし、全国レベルでも貴重なものだと思います。
しかし、年月を経てかなり痛みがあるそうで、仏法紹隆寺では、修復費用を捻出するためのクラウドファンディングを開始しました。
毎回の祈祷で使い込まれたのか、現在は痛みが目立つ
貴重な曼荼羅を後世に残し、研究を進めてもらうためにも、修復が実現してほしいものです。
金額いろいろあるので、皆さんも歴史遺産を未来に伝えるサポーターになってみてはいかがでしょうか。
クラウドファンディング READYFOR
【諏訪・仏法紹隆寺｜北斗曼荼羅保存修復事業、日本文化の遺産を未来へ】
https://readyfor.jp/projects/buppouji
北斗曼荼羅に描かれた神仏と星信仰。この話はかなりややこしいので、うかつに手を出すと大変なのです（諏訪信仰自体が大変なテーマでしたが）。
でも、できる範囲で、次回以降ざっくりみていきましょうかね。あくまでもざっくりとね。
それでは聴いてください。
サラ・ヴォーンで「スワンダフル（S'Wonderful）」。
（過去記事）
諏訪大社ゆかりの仏像一斉公開「諏訪神仏プロジェクト」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221101-2/
諏訪・神仏の旅⑤ 諏訪大社ゆかりの仏像たち－その３－
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230124-2/
---おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
１．
宮澤やすみ 三味線ライブ
【三味線と映像で楽しむひととき】
小唄ステージの他、
活動写真の上映も、三味線で生伴奏をつけます。
入場無料です。どなたもお気軽に。
2023年5月27日（土）
18:00開場 18:30開演
渋谷・地域振興センター大向B1 文化ふれあい広場
詳細 http://yasumimiyazawa.com/live.html
２．
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです（CDも付いてます）。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲：
１．Fantastic Dystopia
２．一木造
３．Shami on The Water
４．川のほとりで
５．Benzai-Tennyo
６．Black Etenraku
７．北斗星
８．いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト：http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター：https://twitter.com/yasumi_m
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。活動写真上映の生伴奏にむけて、上映予定の作品をチェックしている宮澤やすみです。昭和初期の時代劇とチャップリンと古いアニメ（当時は切り絵で作ってた！）に、三味線で生演奏を付けます。
そんな中、この「仏像ブツブツ」で12回にわたって書いてきた諏訪の信仰の話。
取材でお世話になった現地の大きなお寺・仏法紹隆寺さんには不思議な曼荼羅があります。
ご住職の岩崎宥全さんにお話をうかがいました。
「北斗曼荼羅」と呼ばれるこの掛け軸。
真ん中に大きく描かれた如来を中心に、菩薩形や天部形、または謎のアイテムなど、ぜんぶで59の仏尊が描かれています。
これは、古代中国から伝わる古い東洋占星術をもとに、星や星座を神格化して、それらを密教の仏の姿で描いたものです。
星を意味する円の中に仏が坐す。写真提供：仏法紹隆寺
災厄を除く修法に用いられた北斗曼荼羅ですが、仏法紹隆寺では地元諏訪の高島藩主の祈祷に使われていたそうです。
高島藩主を代々務めた諏訪氏は、我々神仏ファンには興味深い存在でして、ただのお殿様じゃなくて、諏訪大社の神職も兼ねていたんですよね。
中世には、大社の信仰に密教を混ぜた祈祷法をあみだしていたそうです。神仏習合ファンはこういう話が大好物なのです。
諏訪大社の本地仏・普賢菩薩。明治の神仏分離に際して仏法紹隆寺に移された
ただ、この北斗曼荼羅が描かれたのは宝永年間（1700年代初頭）だそうで、このころは藩主と神職で別々の家系になって、政教分離していたはずです。
それでも、藩主として諏訪の安寧を祈る祈祷は行われ、仏法紹隆寺が密教の形で担っていたということですね。
我々になじみ深い西洋の星座も「十二宮」として描かれている。詳細は次回
描いたのは法橋隆栄という仏師で、この人の両界曼荼羅が半蔵門ミュージアムに所蔵されています。しかし、北斗曼荼羅も描いていたとは知られず、仏法紹隆寺の曼荼羅は新発見となります。
「醍醐寺で描かれた可能性が高い」そうで、真言密教の総本山での大事な資料になると思われます。
北斗曼荼羅は、星信仰の世界観を凝縮したもの。
中国の道教からインドさらに古代バビロニアまで源流をたどる星の信仰がベースにあって、もう仏教だけでは語り切れない、というか仏教という言葉がいかにあいまいな境界線をもつものか、を思い知らされるきっかけになるものです。
神仏習合の形態をいまに残す諏訪の地で、この北斗曼荼羅の存在は非常に重要ですし、全国レベルでも貴重なものだと思います。
しかし、年月を経てかなり痛みがあるそうで、仏法紹隆寺では、修復費用を捻出するためのクラウドファンディングを開始しました。
毎回の祈祷で使い込まれたのか、現在は痛みが目立つ
貴重な曼荼羅を後世に残し、研究を進めてもらうためにも、修復が実現してほしいものです。
金額いろいろあるので、皆さんも歴史遺産を未来に伝えるサポーターになってみてはいかがでしょうか。
クラウドファンディング READYFOR
【諏訪・仏法紹隆寺｜北斗曼荼羅保存修復事業、日本文化の遺産を未来へ】
https://readyfor.jp/projects/buppouji
北斗曼荼羅に描かれた神仏と星信仰。この話はかなりややこしいので、うかつに手を出すと大変なのです（諏訪信仰自体が大変なテーマでしたが）。
でも、できる範囲で、次回以降ざっくりみていきましょうかね。あくまでもざっくりとね。
それでは聴いてください。
サラ・ヴォーンで「スワンダフル（S'Wonderful）」。
（過去記事）
諏訪大社ゆかりの仏像一斉公開「諏訪神仏プロジェクト」
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20221101-2/
諏訪・神仏の旅⑤ 諏訪大社ゆかりの仏像たち－その３－
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230124-2/
---おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
１．
宮澤やすみ 三味線ライブ
【三味線と映像で楽しむひととき】
小唄ステージの他、
活動写真の上映も、三味線で生伴奏をつけます。
入場無料です。どなたもお気軽に。
2023年5月27日（土）
18:00開場 18:30開演
渋谷・地域振興センター大向B1 文化ふれあい広場
詳細 http://yasumimiyazawa.com/live.html
２．
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです（CDも付いてます）。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲：
１．Fantastic Dystopia
２．一木造
３．Shami on The Water
４．川のほとりで
５．Benzai-Tennyo
６．Black Etenraku
７．北斗星
８．いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト：http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター：https://twitter.com/yasumi_m
