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第343回 東京ディープエリアに潜む女神・歌舞伎町弁財天
”「おまえの生き様を、見ているぞ」と言うかのような--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。宮澤やすみ一門の演奏会「小唄 in 神楽坂」が10月29日に決定しました。おかげさまで20回、つまり20周年です。我ながらよく続いた。
そんな中、先日は東京・新宿歌舞伎町にいってきました。
TOHOシネマズのゴジラ、東急の歌舞伎町タワーが話題ですが、そこじゃなくて、路地に入った先の小さな公園です。
歌舞伎町公園といって、町の児童公園ほどの広場ですが、ここは弁財天が祀られる歌舞伎町でも由緒ある場所なのです。
歌舞伎町公園の弁財天堂。新宿空襲の際、地元有志が本尊を退避。弁天堂は戦後に復興された
弁財天は、音楽、弁舌、豊穣、商売繁盛といったご利益があり、私のようなミュージシャン兼文筆家でたまにテレビやラジオでしゃべるという個人事業者にうってつけのお方です。
インドの川の神サラスヴァティ―を原型とする女神は仏教の守護神「弁才天」であり、日本では宇賀神という蛇の姿の神と習合して、神社でもお寺でも祀られてきました(明治以降神社の弁財天は姿を消しますが)。
もともと川の神だから、沼の淵をうごめく蛇と相性がよかったんでしょうか。
歌舞伎町公園の弁財天も、とぐろを巻いた宇賀神(蛇神)を頭に載せた姿をしています。
新宿観光振興協会のWebサイトで写真が見られます(記事末URL参照)。
お社前の石碑は、琵琶をもった女性の姿で表現。ちなみに江島神社では琵琶の他は一糸まとわぬ裸形の弁財天がいることで有名。下記動画のイラストは私が描いた裸弁天
池、湖、海など、日本各地の水辺に祀られている弁財天が、なぜこのごちゃごちゃした歌舞伎町に?
、と思うかもしれませんが、明治以前はここに武家のお屋敷(肥前大村藩の藩邸)があって、森林に囲まれ、中心に沼があったんだそうです。現在の歌舞伎町から想像もつかない、鬱蒼とした土地だったんですね。
明治末からの開発で沼は埋められ、大正2年に弁財天が祀られました。上野不忍池の弁財天を勧請したそうです。
その後いろいろあって今の歌舞伎町が形成されますが、弁財天さんは町の移り変わりをずっと見てきたのでした。
現在の歌舞伎町、治安は改善しているとはいえ、やっぱり他の街とはちがう雰囲気があります。
隣のお城のような「王城ビル」は、昭和の名残をとどめる歌舞伎町のシンボル(純喫茶があった)。
お社の横には、今時めずらしいネオンサインでアピールするヘルスの店舗。
街頭スピーカーからは、ぼったくり被害を注意するアナウンスがかなりの大音量で繰り返し流れている。
弁財天石碑の脇では、平日昼間から何の待ち合わせなのか、不審そうな目をあちこちにやりながらじっと誰かを待っているお兄さん。
ほかにも、ビジネスマンではないちょっと訳ありな風情を醸しだす人たちが、公園の縁で腰を下ろしています。
歌舞伎町らしい建物に囲まれた弁天堂
猥雑な都会の街には、なぜか弁財天が似合うような気がします。
決して聖人君子ではない我々一般庶民。沼地に潜む蛇のように泥水すすって自分なりにがんばって生きている私たちを、静かに見守る女神。そのまなざしは、ただ優しいだけではないような気がします。
話題の東急歌舞伎町タワー入口から見た通称”トー横”広場。弁天堂はゴジラビルの右奥を進むとある
そんなイメージから、僕のバンドで「Benzai-Tennyo」という歌を書きました。
優しく見守っているというのでなく、もっと厳しく、時に冷ややかな眼で「おまえの生き様を見ているぞ」、と言うかのようなイメージを歌詞にしました。ミュージック・ビデオでは歌舞伎町の風景を使っています。
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「Benzai-Tennyo」。
(参考)
歌舞伎町弁財天│一般社団法人新宿観光振興協会
(本尊の写真を掲載)
https://www.kanko-shinjuku.jp/spot/kw-%E6%AD%8C%E8%88%9E%E4%BC%8E%E7%94%BA/article_2479.html
歌舞伎町の守護神 歌舞伎町弁財天│歌舞伎町文化新聞
(この公園と弁財天の歴史が紹介されています)
https://kabukicho-culture-press.jp/all/history/4430
---おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ登壇。「教員紹介」で割引!
早稲田大学オープンカレッジ
「神社の仏像」
7/15(土)から毎土曜全3回
早稲田大学エクステンションセンター中野校にて
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/60453/
↑
新規入会申込時に「教員紹介」を選択して申し込めば、割引になります。
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。宮澤やすみ一門の演奏会「小唄 in 神楽坂」が10月29日に決定しました。おかげさまで20回、つまり20周年です。我ながらよく続いた。
そんな中、先日は東京・新宿歌舞伎町にいってきました。
TOHOシネマズのゴジラ、東急の歌舞伎町タワーが話題ですが、そこじゃなくて、路地に入った先の小さな公園です。
歌舞伎町公園といって、町の児童公園ほどの広場ですが、ここは弁財天が祀られる歌舞伎町でも由緒ある場所なのです。
歌舞伎町公園の弁財天堂。新宿空襲の際、地元有志が本尊を退避。弁天堂は戦後に復興された
弁財天は、音楽、弁舌、豊穣、商売繁盛といったご利益があり、私のようなミュージシャン兼文筆家でたまにテレビやラジオでしゃべるという個人事業者にうってつけのお方です。
インドの川の神サラスヴァティ―を原型とする女神は仏教の守護神「弁才天」であり、日本では宇賀神という蛇の姿の神と習合して、神社でもお寺でも祀られてきました(明治以降神社の弁財天は姿を消しますが)。
もともと川の神だから、沼の淵をうごめく蛇と相性がよかったんでしょうか。
歌舞伎町公園の弁財天も、とぐろを巻いた宇賀神(蛇神)を頭に載せた姿をしています。
新宿観光振興協会のWebサイトで写真が見られます(記事末URL参照)。
お社前の石碑は、琵琶をもった女性の姿で表現。ちなみに江島神社では琵琶の他は一糸まとわぬ裸形の弁財天がいることで有名。下記動画のイラストは私が描いた裸弁天
池、湖、海など、日本各地の水辺に祀られている弁財天が、なぜこのごちゃごちゃした歌舞伎町に?
、と思うかもしれませんが、明治以前はここに武家のお屋敷(肥前大村藩の藩邸)があって、森林に囲まれ、中心に沼があったんだそうです。現在の歌舞伎町から想像もつかない、鬱蒼とした土地だったんですね。
明治末からの開発で沼は埋められ、大正2年に弁財天が祀られました。上野不忍池の弁財天を勧請したそうです。
その後いろいろあって今の歌舞伎町が形成されますが、弁財天さんは町の移り変わりをずっと見てきたのでした。
現在の歌舞伎町、治安は改善しているとはいえ、やっぱり他の街とはちがう雰囲気があります。
隣のお城のような「王城ビル」は、昭和の名残をとどめる歌舞伎町のシンボル(純喫茶があった)。
お社の横には、今時めずらしいネオンサインでアピールするヘルスの店舗。
街頭スピーカーからは、ぼったくり被害を注意するアナウンスがかなりの大音量で繰り返し流れている。
弁財天石碑の脇では、平日昼間から何の待ち合わせなのか、不審そうな目をあちこちにやりながらじっと誰かを待っているお兄さん。
ほかにも、ビジネスマンではないちょっと訳ありな風情を醸しだす人たちが、公園の縁で腰を下ろしています。
歌舞伎町らしい建物に囲まれた弁天堂
猥雑な都会の街には、なぜか弁財天が似合うような気がします。
決して聖人君子ではない我々一般庶民。沼地に潜む蛇のように泥水すすって自分なりにがんばって生きている私たちを、静かに見守る女神。そのまなざしは、ただ優しいだけではないような気がします。
話題の東急歌舞伎町タワー入口から見た通称”トー横”広場。弁天堂はゴジラビルの右奥を進むとある
そんなイメージから、僕のバンドで「Benzai-Tennyo」という歌を書きました。
優しく見守っているというのでなく、もっと厳しく、時に冷ややかな眼で「おまえの生き様を見ているぞ」、と言うかのようなイメージを歌詞にしました。ミュージック・ビデオでは歌舞伎町の風景を使っています。
それでは聴いてください。
ザ・ブッツで「Benzai-Tennyo」。
(参考)
歌舞伎町弁財天│一般社団法人新宿観光振興協会
(本尊の写真を掲載)
https://www.kanko-shinjuku.jp/spot/kw-%E6%AD%8C%E8%88%9E%E4%BC%8E%E7%94%BA/article_2479.html
歌舞伎町の守護神 歌舞伎町弁財天│歌舞伎町文化新聞
(この公園と弁財天の歴史が紹介されています)
https://kabukicho-culture-press.jp/all/history/4430
---おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ登壇。「教員紹介」で割引!
早稲田大学オープンカレッジ
「神社の仏像」
7/15(土)から毎土曜全3回
早稲田大学エクステンションセンター中野校にて
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/60453/
↑
新規入会申込時に「教員紹介」を選択して申し込めば、割引になります。
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m