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第344回 新潟の豪農コレクション ”雲の大階段”を下りる阿弥陀三尊

”音楽にのせて下りてくる、ショーのラストのクライマックスで--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。先月は体調メンテナンス月間としていましたが、そろそろ社会復帰に向けて動こうかと思っている宮澤やすみです。そう思ったらこんどは猛暑で動けないんですけど。

そんな中、東京はあまりに暑くて外を歩き回るのはムリなので、春に行ったこちらをご紹介します。

小唄の合宿で訪れた新潟。北方文化博物館を訪れました。


戦後間もない頃から5年の歳月をかけて作られた日本庭園。大広間からの開放感が心地よい

どこかの禅寺かと思うような豪壮な日本家屋。江戸時代に農業と商いで新潟随一の大地主になった伊藤家の本宅です。
戦後、伊藤家七代目当主が財産を投じ、博物館として保存されることになりました。
建物だけでなく。美術コレクションがすごいことになってます。仏像もありました。

平安時代中期ごろの大日如来。詳細はわかりませんが、まがい物ではなくかなり本格的な仏像と見受けられます。


集古館で展示されている大日如来

あともう一点、こちらの阿弥陀三尊も興味深いですね。


岩座に立つ阿弥陀三尊。鎌倉時代作とのこと。岩座に見えるが雲を表現したか?

この阿弥陀三尊は「善光寺式」と呼ばれるスタイルを踏襲しています。阿弥陀如来は両肩に衣をまとった通肩の服制で、髪の毛は縄を巻いたような形になっている。両手は阿弥陀来迎印を結んでいます。
脇侍は角ばった宝冠をかぶって、手を胸前で組んでいるスタイル。

これが鎌倉時代に流行った善光寺式阿弥陀三尊像の基本スタイルで、検索すればたくさん出ますので。


するどい彫りで切れ長の眼を表現。鎌倉時代によく見られる眼

で、おもしろいのは三尊の立ち位置でして、写真のように不規則な形の台座に立っている。
勢至菩薩が前に出て、それに観音菩薩がつづき、いちばん奥にボスの阿弥陀如来がどんと立つ。
高さも異なっていて、その抑揚のバランスが良いですね。

こないだ、宝塚のレビューショーのビデオを見たんですけど、華やかな踊り手がわーっと出てきて、主役が後から大階段をゆっくり降りてくるんです。
あの演出を思い出しました。


正面からみたようす。高低の抑揚がドラマチックな演出に一役買っている

仏像の三尊像で、横一列にこだわらず、立体的な配置はめずらしいと思います。
これは、鎌倉時代に流行った岩座によって、より自由な表現が許されるようになったことが大きいでしょう。
岩座というと観音菩薩や不動明王を置くのですが、阿弥陀三尊は雲に乗ってやってくる「来迎」が得意技ですから、これも岩座の流行にのっかって、雲を表現したものなんじゃないでしょうか。
想像してください。雲の大階段から、音楽にのせて”すみれのはーなー♪”と下りてくる、ショーのラストのクライマックスです。いや何のショー。


埴輪も展示。イノシシの子供がすごくかわいらしい。武人の腰に獲物としてくくりつけられている。このほか石器時代や縄文の遺物もある

珠玉のコレクションと豪華な建物をきれいに残した伊藤家の歴代当主。国際交流や文化振興に尽力した先代八代目の写真を見ましたけどハンサムでかっこよくて、地元の名士という以上の存在感を醸していらっしゃいました。
代を重ねた名家の当主、生まれ変わったらなってみたいものです。


着物姿での旅。癒されました

私設資料館のレベルを軽く超えた本格的文化博物館。レストランやお土産屋さんあり。お酒も飲めます。土地の水を使ったコーヒーもおいしかったです。

 
それでは聴いてください。
ジェーン・バーキンで「Yesterday Yes A Day(哀しみの影)」。



(参考)
豪農の館「北方文化博物館」
https://hoppou-bunka.com/



---おしらせ---

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 2.一木造
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 5.Benzai-Tennyo
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 8.いけるとこまで
 ほか、付録CDにボーナストラック




宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m