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第348回 静嘉堂の「江口クン」は美人だった。「あの世の探検」展①
”「えぐちくん」じゃなくて「えぐちのきみ」が正解なんですね--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。週末にソロライブを控え緊張している宮澤やすみです。一人だけの弾き唄い(弾き語りのことをこう言う)で、江戸の小唄と洋楽カバーをやります。
そんな中、丸の内の静嘉堂文庫美術館の展覧会「あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―」を取材してきました。
写真は報道内覧会で許可を得て撮影したものです。
静嘉堂は、三菱岩崎家によって明治25年(1892)に創設されました。
現在は丸の内の明治生命館に展示ギャラリーがあります。
美術館が入る明治生命館は、重要文化財に指定されている
今回の展示は、地獄と極楽の世界観がテーマで、静嘉堂が所蔵する仏教美術がずらり。
仏画が多いんですけど、仏像好きでもなるほどと思う作品がたくさんありました。
《十王図・二使者図 元~明時代 14世紀》
僕が気になったのは、《江口君図》です。美人の遊女が象さんに乗っています。
これ、能の「江口」が題材で、江口の里で西行法師と問答をした遊女「江口の君」を描いています。
そう、「えぐちくん」じゃなくて「えぐちのきみ」が正解なんですね。
この女性、じつは幽霊でして、普賢菩薩の生まれ変わりだったのだ、という話だそう。
白い象に乗っているのは普賢菩薩だからなんですね。
無表情に見える顔は、人間でない菩薩の境地を示しているのだとか。写真じゃわからないのでぜひ実物を間近で見てください。
左《普賢菩薩像 鎌倉時代13世紀》右《江口君図 円山応挙筆 江戸時代寛政6年》を並べて展示。遊女の姿だが現実味を超えた雰囲気が醸し出されている
水月観音の図も見逃せないです。仏像ファンには鎌倉・東慶寺の水月観音像など知られますが、仏画だとこれまた優美です。
透明なベールがかかる様子は、仏画だからできる表現ではないでしょうか。
透けるベールの表現が美しい《水月観音像 高麗時代 14世紀》
この水月観音は華厳経の一場面を描いたもの。華厳経では、文殊菩薩が真理を求めて旅をしますが、画面左下に水月観音に教えを請う文殊菩薩が描かれています。
いっぽうこちらは法華経の世界を描いた「変相図」。絵のタッチがゆるくて、いいですね。
さくらももこ風の画風でほんわかする《妙法蓮華経変相図 南宋時代 12~13世紀》
”静嘉堂@丸の内”は、地下鉄二重橋前駅から直結。きびしい猛暑でもたどり着けるし、展示量がほどほどなので周辺のイイ感じのカフェやレストランに立ち寄る余力を残すことができます。
そんなわけで夏の都内散歩にぴったりではないでしょうか。
そして、じつはこの展示で、仏像ファン的に大ブレイク間違いなし?の一品があったんですよね。
図録にも公式サイトにも一切出ていないのがもったいない。
というわけで次回につづきます。
それでは聴いてください。
江口洋介で「恋をした夜は」。
(参考)
静嘉堂文庫美術館
あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―
2023年8月11日(金祝)~9月24日(日)
詳細:
https://www.seikado.or.jp/
---おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ 小さな三味線ライブ
【チルやすみ】
長くジャズの経験を積んできた宮澤やすみ
その経験を活かしながら、現在の三味線を通して
本人の思い入れ深い曲をチョイス。
「日本のシャンソン」小唄、そして追悼ジェーン・バーキン。
小唄、ジャズ、シャンソン、和洋の区別なく
やすみ流の三味線弾き歌いでお届けします。
これまでの経験があるからこその、気持ちのこもった自在な演奏をお楽しみください。
少人数限定。ご予約は宮澤やすみかお店まで。
2023年8月26日(土)
15:30開場 16;00開演
(2ステージ通し)
池袋ロワンディシー
詳細 http://yasumimiyazawa.com/live.html
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。週末にソロライブを控え緊張している宮澤やすみです。一人だけの弾き唄い(弾き語りのことをこう言う)で、江戸の小唄と洋楽カバーをやります。
そんな中、丸の内の静嘉堂文庫美術館の展覧会「あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―」を取材してきました。
写真は報道内覧会で許可を得て撮影したものです。
静嘉堂は、三菱岩崎家によって明治25年(1892)に創設されました。
現在は丸の内の明治生命館に展示ギャラリーがあります。
美術館が入る明治生命館は、重要文化財に指定されている
今回の展示は、地獄と極楽の世界観がテーマで、静嘉堂が所蔵する仏教美術がずらり。
仏画が多いんですけど、仏像好きでもなるほどと思う作品がたくさんありました。
《十王図・二使者図 元~明時代 14世紀》
僕が気になったのは、《江口君図》です。美人の遊女が象さんに乗っています。
これ、能の「江口」が題材で、江口の里で西行法師と問答をした遊女「江口の君」を描いています。
そう、「えぐちくん」じゃなくて「えぐちのきみ」が正解なんですね。
この女性、じつは幽霊でして、普賢菩薩の生まれ変わりだったのだ、という話だそう。
白い象に乗っているのは普賢菩薩だからなんですね。
無表情に見える顔は、人間でない菩薩の境地を示しているのだとか。写真じゃわからないのでぜひ実物を間近で見てください。
左《普賢菩薩像 鎌倉時代13世紀》右《江口君図 円山応挙筆 江戸時代寛政6年》を並べて展示。遊女の姿だが現実味を超えた雰囲気が醸し出されている
水月観音の図も見逃せないです。仏像ファンには鎌倉・東慶寺の水月観音像など知られますが、仏画だとこれまた優美です。
透明なベールがかかる様子は、仏画だからできる表現ではないでしょうか。
透けるベールの表現が美しい《水月観音像 高麗時代 14世紀》
この水月観音は華厳経の一場面を描いたもの。華厳経では、文殊菩薩が真理を求めて旅をしますが、画面左下に水月観音に教えを請う文殊菩薩が描かれています。
いっぽうこちらは法華経の世界を描いた「変相図」。絵のタッチがゆるくて、いいですね。
さくらももこ風の画風でほんわかする《妙法蓮華経変相図 南宋時代 12~13世紀》
”静嘉堂@丸の内”は、地下鉄二重橋前駅から直結。きびしい猛暑でもたどり着けるし、展示量がほどほどなので周辺のイイ感じのカフェやレストランに立ち寄る余力を残すことができます。
そんなわけで夏の都内散歩にぴったりではないでしょうか。
そして、じつはこの展示で、仏像ファン的に大ブレイク間違いなし?の一品があったんですよね。
図録にも公式サイトにも一切出ていないのがもったいない。
というわけで次回につづきます。
それでは聴いてください。
江口洋介で「恋をした夜は」。
(参考)
静嘉堂文庫美術館
あの世の探検―地獄の十王勢ぞろい―
2023年8月11日(金祝)~9月24日(日)
詳細:
https://www.seikado.or.jp/
---おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
宮澤やすみ 小さな三味線ライブ
【チルやすみ】
長くジャズの経験を積んできた宮澤やすみ
その経験を活かしながら、現在の三味線を通して
本人の思い入れ深い曲をチョイス。
「日本のシャンソン」小唄、そして追悼ジェーン・バーキン。
小唄、ジャズ、シャンソン、和洋の区別なく
やすみ流の三味線弾き歌いでお届けします。
これまでの経験があるからこその、気持ちのこもった自在な演奏をお楽しみください。
少人数限定。ご予約は宮澤やすみかお店まで。
2023年8月26日(土)
15:30開場 16;00開演
(2ステージ通し)
池袋ロワンディシー
詳細 http://yasumimiyazawa.com/live.html
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m