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第356回 古代人も満足? 渋谷の古代横穴墓遺跡
”街の様相が変わっても地形が歴史を語っている。それに気づくと--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。年に一度の演奏会「小唄 in 神楽坂」の通しリハーサルを終えた宮澤やすみです。今年も皆さんのおかげで見通しが立ち良い舞台になりそうです。
そんな中、前回から続いて、東京・渋谷在住の私がお届けする渋谷の歴史風景です。
渋谷は若者だけの街と思われがちですが、じつは遺跡あり城跡あり街道あり、古代からの営みが積み重なっている歴史好きにおすすめの街なんです。
タモリさんがよくおっしゃいますが、坂道と川が織りなす地形の高低差に歴史が刻まれてきたもので、渋谷の坂道もそれにあたります。
その坂道に、古墳時代の遺跡があったのをご存知ですか?
2023年撮影。「道玄坂通」の道玄坂小路側エントランス
2023年、渋谷の複合施設「道玄坂通(dogenzaka-dori)」が開業。
道玄坂という道の名前がそのままビルの名前になっていてまぎらわしいんですけど、道玄坂の北側の丘陵面を削ってビルが建っています。
このビルが、道玄坂小路と呼ばれる狭い路地にも出入口を構えているのですが、その奥にあったのが「渋谷区40号遺跡」といわれる横穴墓遺跡です。
地図中央左寄りの赤い印が40号遺跡。「東京都遺跡地図情報インターネット提供サービス」より
このあたりは急斜面が今も残る区域で、崖のようなところに古墳時代から奈良時代にかけての横穴墓があったそうです。
横穴墓とは、岩をくり抜いた墓のことで、細長い横穴に遺体を安置します。
大きな墳丘をもつ「古墳」に豪族が葬られたのに対して、おもに庶民が埋葬されたようです。いずれにしても古墳時代に形成され、長い間使われました。
仏像ファンなら、鎌倉の古寺にある「やぐら」をご存知かもしれませんが、あれも横穴墓の発展形です。
さて渋谷の横穴墓。私が見たときはすでに墓の形跡はなく緑が茂っているだけで、工事の開始を待っている状態でした。
2017年撮影。「道玄坂通」の工事開始前の状況。遺跡はこの奥に位置するはずだが既に駐車場となっており、工事区域のため見ることはできない
2019年撮影。鬱蒼と生えた草を取り除いた状態
この遺跡がある地点は、現在では渋谷でもセンター街に並んで猥雑な魅力に富んだ繁華街に位置しますが、ここに古墳時代から人が住んでいたと思うと想像が膨らんで、なかなか面白いです。
開発が進む渋谷ですが、急峻な地形はそれほど変わってないようで、街の様相が変わっても地形が歴史を語っている。それに気づくと街歩きが楽しくなりますね。
わずかな手がかりから、古代人の暮らしを想像する
じつは渋谷は川の街。代々木上原付近からの宇田川(うだがわ)と、新宿御苑、原宿方面からの隠田川(おんでんがわ)が合流して渋谷川となり、東京湾に流れます。
渋谷スクランブルスクエアの地上部分。この地下に渋谷川が流れており、青いLEDはそのことを示しているようだ
その川が谷を形成して渋谷の地形ができているのですが、豊かな川と高台があることで、昔の人は豊かなくらしをしたことでしょうね。
中世には武士の城(渋谷城)もできます。
渋谷ストリームの脇から渋谷川が地上に顔を出す。このへんの話はまた別の機会に
お隣の目黒川流域と並んで、旧石器時代から縄文、弥生の古代遺跡も発掘されています。代官山には古墳もありますし。
そして、道玄坂はもともと大山詣でのための街道として多くの人が行き来した道でした。
川と街道を辿る、渋谷の旅も面白そうです。
いや”面白そう”というか、すでにワタクシ歩いているので面白いのはまちがいないんですけどね。
今後も渋谷川と道玄坂の歴史さんぽ、ときどきご紹介したいと思います。
それでは聴いてください。
「春の小川」(渋谷川の支流「河骨川」がモデルだそうです)
---おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
おかげさまで20周年
【小唄 in 神楽坂 2023】
宮澤やすみ一門総出で小唄の演奏会。
小唄ではめずらしい日本舞踊と鳴物が入って
にぎやかで特別な記念の会になります。
楽しい解説トークもあって、初めての人こそ
来てほしい、くつろぎの和のライブです。
お得な前売券購入はは宮澤やすみ事務所へ。
2023年10月29日(日)
14:30開場 15:00開演 16:20終演予定
東京・神楽坂毘沙門天1回書院
問合せ・お申込はEメールで
yasumikouta@yahoo.co.jp
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。
こんにちは。年に一度の演奏会「小唄 in 神楽坂」の通しリハーサルを終えた宮澤やすみです。今年も皆さんのおかげで見通しが立ち良い舞台になりそうです。
そんな中、前回から続いて、東京・渋谷在住の私がお届けする渋谷の歴史風景です。
渋谷は若者だけの街と思われがちですが、じつは遺跡あり城跡あり街道あり、古代からの営みが積み重なっている歴史好きにおすすめの街なんです。
タモリさんがよくおっしゃいますが、坂道と川が織りなす地形の高低差に歴史が刻まれてきたもので、渋谷の坂道もそれにあたります。
その坂道に、古墳時代の遺跡があったのをご存知ですか?
2023年撮影。「道玄坂通」の道玄坂小路側エントランス
2023年、渋谷の複合施設「道玄坂通(dogenzaka-dori)」が開業。
道玄坂という道の名前がそのままビルの名前になっていてまぎらわしいんですけど、道玄坂の北側の丘陵面を削ってビルが建っています。
このビルが、道玄坂小路と呼ばれる狭い路地にも出入口を構えているのですが、その奥にあったのが「渋谷区40号遺跡」といわれる横穴墓遺跡です。
地図中央左寄りの赤い印が40号遺跡。「東京都遺跡地図情報インターネット提供サービス」より
このあたりは急斜面が今も残る区域で、崖のようなところに古墳時代から奈良時代にかけての横穴墓があったそうです。
横穴墓とは、岩をくり抜いた墓のことで、細長い横穴に遺体を安置します。
大きな墳丘をもつ「古墳」に豪族が葬られたのに対して、おもに庶民が埋葬されたようです。いずれにしても古墳時代に形成され、長い間使われました。
仏像ファンなら、鎌倉の古寺にある「やぐら」をご存知かもしれませんが、あれも横穴墓の発展形です。
さて渋谷の横穴墓。私が見たときはすでに墓の形跡はなく緑が茂っているだけで、工事の開始を待っている状態でした。
2017年撮影。「道玄坂通」の工事開始前の状況。遺跡はこの奥に位置するはずだが既に駐車場となっており、工事区域のため見ることはできない
2019年撮影。鬱蒼と生えた草を取り除いた状態
この遺跡がある地点は、現在では渋谷でもセンター街に並んで猥雑な魅力に富んだ繁華街に位置しますが、ここに古墳時代から人が住んでいたと思うと想像が膨らんで、なかなか面白いです。
開発が進む渋谷ですが、急峻な地形はそれほど変わってないようで、街の様相が変わっても地形が歴史を語っている。それに気づくと街歩きが楽しくなりますね。
わずかな手がかりから、古代人の暮らしを想像する
じつは渋谷は川の街。代々木上原付近からの宇田川(うだがわ)と、新宿御苑、原宿方面からの隠田川(おんでんがわ)が合流して渋谷川となり、東京湾に流れます。
渋谷スクランブルスクエアの地上部分。この地下に渋谷川が流れており、青いLEDはそのことを示しているようだ
その川が谷を形成して渋谷の地形ができているのですが、豊かな川と高台があることで、昔の人は豊かなくらしをしたことでしょうね。
中世には武士の城(渋谷城)もできます。
渋谷ストリームの脇から渋谷川が地上に顔を出す。このへんの話はまた別の機会に
お隣の目黒川流域と並んで、旧石器時代から縄文、弥生の古代遺跡も発掘されています。代官山には古墳もありますし。
そして、道玄坂はもともと大山詣でのための街道として多くの人が行き来した道でした。
川と街道を辿る、渋谷の旅も面白そうです。
いや”面白そう”というか、すでにワタクシ歩いているので面白いのはまちがいないんですけどね。
今後も渋谷川と道玄坂の歴史さんぽ、ときどきご紹介したいと思います。
それでは聴いてください。
「春の小川」(渋谷川の支流「河骨川」がモデルだそうです)
---おしらせ---
本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報
1.
おかげさまで20周年
【小唄 in 神楽坂 2023】
宮澤やすみ一門総出で小唄の演奏会。
小唄ではめずらしい日本舞踊と鳴物が入って
にぎやかで特別な記念の会になります。
楽しい解説トークもあって、初めての人こそ
来てほしい、くつろぎの和のライブです。
お得な前売券購入はは宮澤やすみ事務所へ。
2023年10月29日(日)
14:30開場 15:00開演 16:20終演予定
東京・神楽坂毘沙門天1回書院
問合せ・お申込はEメールで
yasumikouta@yahoo.co.jp
2.
仏像や古代史を歌ったザ・ブッツの新作アルバム『時の水辺』。
ご購入いただけると活動存続の助けになります。応援よろしくお願いいたします。
プレーヤー不要。スマホですぐ聴けるQRコード付きブックレットです(CDも付いてます)。
詳細のご紹介は
↓↓↓
http://yasumimiyazawa.com/buttz/tokinomizube.html
雅楽の笙や篳篥も入った独特のサウンドで、「聴いたことないけど、どこか懐かしい」大人むけのロックです
収録曲:
1.Fantastic Dystopia
2.一木造
3.Shami on The Water
4.川のほとりで
5.Benzai-Tennyo
6.Black Etenraku
7.北斗星
8.いけるとこまで
ほか、付録CDにボーナストラック
宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m