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第369回 書と茶碗に注目「本阿弥光悦の大宇宙」展

”歴史の重みを感じながら手にとると、思ったより軽く--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。ギリシャ神話の朗読劇に三味線で伴奏を付けた宮澤やすみです。この異種混淆な感じが、神仏習合好きの僕にぴったりの仕事でした。

そんな中、東京国立博物館で開幕した特別展「本阿弥光悦の大宇宙」を取材してきました。
写真は報道内覧会で許可を得て撮影したもの、もしくは公式の広報画像です。


有名な国宝《舟橋蒔絵硯箱》も本阿弥光悦の作

展示前半の刀剣、蒔絵もいいのですが、僕が注目したのは後半の書と茶碗です。


「第三章 光悦の筆線と字姿―二次元空間の妙技」展示会場風景

書は俵屋宗達とのコラボ作品《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》が人気のようで、まず華麗に鶴が舞う長大な料紙に一発勝負で書く度量がすごい。
「あ、まちがえちゃった」とか許されませんからね。


本阿弥光悦筆 俵屋宗達下絵 重要文化財《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》(部分) 江戸時代・17世紀 京都国立博物館


線の太細の抑揚が強いのが本阿弥光悦の書の特徴。紙全体に対するレイアウトの感覚も絶妙。
本阿弥光悦筆《松山花卉摺下絵新古今集和歌巻》江戸時代・17世紀


ただ、個人的には俵屋宗達コラボよりも、シンプルな下絵で光悦の書が引き立つ《松山花卉摺下絵新古今集和歌巻》のほうが好みでした。

次に茶碗です。
仏像ファンの中には茶碗のことはわからないという人がいるかもしれませんけど、
要は見立てのおもしろさなので、つまり茶碗をキャラに見立てて「あだ名」を付けてみると楽しいんですよね。


「第四章 光悦茶碗-土の刀剣」展示会場風景

今回展示の「村雲」「時雨」「雨雲」の3つは、どれも表面のもわもわした釉薬のようすを雨模様に見立てて名づけられたもの。

なかでも村雲はちょっと開いたフォルムで釉薬のかかり具合がとがっていて、やんちゃな印象を受けます。
「時雨」は大人しい優等生タイプ。

仏像ファン向けにいうと、制吒迦童子と矜羯羅童子が並んでいるようなものです。
「村雲」が制吒迦、「時雨」が矜羯羅というわけ。展示室で実物を見ればわかると思いますよ。


黒楽茶碗 銘 村雲 本阿弥光悦作 江戸時代・17世紀 京都・樂美術館

歴史をみると、室町時代の茶の湯では唐物や高麗茶椀といったインポート物がもてはやされたんだけど、利休の時代に黒くて飾り気のない楽茶碗が登場して、「近所で作った素っ気ないやつですけど、なにか問題でも?」という態度で打ち出した。
つまり華美な価値観に対する反逆が人気を博したので、クイーンに対するセックス・ピストルズみたいなものだったんでしょう。
仏像が唐や朝鮮半島のマネから和様化していく流れとも似ているでしょうか。

でも、いったん楽茶碗が主流になると、楽茶碗はこうでないとという謎のマナー講師みたいな価値観が蔓延する。
そこへ、本阿弥光悦が、楽茶碗をオマージュしつつもやんちゃで危険な美しさを孕む作品を作って、「これでいいのだ」「文句あっか」とやったようです(詳しくは展示や図録で)。

展示室には、光悦が手本としたと思われる、初代・楽長次郎によるオリジナル楽茶碗もあり、それを見るとオリジン楽のたたずまいの完璧さに恐れ入ります。

じつは、わたくし以前に楽茶碗専門の骨董品店に出入りしていた時期があり、特別に初代・楽長次郎の茶碗を手に持たせてもらったことがあります。

まだ秀吉が生きていた桃山時代の作という、歴史の重みを感じながら手にとると、思ったより軽くて、手によくなじむものでした。たとえて言うなら、どんな人にも同じ態度で接する嫌味のない性格のおじさん(渋い喫茶店のマスターかなにか)、という印象です。


今回のグッズは《舟橋蒔絵硯箱》ぬい。キーホルダーになってる

だから、本当は茶碗を手に持つことができたらいいんですけど、さすがにそれはムリ。しかしながら、写真だけでは印象が伝わらないのも茶碗のやっかいなところで、この機会にぜひ実物を肉眼で見てほしいと思います。


それでは聴いてください。
カジヒデキで「TEA」。



特別展「本阿弥光悦の大宇宙」
2024年1月16日(火)~3月10日(日)
東京国立博物館 平成館
詳細 https://koetsu2024.jp/



--おしらせ---

本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

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17:30開場 18;00開演

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 7.北斗星
 8.いけるとこまで
 ほか、付録CDにボーナストラック




宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m