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第373回 「マティス展」でみた”彫刻と絵画の間”

”よく運慶の仏像は「写実的」と言われますが、果たしてそうなのかと--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。三味線演奏の本番が近づいているのに、また指をケガしてしまった宮澤やすみです。本番までにはなんとか治します。

そんな中、東京の国立新美術館で開幕した「マティス展」の取材にいってきました。
写真は報道内覧会で特別に許可を得て撮影したものですが、一般の撮影OKのものも多かったです。


縦4.1m、横8.7mの巨大な切り紙絵《花と果実》© Succession H. Matisse

今回注目したのは、マティスの彫刻作品です。

仏像ファンならこれらを仏像になぞらえてみるとよいと思うんですけど、
この作品《アンリエットI》と《アンリエットII》を見比べてるといろいろ考えさせられます。


彫刻の展示も多数。画面右が《アンリエットI》© Succession H. Matisse

Iのほうは、モデルの女性・アンリエットを写実的に表現したもので、年齢を重ねた肌観など忠実に再現されています。まさしく「写実」。
IIのほうは肌がつるんとして、目鼻口をととのえてあり、「様式化」されています。


画面右が《アンリエットII》奥はさらに抽象化された《アンリエットIII》© Succession H. Matisse

目と言えばこうでしょ、口と言えばこうでしょ、という感じで形作られ、そこにアンリエット本人の存在が薄れます。

この、「写実」と「様式化」の対比は仏像でもよくあることで。
よく運慶の仏像は「写実的」と言われますが、果たしてそうなのかという話。

金剛力士の筋肉はかなり誇張されていて、「力士といえばこう」という様式が見えます。
いっぽう、興福寺の無著像は人間のお坊さんなので今にもしゃべりだしそうな写実ですが、服装は大づかみに造られています。


抽象的なシンボルとして表現された《祭壇のキリスト磔刑像》© Succession H. Matisse

仏像は、理想とされるかたちがすでにあり、「様式」は時代で求められる理想によって変化しますが、マティスの彫刻にはマティス自身が求める理想を本人が探っていく過程を見ることになります。
解説にも、マティスは制作の過程を見せることを重視したとかなんとかありました。

そうなると、仏像と彫刻の相違点と共通点が見えてくる気がします。

ちなみに、マティスはカトリック修道院からの依頼で教会関連の作品も多く展示。やはり芸術と宗教は切っても切り離せませんね。


ヴァンスのロザリオ礼拝堂内部の再現。時間によってステンドグラスから光が差し込む演出

マティスは晩年に切り絵作品で再ブレイクします。
今回展示の《ブルーヌード》シリーズをみると、紙を重ねて貼り付けていることで、その厚みが絵の具の絵画とは異なる存在感を発しています。
ペラペラな紙でも立体物ですから、実物を前にすると、ある意味彫刻的な印象を受けるのでした。


写真上《ブルーヌードIV》写真下《横たわる裸婦II》同じポーズでかたちを追求 © Succession H. Matisse

さんざん「彫刻」「立体造形」を見てきた仏像ファンなら、こういう観点でマティス作品を見ると面白いかもしれませんね。

それでは聴いてください。
スコーピオンズで「Another Piece Of Meat」。



マティス 自由なフォルム
2024年2月14日(水) ~ 2024年5月27日(月)
毎週火曜日休館
国立新美術館 企画展示室2E
詳細 https://matisse2024.jp/



--おしらせ---

本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

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宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m