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第372回 東京丸の内の秋篠寺天平「脱活乾漆」仏

”秋篠寺像が制作当初どんな姿だったのかを--”
音楽家で神仏研究家の宮澤やすみが、仏像とその周辺をブツブツ語る連載エッセイ。

こんにちは。忙しい出番を終えて一気にヒマになりのんびりした一週間を過ごした宮澤やすみです。社会復帰できるか心配です。

そんな中、東京駅そばの商業施設KITTE(JPタワー)内にあるインターメディアテクに行ってきました。
ここはいつでも無料で入れて貴重な展示が見られるので、重宝するんですよね。


KITTEの展望テラスから見える東京駅

昭和モダンの趣ある展示室に東京大学の学術標本がぎっしり。
工業、医学、動植物の博物学的など興味深い展示に交じって、仏像もあります。
ここで見られる仏像は、仏像ファンなら聞いた事あるかもしれない「脱活乾漆」の仏像たち。

奈良の秋篠寺には、有名な美人仏、伎芸天をはじめとしていくつかの乾漆仏像が残っています。
どれも奈良時代の古い像ですが、頭部を残して破損していたり、当初の姿が不明です。
その秋篠寺像が制作当初どんな姿だったのかを研究した成果が見られます。


秋篠寺の伝・救脱菩薩像の当初の姿を想定して造られた像。2008年菊池敏正 制作

奈良時代(美術史では天平時代ともいわれる)は、漆をふんだんに使った仏像造りがさかんでした。漆と言っても、木くずを混ぜてペースト状にした「木屎漆(こくそうるし)」というものを盛り付けて制作します。

中が空洞の麻布張り子に木屎漆を盛り付ける技法を脱活乾漆といい、
木でおおまかな形を作り、そこに木屎漆を付ける技法を木心乾漆といいます。

昔の技法ですからわからない点もあるようで、
現代の人が再現を試みて、技法の研究が進みました。


秋篠寺の乾漆造の仏像の心木を再現したもの。全体は脱活乾漆造りだが、肩のあたりは形が作られていて木心乾漆的な技法もみられる

ほかの展示室では、アフリカの民俗祭祀の像やヨーロッパのキリスト像がある中、上をみるとちょこんと乾漆造りの仏像が座っているではないですか。


解説文はなかったが、この像は関東に唯一伝わる貴重な脱活乾漆仏像を模刻したものとみられる。2007年菊池敏正 制作。本物は横浜・龍華寺蔵で金沢文庫が管理

この姿は、僕がNHK番組とか講義でよく紹介してきた脱活乾漆の菩薩半跏像です。
模刻像とはいえ個人的にとてもなじみ深いので、あ、どうもこんにちはと言ってしまいます。


西アフリカ・トーゴのアダ族の彫刻。現代抽象美術に影響を与えた

そんな乾漆技法が盛んだった奈良時代ですが、このあと急速に木彫が主流になります。
というより、日本は木がたくさんあるのに、なぜ木彫が主流でなかったのか不思議ですよね。
その理由とこの時代の流れは、この連載の過去投稿で書いています。

大安寺の仏像が語る「木彫復活」のナゾ②
https://www.butuzou-world.com/column/miyazawa/20230411-2/

それでは聴いてください。
ザ・ブッツ(feat. 大薮麻琴)で「寄木造(男女和合版)」。



インターメディアテク
http://www.intermediatheque.jp/

--おしらせ---

本コラム筆者・宮澤やすみ関連情報

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 ほか、付録CDにボーナストラック




宮澤やすみ公式サイト:http://yasumimiyazawa.com
宮澤やすみツイッター:https://twitter.com/yasumi_m